「週刊少年ジャンプ」(集英社)で連載中の篠原健太さんの人気マンガが原作のテレビアニメ「ウィッチウォッチ」。MBS・TBS系の日曜午後5時のアニメ枠“日5”で4月に放送を開始し、パロディーも含めたテンポのいいギャグシーンや、アニメならではの構成がファンの心をつかみ、人気を集めている。7月6日放送の第14話「うろんミラージュ 第119話『ファジー討伐-4』」では、劇中に登場するマンガ「うろんミラージュ」がアニメ化されたことも話題になった。原作の独自の“ノリ”を最大限に表現しようとするアニメ「ウィッチウォッチ」の魅力を解説する。
同作は「SKET DANCE」「彼方のアストラ」で知られる篠原さんのコメディーマンガ。「週刊少年ジャンプ」で2021年2月に連載を開始した。魔女になるべく修行中の若月ニコと、幼なじみで鬼の力を持つ高校生・モリヒトの同居生活が描かれる。モリヒトには予言された災いからニコを守る使い魔としての使命がくだされ、前途多難でまか不思議な日々が始まる。
アニメは、「キラッとプリ☆チャン」「トニカクカワイイ」などで知られ、数々のギャグアニメを手掛けてきた博史池畠さんが監督を務め、「映画『五等分の花嫁』」「魔法少女マジカルデストロイヤーズ」などのバイブリーアニメーションスタジオが制作する。シリーズ構成・脚本は「ノラガミ」「荒川アンダー ザ ブリッジ」など人気作を手がけてきた赤尾でこさん、キャラクターデザインは「がっこうぐらし!」「妖狐×僕SS」「かつて魔法少女と悪は敵対していた。」などの飯塚晴子さんと、強力な布陣でアニメ化に挑んだ。
原作は、個性豊かなキャラクターたちが織りなすテンポのいいギャグが大きな魅力の一つとなっている。アニメ化にあたり、アニメならではのテンポを生み出し、原作を未読の人にも「キャラクターを好きになってほしい」という思いから、構成に力を入れた。
毎日放送(MBS)の青井宏之プロデューサーは「原作は単話で全て成立しているんです。ギャグなので、冒頭で何かが始まって、オチで話が収まる。一方で軸となるストーリーもあるので、アニメでは単にギャグを積み重ねていくよりは、1クール目の終わりに目標地点を決めて、そこに向かって、皆さんにキャラを好きになってもらうことを大事にして構成を練りました」と説明する。
バイブリーアニメーションスタジオの谷口英久プロデューサーも「この作品においてはテンポ感が命」と話し、「原作の第1話から順番に放送していくと、キャラクターの印象が薄れてしまう恐れがあったので、新しいキャラクターが登場する回はそのキャラクターのエピソードを2、3個詰め込んで、魅力を知ってもらおうと考えました」と語る。
1クール目は、モリヒトたちの仲間だと思っていたケイゴの正体がウルフだったことが判明し、“仲間の裏切り”を描く「犬と雨滴」がクライマックスとなった。その目標地点を定め、オリジナルシーンを加えて、ケイゴの本格的な登場を早めた。見る人に、モリヒトたちとケイゴの関係性を印象づけることで、1クール目のクライマックスをより盛り上げようとした。
アニメの制作スタッフには、原作ファンも多く、「なるべく多くの原作エピソードをアニメ化したい」という思いが強かった。シリーズ構成の赤尾さんは「いかにぎゅっと凝縮させて、原作のテンポの良さを崩さずに入れられるのか」にこだわり、ギャグ回、感動回、ラブコメ回といった原作の魅力的なエピソードをバランスを意識して構成した。
赤尾さんは、「ウィッチウォッチ」を「緩急がものすごくあっても許される作品」とも感じており、「めちゃくちゃギャグ回の次の週をしっとりとした回にしたり、情緒を壊しにいっても大丈夫な気がしたので、なるべくバラエティーに富んだ構成になるようにしました」と、“何が出てくるか分からない”構成にもこだわった。
「ウィッチウォッチ」は、篠原さんならではのボケやツッコミなど独自のギャグも特徴的だ。池畠監督は、「通常のギャグマンガよりオシャレなところがあって、分かりやすいところもあります。ほかのギャグアニメの手法でアニメ化するのではなく、原作のノリをきちんと生かしたアニメ化をするにはどうすればいいのだろう?と考えました」と語っており、盛りすぎず、いき過ぎず、味付けを濃くし過ぎないよう“さじ加減”を意識した。
