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Garden of Remembrance:山田尚子監督×ラブリーサマーちゃんインタビュー(2) 人が人を思う温かい気持ち

「Garden of Remembrance」の一場面(c)Garden of Remembrance ー二つの部屋と花の庭ー製作委員会

 インタビュー(1)の続き。「映画 聲の形(こえのかたち)」「リズと青い鳥」「きみの色」などで知られる山田尚子監督のオリジナルショートアニメ「Garden of Remembrance(ガーデン オブ リメンバランス)」が、アニメタイムズ、ABEMA、Hulu、Leminoほかで配信されている。アネモネの花をテーマとして“きみ”と“ぼく”と“おさななじみ”の3人の揺れ動く感情や“さよなら”を描いたアニメで、マンガ「花のズボラ飯」の作画を担当するマンガ家の水沢悦子さんがキャラクター原案を担当し、サイエンスSARUが制作した。セリフがないアニメで、シンガー・ソングライターのラブリーサマーちゃんが担当した音楽が、繊細な感情を見事に表現した。山田監督、ラブリーサマーちゃんに制作の裏側を聞いた。

 ◇大切な人を想う気持ちの行く先

 ーー「余白を残す」という話がありました。余白を残したまま制作する難しさもあるのでは?

 山田監督 お話をする相手によって変えることもありますが、できればお互い考えながらやりたい気持ちが大きいです。

 ラブリーサマーちゃん 音楽だけでなく骨子からイメージでのやり取りができたのが面白かったです。

 山田監督 最終的にやっぱりあんなに格好いいギターをいただいて、これがほしかった!とたまらない気持ちになりました。

 ーーアニメの中にもギターが描かれています。ポエムの中にもギターというキーワードがあった?

 山田監督 「きみと僕をつなぐもの」として描いたのですが、ラブリーサマーちゃんに「ギターが出てきます」と言ったかは覚えていないです。そういうキーワードではなく、「日常」から「散骨」「死生観」に踏み込む内容でした。

 ラブリーサマーちゃん アイルランド・ダブリンに「Garden of Remembrance」という場所があると教えていただき、そこから膨らませていきました。アイルランドがアイルランドであるために命を落とした人たちの追悼の庭で、それを聞いた時に、お墓じゃないんだ!!とびっくりしました。忘れたくない、残しておきたいものが庭として存在している。人が人を思う気持ちが、場所になっている。喪失は悲しいけど、思いを庭にしようと決めた人たちがいる。それって素敵ですよ。自分の制作の骨になりました。

 山田監督 亡くなられた方を思い出すと、天国でその方の周りにお花が降ってくるというお話を見聞きして、大切な人を想う気持ちの行く先について考えるきっかけになりました。

 ラブリーサマーちゃん 冷たく悲しい話ではなく、人が人を思う温かい気持ちを感じさせる作品にしませんか?というお話もありましたよね。実際に話したわけではなく、監督が書いたポエムからそう感じたのかもしれません。

 -ー山田監督は言葉が先に浮かぶ? それともイメージが先?

 山田監督 どっちなんだろう……。考えたことなかったです。でも、両方が同時に出てくる気がします。言葉が出てきて、イメージがこの辺(頭の後ろの辺りを指す)にあって……。言葉はとても好きです。

 ーー音楽を作るようなところもある?

 山田監督 ミュージシャンの方を前に言うのが、恥ずかしいのですが、コンテを書いている時は、音楽を作っているような気持ちです。音楽を作れないので、すごく憧れがあるんです。憧れの昇華です。

 ラブリーサマーちゃん 自分は“誰でも作曲している説”を提唱していて、例えばメロディーを間違えて覚えていたりするのも作曲だと思うんです。鼻歌も作曲じゃないですか。

 山田監督 面白いですね!

 ◇しっかり語るが語りすぎない

 ーー作品を見た印象は?

 ラブリーサマーちゃん 号泣です。ポエムも見た時、これは絶対にいい作品になるな!と思っていましたが、映像が出来上がった時、何回も見れば見るほど、新しいギミックに気付きます。多分まだ気付けてないものもあると思います。1人なのに、ゲームのコントローラーが2つあるんだ……などと気づく度に、神は細部に宿る!と感じていました。最終版を見た時は、ジョナサンで大泣きでした。

 山田監督 うまく言葉にできないのですが、日々の生活の中で起こった後悔、後悔の先にある今みたいなものがワーッと流れ込んできて。段々と歌詞の主語が入れ替わったりして、この作品の音楽だ!と思ったんです。「正しく傷つくべきだった」も本当に本当に本当に好き! セリフがない作品ですが、ラブリーサマーちゃんの歌に注意深く耳を傾けると、見えてくるものがいっぱいあります。持ち寄ったキーワードの中に「アハ体験」という言葉があったのですが、まさに作品の全てが詰まっているような歌詞です。

 ーー制作を進める中で影響を受け合うところもあった?

 ラブリーサマーちゃん もう少し明るい終わり方なのかな?と思っていたので、2曲目は割と元気で明るいけど、爆発はしないようなフラットな感じで曲を書いていました。コンテで、ドアを開けて、そこで喪失と向き合い、ようやく会えたんだ……という絵を見た時、ここはもっと爆発しなきゃいけないと思い、サビまでうまくビルドアップしていく構成に変えました。

 山田監督 「そこにいるでしょう」のタイミングからですね。いやもう……すごく好き! 語彙力がなくてすみません(笑)。映像は、ある程度出来上がっていた状態で、音楽を合わせた時が素晴らしかったんです。チェックしながら感情移入しちゃって、チェックの気持ちがなくなってしまいました。お別れしたカップルなのかな?と見えつつ、でも実はそうじゃなくて、もっと深いお別れだった……とラブリーサマーちゃんの歌によって見えてきます。すごい! ファンの人みたいになっていますね(笑)。語りきらないものを歌でしっかり語ってくれて、でも語りすぎてもなくて、とすごくバランスがいいものになりました。

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