この「BEASTARS インタビュー」ページは「BEASTARS」のインタビュー記事を掲載しています。
「週刊少年チャンピオン」(秋田書店)で連載された板垣巴留さんのマンガが原作のアニメ「BEASTARS(ビースターズ)」の完結編「BEASTARS FINAL SEASON」のPart(パート)2がNetflixで配信された。アニメ第1期の放送を開始した2019年から約7年が経ち、ついに完結した。約7年にわたって主人公・レゴシを演じてきた小林親弘さん、「FINAL SEASON」で登場した宿敵・メロン役の沖野晃司さんに、熱い収録の裏側を聞いた。
◇身体的な動きをそのまま音に乗せる
--ついにアニメが完結しました。
小林さん アニメ「BEASTARS」シリーズは、声を先に収録するプレスコということもあって、収録から完成までの時間が長いんです。ついに完成した世界が見られるんだという感慨深さがあります。率直に言うとうれしいです。
沖野さん 僕は「FINAL SEASON」からの参加だったので、長年愛されてきた歴史ある作品の後半部分にピョンと飛び込んでいったので、ずっとソワソワしていました。長い歴史に自分がどう関われるのか、勇気を持ってやらなきゃいけないという思いで落ち着かない気持ちでした。レゴシという主人公の人生に深く関わるメロンという役を、自分がどう全うできたのか。その答えを皆さんに受け取ってもらう日がくることに、今も期待と緊張が入り混じったソワソワを感じています。
--収録は特殊だったと聞いています。
小林さん 本当に特殊ですよ。スタジオにはガンマイクが4本くらい並んでいて、僕たちはマイクに正対して直立するのではなく、相手と目を合わせ、横を向きながら掛け合いをすることもあります。実際に相手の服をつかんだり、床に寝転がったりしながら、身体的な動きをそのまま音に乗せることもありました。舞台を作っているような感覚でした。
沖野さん その話を聞いて現場に入ったのですが、僕は舞台のキャリアが長いので、むしろ自分の得意なフィールドかもしれないと直感しました。アニメのアフレコではマイクの前で静止して収録するのが一般的ですが、この現場では舞台のように体を動かし、若い頃からやってきた体を使った表現がそのまま使えたんです。マイクの前で迷うよりも、体を動かして、自分ならいつもこう動くなという実感を伴いながら、いつもの自分らしく演じることができました。
小林さん 沖野さんはその環境を初めから抜群に使いこなしていましたね。役者さんによっては戸惑う方もいらっしゃるのですが、沖野さんは入った瞬間に対応されていましたよね。
沖野さん 基本的に掛け合いは一緒にできました。胸ぐらをつかみながら収録したシーンもありましたよね。
小林さん 5人で同時にしゃべったりするシーンもありましたし、特殊な収録ならではのエネルギーを感じていました。ミキサーの方が素晴らしくて「多少のノイズ(服の擦れる音や体の動きによる音)が鳴ってもいいですよ」と言ってくださっていたんです。台本をちゃんと見られないから、細かい助詞を間違えてしまうこともあるけど、「芝居がよかったから、今のでオッケー!」となることもありましたし。
沖野さん 監督が「相手がしゃべっている途中でしゃべっていい」と言っていたことも印象的でした。
小林さん 第1期の第1話の収録は7時間くらいかかったんです。システムが構築されてないから、まずシステムを作らなければいけませんでした。試行錯誤しながら、こうやってやった方が臨場感が出ると分かってきたり、実験的でした。
◇複雑なメロン
--小林さんはレゴシの宿敵・メロンをどう見ていた?
小林さん 「FINAL SEASON」Part1では「悪い獣を捕まえる」という目的しかなかったレゴシですが、Part2ではメロンを知れば知るほど「もっと知りたい」と思うようになっていきます。メロンという存在は、レゴシがハルちゃんと将来うまくいった際の自分の子供の姿かもしれない。ある種、自分の子供や自分自身の未来の問題としてメロンを見るようになっていきます。最終的には子と向き合うような、自分たちの問題として向き合う。だから寄り添おうとするし、理解しようとする。
沖野さん 不思議ですよね。でも、メロンは、レゴシの「どんどん知りたい」というものに、ムカついているんです。
--沖野さんは、メロンという複雑なキャラクターをどう演じようとした?
沖野さん 二分割するとうまくいかないと思っていました。抽象的なのですが、水に二色の絵の具を垂らして、それが勝手に混ざり合うようなイメージがありました。快楽を探そうとしていたり、自分を傷つけようとしますし、見る人によって違う人に見える。そこを意識していました。
--小林さんはレゴシを演じる際に意識したことは?