セリフのテンポ感も重視しており、アニメ的なギャグのボケツッコミではなく、漫才やコントのような間を目指した。「ほかの作品と比較すると、セリフ優先で編集していると思います。収録が終わった後、再編集に近い感じで、セリフの間尺を調整していて、テンポ感がアップするようにしています。役者さんの力量に助けられています」と語り、声優陣の演技や編集によって独特のテンポ感が生まれている。
一人一人のキャラクターのセリフ量も多く、赤尾さんもシナリオを制作する上で「どこをどこまで削れるか」と試行錯誤を重ねている。「シナリオの段階でも尺に入るように工夫しているのですが、池畠監督が『あとは任せてください』と頼もしいことを言ってくださるので、お任せする回もありました」と明かす。
ギリギリを攻めているようにも見えるパロディーシーンもならではの魅力だろう。青井プロデューサーは、「逃げない姿勢」でパロディーシーンに挑んでいるといい、「逃げようと思えば逃げられるのですが、原作の大事な部分をできるだけアニメにする上で変更せずに、尊重したいと。特にパロディーはできるだけそのまま取り入れるようにしました」と力を込める。パロディーを実現させるために「やるべきことから逃げない」と攻めの姿勢を崩さない。
スタッフ、キャストが力を結集し、原作の魅力的な“ノリ”を表現しようとしている。
第14話「うろんミラージュ 第119話『ファジー討伐-4』」でも原作に真摯(しんし)に向き合う制作陣の熱を感じる。劇中に登場するマンガ「うろんミラージュ」が“ざっくり”ではなく“がっつり”気合を入れてアニメ化されたことが話題になった。「うろんミラージュ」のためにキービジュアルのほか、主題歌も作成され、音楽ユニット「Who-ya extended」がオープニングテーマ「Bitter end」、シンガー・ソングライターのLEOさんによるソロプロジェクト「ALI」がエンディングテーマ「FLASHBACK SYNDROME」を手掛けた。げそいくおさんが絵コンテを担当するなど特別なエピソードとなった。
当初は、「1話まるごと『うろミラ』回でもよいのでは」という案もあったほどで、スタッフは「やるならとことんやろう!」と全力で臨んだ。制作の上では、「ジャンプ伝統の少年たちの戦うアニメのノリで作りましょう」とほかのエピソードとはテイストを大きく変え、背景にもこだわった。
池畠監督は「昭和のアニメのようなぼんやりした背景にしようとしました。建物だけはしっかり描いているけど、地面と空の区切りがちょっと分からないようなぼんやりした感じです。今のアニメは、システムがきっちりしていますし、ぼんやりというのが伝わりにくく、フィニッシュまで持っていくのに各セクションの皆さんは苦労されていましたね」と明かす。
ぼんやりとした背景は、「うろミラ」が醸し出す「何がなんだかちょっとわからない」雰囲気も表現している。谷口プロデューサーらバイブリーアニメーションスタジオのスタッフもいい意味で「よく分からないまま」制作したといい、「『なんだかよく分からなかったけど、ちょっといいものを見れたね』と思ってくれたら」と、原作で「うろミラ」を読んだ人の読後感を目指した。
「うろミラ」を含めて「ウィッチウォッチ」は挑戦的なアニメになっている。パロディーもあれば、ほかのエピソードとは全く画風が異なるキャラクターが登場する回もある。制作陣はその都度「どうすればアニメで面白くできるか」と試行錯誤を重ねている。制作の苦労も想像されるが、どのスタッフも「ほかのアニメではなかなかできないことがやれる」「楽しんで制作している」と意欲的だ。
今後は、どのエピソードがどのようにアニメ化され、ファンを驚かせてくれるのか。「ウィッチウォッチ」の挑戦はまだまだ続く。
提供:ウィッチウォッチ製作委員会