ワイルド7:羽住英一郎監督 「アクション、ヒューマン、ラブのいいとこ取り」

「ワイルド7」を手がけた羽住英一郎監督
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「ワイルド7」を手がけた羽住英一郎監督

 大ヒット映画シリーズ「海猿」の羽住英一郎監督が、69~79年に少年マンガ誌で連載された望月三起也さんのマンガ「ワイルド7」を実写映画化した。元犯罪者が法律で裁けない悪人を問答無用で“消去する”という内容は、当時、荒唐無稽(むけい)ながら「革新的」と話題を呼び、72~73年に実写ドラマが放送された。あれから約30年たち、完成した新作を「荒唐無稽なパッケージ感は維持した」と評する羽住監督に話を聞いた。(りんたいこ/毎日新聞デジタル)

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 映画「ワイルド7」は、原作同様、法で裁けない悪人を排除していく超法規的警察組織“ワイルド7”のメンバー7人の活躍を描く。“処刑マシン”として訓練された7人は、もともとは殺人者や爆弾魔、詐欺師といった犯罪者で、彼らを瑛太さん、椎名桔平さん、関ジャニ∞の丸山隆平さん、阿部力さん、宇梶剛士さん、平山祐介さん、松本実さん、そして彼らの上司役で中井貴一さんが、さらに物語の鍵を握る女性として深田恭子さんが出演している。

 羽住監督が、マンガ「ワイルド7」の存在を気にとめ始めたのは小学校1、2年のころ。ただ、読むマンガはもっぱら「サザエさん」や「いじわるばあさん」だった羽住少年にとって、この「ワイルド7」は「女性の描き方もセクシーで、見てはいけないというイメージがあった」という。実写ドラマの方は「まったく知らなかった」そうだが、ともかく、そういった作品の実写映画化をオファーされ、まず頭をよぎったのが「難しい」という言葉だった。それは、「人気があったマンガだから」というのではない。「今の若い人は『ワイルド7』といっても分からないのではないか」と思ったからだ。

 また「原作が持つ荒唐無稽さをどう表現するか」も気がかりだった。中でも監督が頭を痛めたのは、主人公たちによる“人殺し”に、いかに妥当性を持たせるかだった。「元犯罪者であるということを百歩譲って(観客が)受け入れてくれたとしても、やっている行為が人殺し。正義のためという理屈は、今の世の中では通用しない。そうした中で、この原作をよしとして作っていくことが、一番の難点でした」と打ち明ける。

 確かに、ここで繰り広げられるのは、白昼堂々拳銃をぶっ放したり、大型バイクで街中を疾走したりと、「ありえないことが起きて、ありえない人たちが事件を解決していく話」と羽住監督も認める。しかし、そのありえなさもまた「ワイルド7」の魅力だ。「『ワイルド7』のよさって、その荒唐無稽さだと思うんです。ですから、映画は荒唐無稽に振り切り過ぎないように、でも“マイルド7”にならないよう意識した」と指摘する。

 そのワイルド7のメンバーを演じた俳優については「個性ある人たちがそろった。それぞれが持つ、型にはまらない感じを生かしたかった。そういう意味でカッコいいシーンを撮ることができた」と自信を見せる。「彼らが、あまりにもカッコいいので、革ジャンだけではなくドレスアップした姿を見たい」と、7人に正装させるシーンを「無理やりつけ加える」こともした。その結果、「どういう設定かもわからないパーティーのシーンになった」と笑うが、それぞれのファンにはたまらない場面となった。

 もちろん、彼ら7人によるバイクアクションは、今作における最大の見どころだ。「走らせると一瞬でかなりの距離を動いてしまう」オートバイを、駅の構内や人で混雑する建物の階段を上らせるなどし、「立体的な映像」をとらえようと相当な苦労をしたそうだが、パイロウ役の丸山さんが今作のためにバイクの大型免許を取得し、7人全員が本物のバイク乗りとなったことで「迫力はもとよりシーンに真実味が出た」と胸を張る。その一方で、大型免許の取得はかなわなかったが、瑛太さんふんする飛葉大陸が運転する時速100キロのバイクに2人乗りをするなど、男性陣に交じり危険なアクションをこなした本間ユキ役の深田さんについても、「カッコいい」「すごく根性がある」とたたえる。

 羽住監督といえば「海猿」という大ヒットシリーズがある。「海猿」は当初、「カップルで見に来てもらえる映画」を狙った。ところがシリーズを重ねたことで、1作目のときの若者が親になり、子ども連れで見に来たりと、「観客層がものすごく厚くなっていった」。それとはこの「ワイルド7」が、また違う客層になることは予想している。その上で今作を、「アクションはもちろん、ヒューマン、ラブストーリー的なものがバランスよくある、割といいとこ取りの映画」と表し、「デートムービーとしてもOKですし、女性たちだけでカッコいい男たちを見に来てもいい。バイク好きやアクション好きの男子たちだけで見に来てもいい」とアピールし、インタビューをしめくくった。

 <プロフィル>

 1967年千葉県生まれ。ROBOT映画部所属。「恋人はスナイパー」(01年)、「Antique 西洋骨董洋菓子店」(01年)、「ホーム&アウェイ」(02年)など、数々のテレビドラマで演出を務め、04年、「海猿 ウミザル」で劇場映画の監督デビュー。その後、「逆境ナイン」(05年)をへて、「LIMIT OF LOVE 海猿」(06年)を大ヒットさせる。08年に「銀色のシーズン」、09年に「おっぱいバレー」を発表。10年、「THE LAST MESSAGE 海猿」も大ヒットを記録した。現在、12年公開の続編「BRAVE HEARTS海猿」を製作中。

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