小林さん 極力普通にしゃべるようにしました。オーディションのときにも監督から「日常会話に近い、普通にしゃべる感じを一回聞いていいですか?」と言われました。演技を学ぶとき、セリフのどこを立てるか、どこを強調するかを勉強するのですが、この作品に関しては、ドキュメンタリーに近くなればいいなと挑戦していました。キャラクターがくっきりしていますし、テンプレートではなく、説明しなくても成立して、奥行きがでるところもありました。
--ちなみに遠ぼえも小林さん自身が演じている?
小林さん 自分で全部やってます。「BEASTARS」の近辺から犬の役が増えまして(笑)。僕自身、犬をずっと飼っていたので参考になりました。今後も犬役があったら、ぜひよろしくお願いいたします!
--共演を通じて感じたお互いの印象は?
小林さん 沖野さんは、向き合っているときがメロンそのものなんです。表情や佇まいからもメロンがあふれ出ています。そのままできるんじゃないかと思うくらいです。メロンとしていてくださるので。こっちもスイッチ入りました。
沖野さん (小林さんは)本当にレゴシなんですよ。僕は出演する前から「BEASTARS」を見ていたので、面と向かってお芝居させていただき、本物だ!となってました。僕が特に好きなのが、セリフのお尻がビリビリしてくるところなんです。
小林さん そうなんですか!?
沖野さん その揺れというかビリビリに芯があるんです。メロンはレゴシに「待て」「やめろ」と止められるシーンが多いんですけど、それが刺さるんです。このパワーは小林さんにしかないものだと感じていました。ぶつかってくるパワーに助けられました。ぶつかってくるほど燃え上がるタイプなので。
小林さん うれしいです! 僕は(沖野さんを)本当に頼りにしていました。プレスコという特殊な環境で、最初から抜群に使いこなしていた沖野さんの存在は大きかったです。収録方法も含めて松見(真一)監督だからこういう作品になったと思います。
沖野さん 本当にすごい監督ですよね。
◇エンディングに鳥肌
--「SEVENTEEN」のエンディング主題歌「Tiny Light」も話題になっています。
小林さん 映像もすごくいいんです。第1期からの流れが全部詰まっていて、懐かしさもあるし、涙が出そうになります。
沖野さん 僕も鳥肌が立ってきました。これまでの物語が凝縮されていますし、本当に終わるんだなという実感が湧いて、込み上げるものがあります。
小林さん どんな困難の中でも絶対に手放さないという強い意思が込められている曲なんですよね。僕はレゴシとハルが手をつなぐよりも先に指を握る描写がすごく好きなんです。サイズの差がある二匹だからこそできる表現ですし、改めて「BEASTARS」は素敵だなと感じました。
沖野さん 板垣先生も「希望に満ちあふれた曲」とおっしゃっていましたね。レゴシは第1期からいろいろなことがあったけれど、この映像を見ると、全然孤独じゃなかったんだと伝わってきます。
小林さん レゴシが真っ直ぐ向き合ってきたからこそ、ちゃんとみんながついてきたんだなと感じます。
沖野さん ただ、メロンは、この爽やかなエンディングを一切想像させない方向に物語を持っていかなきゃいけない立場ですからね(笑)。
--改めて今作の魅力をどのように感じていますか?
小林さん 板垣先生が社会をどう捉えているかが反映されていて、多様性という言葉があまり浸透していない第1期のときにも「多様性の話です」とおっしゃっていたのが印象的でした。原作を読んできて、どういうふうに終わるのだろうと思っていたら、ラストでこれが「BEASTARS」の全てなのかなと思いました。それぞれ違う生き方をしている獣たちをある程度、肯定してくれる。ダメなことはダメなんだけど、理由もちゃんと描かれています。多様性といっても、自分たちが認められる範囲でしか認められないかもしれない。なかなか言いにくいことも動物にすることで言える。すごい作品です。100年後に見ても刺さるような古典になれる作品だと思います。僕も影響を受けています。
沖野さん 人は変わるのか、変わらないのか? 変わって共感を得て仲間になったり、共感を得て応援される人になったりすることもあるけど、変われないものがあると、僕自身がメロンを演じながら感じていました。レゴシやルイは成長して変わっていくけど、変わらない獣たちもいる。では、社会が悪いのか? 考え方が悪いのか?と問題提起がある。頑張っても変えられないものもあるんだと僕は思いました。 (阿仁間満/MANTANWEB)