この「水滸伝 インタビュー」ページは「水滸伝」のインタビュー記事を掲載しています。
俳優の織田裕二さんが主演を務める連続ドラマ「北方謙三 水滸伝」が、2月15日からWOWOWと動画配信サービス「Lemino」で放送・配信される。信頼で人を動かす梁山泊の頭領・宋江を演じる織田さん、宋江とともに梁山泊を率いるもう一人の頭領・晁蓋を演じる反町隆史さん、梁山泊のメンバーで槍の名手にして天才武人・林冲を演じる亀梨和也さんの3人に、作品や役どころへの思いや過酷だったという撮影の裏側を聞いた。
ドラマは、北方謙三さんの歴史大河小説の金字塔「水滸伝」シリーズ(集英社文庫)が原作。北宋末期(12世紀初頭)の中国を舞台に、世に腐敗がはびこる中、正義を信じて立ち上がった下級役人・宋江のもとに集結したはぐれものたちが、理不尽な時代を変えようと、国家という巨大な敵に挑む姿を描く。
◇大いなる矛盾に葛藤するリーダーの孤独
--ご自身が演じられた役をどう解釈し、演じる上で最も注力したポイントを教えてください。
織田さん 宋江はほとんど剣を持たず、戦力にはなりません(笑)。彼の場合、筆や人の心を動かす言葉が剣の代わりなのですが、矛盾している面もあって。彼は小さな幸せや平和が望めない世の中になってしまったため、怒りやむなしさなどを抱えて書物を書くのですが、国を倒すために戦うと、どちらの側の人も命が代償となってしまう。仲間に死なないでほしいと願う一方で、危険な任務を託さなければならない。自分も前線に行こうとするけど止められる。宋江は力がないので仲間を頼るしかない。そういった内面の葛藤を表現することに心を砕きました。
反町さん 目的を同じくしていても、やり方や価値観はそれぞれ違う。ただ根底には「相手を信じる」「思いやる」という、時代を超えた普遍的な感情がある。だから晁蓋としては単なる強さだけでなく、仲間に対する思いやりやリーダーシップといった面を表現できるよう、そこに重きを置いて演じました。
亀梨さん 林冲は圧倒的な強さを持った人物ですが、その中に存在する優しさや柔らかさについて、人との出会いや一つ一つの出来事を通じての細やかな心情の揺れを大切に演じました。人を動かすより、自ら進んで役割を全うすることに生きがいを見出すタイプだと思ったので、それぞれが個性を生かし互いを補い合う感覚を意識しました。
織田さん 登場人物はそれぞれが何らかの“傷”を持っていて、その傷と向き合っている個人個人の戦いもあるよね。人間というものにフィーチャーしているので、きっと自分の好みのタイプを見つけられると思います。
◇「ワンカットワンカット、全員が本気」 釣りざお1本、料理一つも本格的に
--映像からは現場の熱量が伝わってきましたが、特に制作チームのこだわりや情熱を感じた瞬間について教えていただけますか?
織田さん 今でも忘れられないのが、釣りのシーンで使った延べざお。一本の竹で作られた竿なのですが、京都の職人さんに頼んで実際に使えるものが準備されていました。釣りにはうるさい方だけど、ちょっと釣ってみたくなりました。
反町さん 個人的に欲しくなってしまいました(笑)。
織田さん そうだよね(笑)。ほかにも全てにこだわっていて、いろんな小物を中国にまで買い付けに行っていたのには驚かされました。
--すさまじい熱量ですね。
織田さん それに「今日がクライマックスかな?」と思うぐらい毎回、気合がすごかった。どんなシーンも時間をかけて丁寧に撮影して、一切妥協がない。その姿勢には圧倒されました。(完成したものを)美術館にでも入れる気なのかなと思ったほどです。
--反町さん、亀梨さんはいかがでしょうか。
反町さん ロケ場所にもこだわっていて。さまざまな場所に行ったのですが、どこも本物に近い雰囲気の中で芝居をさせてもらい、セットとはまた違った感覚を芝居に生かせたなと思います。
亀梨さん どこを切り取っても制作チームの熱量を感じました。大変なシーンも多かったのですが、そういった熱量に支えられた現場に立たせてもらい、妥協することなく演じられました。シーンとしては見えていない部分も同じで、例えば鍋の中の料理も本格的な中国のレシピでちゃんと調理されていました。
織田さん 撮影終わってから食べたよね(笑)。食べ物に関して、俺はカエルの丸焼きを食べるシーンがあったけど、さりげないシーンでカエルがアップになるわけでもないけど、あれも本物ですからね。
亀梨さん そうした一つ一つの細やかなこだわりが僕たちの芝居に良い影響をもたらしてくれました。ワンカットワンカット、全員が本気でした。
◇過酷なシーンで一体感 “地獄の8分間長回し”も
--長丁場でハードな撮影だったと思いますが、特に印象に残っていることは?
