今年の米アカデミー賞外国語映画賞受賞作「瞳の奥の秘密」(ファン・ホセ・カンパネラ監督)が14日、公開された。09年夏に本国アルゼンチンで封切られ、8カ月以上にわたってロングラン上映された話題作だ。
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刑事裁判所を定年退職したベンハミン(リカルド・ダリンさん)は、余生を小説を書いて過ごすと決めていた。彼の心に深く刻まれた事件。それは、25年前の74年、結婚間もない女性が殺された事件だった。ベンハミンは、当時の記憶をたぐり寄せながら、同時に、かつての上司イレーネ(ソレダ・ビジャミルさん)に対する封印していた思いと向き合っていく……というストーリー。
エドゥアルド・サチェリさんによる推理小説を、サチェリさん自身がカンパネラ監督と共同で脚本を書いた。物語の舞台となった70年代のアルゼンチンの公権力の腐敗ぶりにはあぜんとするが、この映画は単なる悪を追い詰める正義の物語ではない。主人公ベンハミンが過去の事件をひもときながら、自身の心の奥にしまい込まれた感情と向き合う姿を描く愛の物語だ。ベンハミンが書き付けたメモ書きや、「A」のキーが欠けたタイプライターなどの小道具が、心の機微を巧みに表現している。
カンパネラ監督は編集も手掛けた。日本では未公開作ばかりだが、米テレビドラマシリーズ「ロー&オーダー」のスピンオフ作品や、「ドクター・ハウス」では07~10年の5エピソードを手掛けている。また、02年には、映画「El hijo de la novia (英題:Son of the Bride)」がアカデミー賞外国語映画賞にノミネートされた。
ベンハミン役のダリンさんは、濃いひげと深い色をたたえた瞳が色気とともに誠実さを印象づけるダンディーな俳優で、美しく聡明な女性イレーネを演じたビジャミルさんともどもアルゼンチンを代表する俳優だという。劇中で25年という時の流れを違和感なく演じ切った2人。彼らの演技力が映画を一層味わい深いものにしている。14日からTOHOシネマズシャンテ(東京都千代田区)ほか全国で順次公開。(りんたいこ/毎日新聞デジタル)
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