初代林家三平の妻でエッセイストの海老名香葉子さんが9日、上野公園(東京都台東区)の「時忘れじの塔」で、戦争を語り継ぐ会「時忘れじの集い」を開いた。東京大空襲で家族6人を亡くし戦災孤児となった海老名さんは当時を振り返り「この年になっても家族がどこかで生きているんじゃないかと思ってしまいます」と言葉を詰まらせた。まもなく1年を迎える東日本大震災についても被災地を訪問したといい、被害の状況を「あの戦争と同じような思い」と胸を痛め、「今は平和な時代ですから、『助けて』って言えば、誰かしら助けてくれます。みんなで助け合って孤児の皆さんに優しい手をさしのべてあげてほしい」と呼びかけた。
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「時忘れじの塔」は、関東大震災と東京大空襲犠牲者の慰霊塔として海老名さんが05年に私財を投じて同公園に建立した母子像。「時忘れじの集い」は04年から9日に毎年行われている。式典には、海老名さんのほか、息子で落語家の林家正蔵さん、二代目林家三平さんらも出席した。
長男の正蔵さんは雨に打たれながら出席した人々へ「命あるものは、今自分に与えられていることを一生懸命やり、亡くなった方への思いを胸に秘めて生きていくのが大事。どうぞご自愛くださって、一日でも長生きしてください」とあいさつ。三平さんも「(昭和)45年生まれで戦争の記憶ははっきり言ってありませんが、母から話は聞いています。今までは受け止める側でしたが、今度は後世に伝えなければならない立場になりました。決して忘れずに、平和への思いを伝えていきたいと思います」と決意を語った。
海老名さんは「私も80歳に近いんですから、あと10年頑張らなきゃ。もっともっと長生きをしてこの式典を続けていきたい。できなくなったら息子たちに、それもできなくなったら孫たちにやらせたい」と思いを語り、「あの子たちには、『お母さんが倒れたら、しっかり平和への思い、戦争のむごさ、悲しみを伝えていくのよ』とよくよく伝えてありますから。孫にも伝えつつありますから、続いていくと信じています」と語っていた。(毎日新聞デジタル)