1巻が発売されたコミックスの中から、編集部と書店員のお薦めマンガを紹介する「はじめの1巻」。今回は、「月刊コミック@バンチ」(新潮社)で連載、自身のマンガ家生活の裏事情を金銭面から赤裸々に描いた中村珍さんのエッセーマンガ「アヴァール戦記」です。
ウナギノボリ
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初めてのエッセーマンガを請け負った作者は、ファミリーレストランで編集担当者とその内容について打ち合わせ、ケチといわれる作者の金回りを描くことに。自身の原稿料や経費の内訳のほか、アシスタントの仕事効率、東日本大震災で被害を負った仕事場の様子、さらには原稿を間に合わせるために行う緊急時の執筆テクニックなどが具体的な数字とともに明らかにされていく。
私は、中村珍先生として生まれてこなくてよかったと思います。知り合ったころから、常にいろいろなトラブルごとに巻き込まれてる印象があるからです。「どう考えても運が悪い!」と思うこともしばしば。並の人間でしたら耐え切れません。
そんな中村先生を見るにつけ、こんなにアップダウンの激しい人生だったらエッセーを描いてもらったら面白いのでは?? と思うようになったのが、この連載が始まったきっかけです。
連載がスタートしたあとも、まあ起こる、起こるトラブルが。ただシャレになってないものも多く、マンガにできないネタが実はたくさんあります(苦笑)。
ただ、何が起こっても、毅然(きぜん)と受け止め、時には信頼しあう仲間のために、仲間とともに、立ち向かっていくさまは勇ましく、戦士のようです。血をはきながらも勇ましく屹立(きつりつ)する。単行本ジャケット(表紙)のイラストそのものなのです。
「アヴァール戦記」は「カネの話の暴露っぷり」が売りのエッセーマンガですが、私個人が見てほしいところは、この中村先生のたくましさなのです。
あと、もう1点アピールしたいことがあります。この単行本はものすごくボリュームがあります。毎話の濃さだけでもおなかいっぱいになりますが、単行本特典として、読者からの相談を中村先生が回答する「相談室」を11例収録。中村先生のユニークな人生観が垣間見られます。
ほかにも、関係者(アシスタントやマンガ家、編集者)10人へのインタビューコーナーもあります。ボリュームありすぎです!
今まで読んできた数々のエッセーコミックの中でもこの切り口は斬新。原稿料のこと、その内訳、なかなか他人に言いづらい裏事情をここまで赤裸々に書いて大丈夫かな?とハラハラしつつも、中村先生の合理的な考え方や仕事の進め方にとても感心してしまいました。合理的すぎて「それはアリなの!?」と問わずにいられない場面もありましたが開き直ればそれもアリ!その徹底した「アヴァール(ケチ)」ぶりは時に悲痛、時に豪快。笑えないほどの深刻な状況すらこうしてマンガにするプロ根性は尊敬に値します!
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