1巻が発売されたコミックスの中から、編集部と書店員のお薦めマンガを紹介する「はじめの1巻」。今回は、「月刊コミック@バンチ」(新潮社)で連載、すしを擬人化し、すしネタを頭に乗せた女の子と現代を生きる女性たちとの交流を描いた安田弘之さんのマンガ「寿司ガール」です。
ウナギノボリ
解説:新たな“最高峰”を目指したガンプラ 45周年のこだわりとは
頭にコハダを乗せて「私 昨晩あなたに助けていただいたコハダでございます」と書いた手紙を一人の女性に送った小さな女の子。コハダと名乗る女の子は、その女性の家で共に暮らし、その生活を見つめ、静かに人生に寄り添っていく。短編で構成されており、1巻にはほかに女子高生風のイカ、エジプトの女王風で高飛車なイクラ、幼い子供のような玉子などの女の子「寿司ガール」が登場。さまざまな女性たちの人生と関わっていく……という物語。
「寿司ガール」というと、「おすし屋さんで働く女の子のマンガ」とよく勘違いされてしまうのですが、このマンガではイカ、イクラ、玉子といったすしネタを頭に乗っけた妖精(?)が孤独な女性の前に現れて少しだけ人生を変えていく、というお話が8編収められています。
登場する女性は、時間を埋めることに懸命なOL、男とおしゃれと食べ物にしか興味のない“スイーツ女”、とがった言葉でしか人と接することができない女教師とさまざまですが、皆に共通するのは孤独を抱えていることです。
家族がいても、友人や恋人がいても、決して消えることのない「孤独感」。これを癒やすことができるのが、何者でもない、言葉すら発さない「寿司ガール」たちなのです。
重くなりがちなテーマを、時に笑えて、時に泣けて、時に考えさせられるエンタメに昇華させている安田先生の手腕は、本当に職人芸・匠(たくみ)のワザと言うほかありません。
また代表作「ショムニ」や「ちひろ」の女性心理描写に定評のある安田先生ですが、今回もあらゆるタイプの女性たちを、優しく繊細に描ききっています。「本当にコレ、男性が描いてるの?」とは、よく聞かれる質問ではありますが、なぜ安田先生がここまで女性を知り尽くしているのか……。担当の私でも分かりません。
手前みそではありますが、傑作だと思います。今の時代、この本が響く人は多いのではないでしょうか。日々頑張りすぎて、少々疲れてしまった女性たちに、ぜひ読んでもらいたいと思っています。
「寿司ガール」というタイトルだけではどんなマンガかまったく想像ができず、そしてまさかこんなに不意打ちで泣かされるだなんて思ってもみませんでした。頭に乗せたすしネタによってさまざまなキャラクターを持った「寿司ガール」たちは、まるでおすしの精霊のよう。しかし魔法などを使うわけでもありません。ただそばにいてくれて一緒に生活しているうちに、胸の中に抱えたそれぞれの苦い思いがほぐされていく女性たちを少しうらやましくも思います。この本こそがまさに、自分の心に寄り添ってくれる「寿司ガール」そのもののような存在ですね。
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