この「誰かがこの町で インタビュー」ページは「誰かがこの町で」のインタビュー記事を掲載しています。
俳優の江口洋介さんが主演を務める連続ドラマ「連続ドラマW 誰かがこの町で」(WOWOW、日曜午後10時)が12月8日に放送・配信スタートする。2020年に江戸川乱歩賞を受賞した佐野広実さんの受賞後第1作として話題を呼んだ同名小説(講談社文庫)が原作。主人公の法律事務所の調査員・真崎雄一を演じる江口さんと、バディーとして自分の過去と向き合っていく望月麻希役を演じる蒔田彩珠さんに、自身の役やドラマの見どころ、「忍びの家 House of Ninjas」(Netflix)で親子役を演じてからの互いの印象の変化などを聞いた。
◇「地上波ではなかなか体験できないストーリー」
ドラマは、かつて残忍な誘拐殺人事件が起きた新興住宅地を舞台に、住民たちの間に渦巻く“同調圧力”が引き起こす恐怖を、生々しく、鮮烈に描いた社会派ミステリー。江口さん演じる真崎は、娘を自殺で亡くし、大きな心の傷と後悔を抱えている役どころ。蒔田さん演じる麻希は、赤ん坊の頃に両親と離れ児童養護施設で育ち、ある一枚のメモを頼りに真崎が勤める法律事務所を訪れ家族の捜索を依頼する。2人は麻希がかつて家族と暮らしていた町を訪れ、過去に起きた男子児童誘拐殺人事件にまつわる騒動に巻き込まれていく。
--作品の感想や印象を教えてください。
江口さん ある町に起こった集団による同調圧力と忖度(そんたく)の恐怖を描いた社会派サスペンスという謳(うた)い文句に興味を抱いた自分はいました。これまでWOWOWさんに出演させていただいた政治的なことや企業的なことを扱った作品とはまたちょっと違った社会派なテイストで、地上波ではなかなか体験できないストーリーだと思いました。
蒔田さん きっとどこでも、例えばマンションでも起きる可能性があるのではという内容だったので、想像しにくいことはありませんでした。ただ麻希はまったく身内がいないからこそ自分の過去や家族について調べたいという役で、今までに演じたことがない設定でした。
--本作のテーマでもある同調圧力について、どのように捉えていますか。
江口さん 圧力をかけてないのに受けている方がそう感じちゃうのも同調圧力だよね。一人一人は圧力をかけてないのに、集団になると暗黙(の了解)というか。一人でもかけられていると感じた人が現れた瞬間に圧力に変わる不思議なこともある。気をつけなくてはと思います。
蒔田さん 気づきにくい面もあるので難しいですね。
江口さん 気づかないことがほとんどですが、それが同調圧力になっている場合もあると思う。でも、きっと同調にはいい部分もあると思うし、同調していくことで何か絆ができたり、輪が広がったりするケースもあります。
◇「忍びの家」とのギャップに感嘆
--お二人は「忍びの家」では親子役を演じられていました。再びの共演はいかがでしたか。
江口さん 「忍びの家」は特殊な家庭だったね(笑)。今回も話が進んでいく中で疑似家族的な関係になっていくので、最初の方はいい距離感を作りつつ芝居をやっていく感じでした。台本を読み、蒔田さんが麻希役と聞いて、「忍びの家」のときに見た、ちょっと陰があるようにも見える“目”を思い出して楽しみにしていました。
蒔田さん 「忍びの家」では(江口さんと)親子役だったのもあり、私の中では明るい江口さんという印象でした。今回は作品のテイストもありますがギャップが大きくて、すごい俳優さんだなと改めて感じました。
--お互いの俳優としての魅力は?
江口さん 「忍びの家」のときに話した感じでは、自然体で芸能界の匂いがしないので、俳優さんとしてこのまま行ってほしいなと思いました。父親役をやったからそういう目線でいたかもしれません。今回は難しい役どころをどういうふうにするのかと思っていたら、うつむいた時の陰みたいなのも表現できていたし、日に日に変化して、成長しているので今後も楽しみです。
蒔田さん 常に周りの俳優さんとシーンをどうするかについて話し合い、どうしていきたいかを気にかけてくださっていて。それを受け止めてくださった上で、ご自身のこうしたいということを表現されているなと感じました。
江口さん そんなに仕切れて「じゃあこうして」と言えるタイプではないのですけど(笑)。監督も俺たちもみんなその場をどう作るかが仕事。みんなの芝居が乗るようにするにはどうしたらいいかは、いつも考えます。
--お二人の活動の源は何ですか?
江口さん 映画や音楽が好きであること。それ以外何もないというぐらいです。自分もそういうものを見て聞いて今があるし、そこに勇気づけられたしパワーをもらってきて今まで生きていると思うから、それですね。
蒔田さん 作品に入る前のウキウキ感と終わった後の達成感がやみつきなんですかね(笑)。やっていて良かったと思える瞬間が多い職業なので、その達成感や良かったと思える気持ちが原動力です。
--最後にドラマの見どころをお願いします。
江口さん 同調や集団から出てくる事件や見て見ぬふりから始まってしまうという題材は、これからもう少し増えていくかと思います。真実はどこにあるのか、見ている方もそこで少し刺激されて自分の身の回りを見回したりすると良いのではないでしょうか。そんな時代が来ているのかなと。ご覧になった方が何か感じてもらえたらと思うし、自分ももしかしたら同調圧力のような部分があるかもしれないという気づきと反省もたくさんある作品です。
蒔田さん 周りの圧力に屈せずに声を上げる人がいることを知るとともに、もし今そういう状況にある人がいるとしたら何か励みになればいいなと思います。(取材・文・撮影:遠藤政樹)