織田さん 壮大で登場人物が多いので、最初は人の名前と役名を覚えるのが大変でした(笑)。撮影に関しても、群像劇ならではで自分が出ていないシーンも多く、結果的にスケジュールに間が空くこともありました。そうした中で感情をどうつないでいくかは、難しさもありました。途中から「細かい役作りはやめよう」と切り替え、もはやライフスタイルの一部として捉えることにして、「宋江は俺だ」と思って臨みました。
反町さん 洞窟のシーンが印象深いですね。真っ暗な洞窟の中での芝居はなかなか過酷でしたが、早い段階であの過酷なシーンを乗り越え、その瞬間をチームで分かち合って撮ったからこそ、より一体感が生まれたのかなと思います。
亀梨さん 僕は林冲がみんなと合流するまでのシーンが印象に残っています。事を動かすための重要な任務を林冲が担っている中、牢獄からの一連のシーンの撮影は、後にも先にもなかなかないような経験をさせていただきました。
--肉体的にも精神的にも大変そうですね。
亀梨さん そうですね。自然の厳しさを痛感しました(苦笑)。
織田さん (亀梨さんが)深い新雪の中、人を担いで歩くシーンの撮影は、監督の指示により一連の動きをカットしない“地獄の8分間長回し”だったからね。「林冲を超えた亀梨の限界を見せろ」みたいな撮り方をするんですよ。使うのはそれよりも短い時間だろうけど(笑)。
亀梨さん オールカットだったら泣きます(笑)。それと牢獄に捕らえられ何日かぶりに与えられた水が、塩水だという嫌がらせのシーンではリアルな反応が見たいというスタッフの要望と、自分自身もリアリティーを出したいという思いから「ちょっと塩水で」と頼んだら、とんでもない濃い塩水を用意されて。あれはリアルにむせています(笑)。人生であれほど塩辛いものを口にしたことはないかも(苦笑)。もう芝居というよりドキュメンタリーのような感じでしたね。
◇「あ~忘れてるな、俺たち」と反省
--「北方謙三 水滸伝」という作品や撮影を通して感じたこと、現代を生きる私たちにどのようなメッセージを投げかけているかなど、皆さんの考えを聞かせてください。
織田さん 「あ~忘れてるな、俺たち。もう長いこと立ち上がって意見を言っていないんじゃないか。ついつい忖度(そんたく)したり、遠慮して飲み込んでしまっていることが多いのでは」と反省しました。現代社会にはどこかモヤッとした閉塞感のようなものもありますけど、理不尽に対して立ち上がる登場人物たちの生きざまを見て、少しでも元気に、エネルギーがちょっとでも湧いたらうれしいです。
反町さん 人を信じる気持ちや愛情は、いつの時代も変わらず人間にとって大切なこと。環境や状況が刻々と変わりつつある世の中ですが、時代を問わず、そういった根っこの大切さは忘れてはいけないと思いました。
亀梨さん 一人じゃない素晴らしさや何事も一人だけではできないことを改めて実感しましたし、時代背景や価値観は違えど、人の根本に関しては大きく変わらないのかなと。どういう環境に身を置いて、どういう選択をしていくか。これは普遍的な永遠のテーマだと思います。デジタル化が進み、水滸伝の時代よりもリスクを少なく声も上げやすくなったかもしれませんが、果たしてそれが……とは考えさせられました。彼らの生きざまは、現代を生きる私たちに、リスクを取ってでも貫くべきものは何かを問いかけているように感じました。
「北方謙三 水滸伝」は全7話で、WOWOWプライム・WOWOWオンデマンドおよびLeminoで2月15日から毎週日曜午後10時に放送・配信中。(取材・文:遠藤政樹)