ダンダダン
第8話「なんかモヤモヤするじゃんよ」
11月21日(木)放送分
話題のアニメの魅力をクリエーターに聞く「アニメ質問状」。今回は、森見登美彦さんの小説をアニメ化した「四畳半神話大系」です。製作委員会を代表してアスミック・エース エンタテインメントの竹内文恵プロデューサーに作品の魅力を語ってもらいました。
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−−作品の概要と魅力は?
「四畳半神話大系」は大学生の日常を描いたお話ですが、「舞台が京都であること」「主人公がいわゆる『リアルが充実した人々』となじめない体質であること」そして「複数の並行世界で物語が構成されていること」により、どうにも普通に進まない青春ドラマになっています。
主人公による独特の語り口で紡がれる森見さんの原作のスタイルを極力生かしながら、映像の躍動感と湯浅政明監督のあふれまくるイマジネーションとが有機的に結びつき、見る人の呼吸までも支配するような、稀有(けう)な視聴体験ができる作品になっていると思います。
−−アニメ化のきっかけは?
04年に公開した「マインド・ゲーム」に携わって以来、湯浅監督の作品をもっと多くの人に見てもらえる環境を作りたいとずっと思ってきました。「ハチミツとクローバー」でフジテレビさんとご一緒してから、気が付けば「ノイタミナ」もはや5年。ようやく枠自体の浸透もしてきた6年目に何をやるべきか。確か2年くらい前に企画会議で話していたのですが、フジテレビ内でもちょうど湯浅さんの企画が浮上していると聞き、「ぜひ実現しましょう」ということになりました。その後、「いま、湯浅さんの魅力が一番伝わるやり方は何なのか?」を何度も話し合いました。
一方、森見さん作品のアニメ化についても企画会議では度々出ていて……。「四畳半神話大系」を、湯浅監督にやってもらうことで、新しい化学反応があるのではないか、という話になったときに、企画メンバーの熱量が一気にドン!ときた感じです。
すぐさま中村佑介さんにもお声を掛けさせてもらいました。当時、森見さんの作品で一番よく知られていたのが「夜は短し歩けよ乙女」でした。森見作品のキャラクター像として多くの人が「夜は短し歩けよ乙女」のカバーイラストの印象を持っているのではないか、また、男度の少し高めな「四畳半神話大系」のお話の入り口を女性にも入りやすくしてくれるのではないか、と考えたからです。そして「四畳半神話大系」と中村さんのキャラ原案のセットで提案したところ、湯浅監督からもGOサインをもらいました。
その後、京都の空気感が体に染みついていて精密な構成のできる人……ということで、ヨーロッパ企画の上田誠さんにお願いしたのです。人気イラストレーターの中村さんと、話題の劇団を主宰し、テレビや映画でも引っ張りだこの若手脚本家上田さん。今思うと本当によく受けてもらえたと思います。「森見さんの作品を湯浅監督が……」ということで興味を持ってもらえても、スケジュールが合わなければなかなか成就しないものなので。運にも恵まれた作品ですね。
−−作品を作るうえでうれしいこと、逆に大変なことは?
湯浅監督、そして監督とチームを組んでいる各話スタッフの映像表現は、動画になって「ブウォっ」とわき出てくるものなので、ダビング時に大方色が付いた状態で映像を見る瞬間は、私が言うのもなんですが、至福の時です。
また今回は、監督と上田さんが、何度も根気よくストーリーを練ってくれたので、各話のつながりなど1話ごとに面白さが加速していく要素が満載です。回を追うごとにダビング時に感じるうれしさも増していっています。上田さんや中村さんは、アニメのお仕事をされるのが今回初めてなんですが、アニメーションとしての様式になじませつつも、彼らなりの得意技をそれぞれが出し合ってくれています。
他にもキャラクターデザイン・総作画監督の伊東伸高さんや、各話の絵コンテ・演出・作画監督の方々、そしてキャストの皆さんがそれぞれ得意技を出し合ってリレーをしてくれているような感じがあります。熟練チームに新しい方を紹介する時はいつも、両者が良い具合に力を出し合える環境になるのか、ヒリヒリ、ヒヤヒヤするものです。大変なことがあるとすれば、「それぞれ違うけど共通点があってチームが組みやすい人」をご紹介する際の、相性のよさ、化学反応の想定などを見極めるときかもしれません。実際に作っているスタッフの方々に比べたら、大変と呼ぶのもはばかられますが。
−−今後の展開、読者へ一言お願いします
主人公の「私」が、常に抱えている「一人でいる時や妄想の中ではこんなにも雄弁で堂々としているのに、なぜ人前に出ると、こうもいろいろうまくできないものか」という心のつぶやきは、多くの方が持っている思いではないでしょうか? 映像を一見すると、少し奇抜に見える部分もあるかもしれませんが、この作品は、この主人公の思いに代表されるような王道テーマを扱っています。あまりいろいろ考えずに気軽に見て、映像に身を任せていただければ、目と耳と両方から、普段使わない感覚や感情とともに心にしみ入ってくる何かがあると思います。それで、何か感じてもらえたら、ブログでも何でもいいので反応してほしいです!
地上波での放送は、視聴者の方の反響が制作中にスタッフに届くというよさがあるので、作っている方々のエネルギーになったり、よりよい作品づくりにもつながるのではないかと思います。また、この作品は、1話完結ものとしても楽しめる側面がありますので、途中の話数からでも見てください。
アスミック・エース エンタテインメント プロデューサー 竹内文恵
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