この「アストロノオト インタビュー」ページは「アストロノオト」のインタビュー記事を掲載しています。
「ツルモク独身寮」などで知られるマンガ家の窪之内英策さんがキャラクターデザイン原案を手掛けたことも話題のオリジナルテレビアニメ「アストロノオト」が4月5日からTOKYO MXほかで放送される。朝食付きのアパート・あすトろ荘が舞台で、料理人の宮坂拓己は自分が作った朝食で、可愛すぎる大家さん・豪徳寺ミラのハートを射止めようと奮闘するも、ミラの正体は宇宙人だった……“というSFアパート”ラブコメディー。「銀魂」「機動新世紀ガンダムX」「こちら葛飾区亀有公園前派出所」などの高松信司さんが総監督、「地獄甲子園」「ドラゴン、家を買う。」などの春日森春木さんが監督を務め、「劇場版クレヨンしんちゃんシリーズ」「スペース☆ダンディ」などのうえのきみこさんが脚本を担当。豪華スタッフが集結したオリジナルアニメということで、期待が高まるが、実は、企画から紆余曲折があったという。高松総監督、春日森監督に制作の裏側を聞いた。
◇初期構想はロボアニメだった!?
--企画が立ち上がった経緯は?
高松総監督 8年くらい前にオリジナル企画のお話をいただき、脚本のうえのさん(うえのきみこさん)、私と数人のメンバーで集まって、企画書を作ったんです。その時はロボットアニメの企画でした。ロボット+ラブコメがコンセプトの企画で、窪之内さんにキャラクターデザイン原案をお願いすることになり、イラストが上がり、企画が固まったのですが、諸事情でお蔵入りして、長い眠りに入り、3、4年前に「あれ、やりませんか?」という話になり、再始動しました。今度は諸事情で、ロボットではないという話になり、SF+ラブコメとして再始動し、企画を練り直したのが発端です。
--窪之内さんのキャラクターデザイン原案は8年前の企画の段階からあった?
高松総監督 実は、8年前に描いていただいたキャラ原案をそのまま使っているんですよ。窪之内さんは、別のアニメのキャラ原案も手掛けていますが、実はその前にお願いしていて、1週間くらいでものすごい量のキャラクターを描いていただきました。すごい熱量でした。企画は一度お蔵入りしますが、このキャラ原案ありきで企画を再始動しました。ストーリーの骨子は、最初の企画はそんなに変わっていないんです。宇宙からヒロインが来てアパートの大家さんになるというのは一緒。骨子は変わっていませんが、ドラマの部分は変わりました。
--春日森監督が参加したタイミングは?
春日森監督 脚本が2、3話できた頃に入りました。ですので、窪之内さんのキャラ原案が最初からある状態でした。:窪之内さんのキャラ原案には、裏設定など細かいメモ書きがありました。
高松総監督 オリジナルアニメの場合、フワッとしてしまうこともあるのですが、設定がちゃんとあったので、みんなで共通認識が持てたところもあります。ミラも最初から全然変わっていません。お話も変わったので、窪之内さんに描き直しますか?と伺ったら、そのままでもいいんじゃない?と言われて。もちろん、新しく描いていただいたキャラクターもありますが。
◇今のアニメにしたかった
--懐かしいアパートという舞台も最初の企画のままだった?
高松総監督 賄い付きのアパートという設定は、私の時代でもほぼ絶滅しかけていたものですが、キャラクターが今日的な悩み、問題を抱えている今のアニメにしたかった。舞台装置は懐かしいのですが、今のキャラクターのつもりで作りました。
--賄い付きのアパートで共同の食卓があることで、キャラクター同士の交流も生まれます。
高松総監督 そうですね。人と人のつながりを描こうとしました。
-ー某人気作を彷彿(ほうふつ)とさせたり、懐かしさも感じたりもしますが、令和の今の時代を描いているようにも感じます。
高松総監督 テーマの一つとして、1980年代のテレビアニメらしいことを今の時代にやりたかったところもあります。昔をそのまま再現したり、懐かしんで作るのではなくて、今の時代にやる意義を考えました。時代設定も昔にしてしまうという案もあったのですが、懐かしい舞台装置で今を生きている人を描こうとしました。
春日森監督 黒電話があって、掲示板じゃないと待ち合わせできないような時代設定では、今の人が共感できないかもしれませんし。
高松総監督 スマホもインターネットもある世界なんです。ただ、人間はそんなに変わるもんじゃないんですよ。人の心は普遍的ですし、各キャラクターの問題、恋心などを描いていこうとしました。
--SFの要素もある?
高松総監督 ミラはミボー星の次期王位継承者です。なぜ地球にやってきたのか? 継承を巡る争いがあるのか?などSFの要素も入ってきます。
◇窪之内英策のキャラの魅力
--窪之内さんのキャラクターの魅力は?
春日森監督 可愛い、格好いいキャラクターがもちろん大きな魅力ですが、最近のアニメに出てこないようなおじさん、おばさんも魅力の一つだと思います。おじさんにしても人生観が出ているんですよね。
高松総監督 キャラクターデザインのあおきさん(あおきまほさん)は、「ツルモク独身寮」を参考にデフォルメを研究していました。
春日森監督 ギャグ顔の表情集を作っていただき、結構使わせてもらいました。あおきさんは、窪之内さんに「『ツルモク独身寮』っぽい表情にしてもいいですか?」と確認して、OKをいただいたんです。
高松総監督 美少女も唯一無二で、それだけにアニメのキャラクターに落とし込むのが大変です。あの雰囲気はなかなか表現しにくい。
春日森監督 あおきさんも言っていましたが、鼻の位置、高さが難しいんです。上目遣いの女の子とかは、あおりを表現するのが難しい。
--脚本のうえのさんの魅力は?
高松総監督 面白い人です。発想が面白いです。びっくりするようなことを書いてくることもあります。
春日森監督 予想外ですよね。毒の部分がチラチラ見えるところがすごく面白い。はっきりとは書かないんですけどね。脚本の端々に出ていて、笑ってしまうこともあります。
--さまざまなスタッフによる化学反応が起きている?
春日森監督 そうですね。小澤さん(小澤和則さん)というエフェクト作画が得意なアニメーターにメカデザインをお願いしたのも面白かったです。
高松総監督 第1話の冒頭のシーンを描いてくれた方で、彼がメカデザインを全部やったんです。あのシーンは撮影処理も今風ではなく。
春日森監督 80年代風ロボアニメ風ですね。
高松総監督 オリジナルアニメは、いろいろな人が関わって、出来上がるところが面白い。アニメは、集団で作るものなので、中央集権的に作るのではなく、みんなでいろいろなものをぶつけ合うと面白い。昔のアニメはそうやって作っていましたし、作り方も昔っぽいかもしれません。オリジナルの醍醐味(だいごみ)ですね。
春日森監督 高松総監督とお仕事させていただけたので、ギャグアニメをがっちりやるのかな?とも思ったのですが、「今回はギャグじゃなくてラブコメだから」とおっしゃっていたのが印象的でした。荒唐無稽なギャグではなく、コメディーとしてストーリーを紡いでいく。そこに気を付けました。楽しかったですね。