吉高由里子:初恋はプールの先生「ちょっかい出してました」 映画「僕等がいた」のヒロイン

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 02年に「月刊ベツコミ」(小学館)で連載が開始され、2月発売の3月号で最終回を迎えた小畑友紀さんの人気マンガ「僕等がいた」が、「ソラニン」の三木孝浩監督の手で映画化され、現在「前篇」が公開中だ。高校2年生の新学期に同じクラスになり、付き合い始めた生田斗真さん演じる矢野元晴と、吉高由里子さん演じる高橋七美。2人の10年以上にわたる愛の物語が、2部作でつづられていく(「後篇」は21日公開)。七美役の吉高さんに、映画のこと、共演の生田さんのこと、自身の初恋話などを聞いた。(りんたいこ/毎日新聞デジタル)

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 −−ベタな恋愛ドラマを想像していたところ、「前篇」を拝見し、たちまち魅了されました。吉高さんご自身、この映画の魅力はどこにあると思いますか。

 いっぱいあると思うんですけど、実際にそういう経験をした人も、していない人も、男の子があこがれる女の子だったり、女の子があこがれる男の子のエッセンスがいっぱいちりばめられた作品になっているからだと思います。

 −−「前篇」は北海道釧路市で撮影しました。

 三木監督は画(え)に本当にこだわりを持たれている方で、シーンによって、晴れた日に撮影したり、雲を待って撮ったりしていらっしゃったので、その分、釧路のよさが前面に出ていると思います。そういうところも、「前篇」のほっこりした、きゅんきゅんした、柔らかい作品につながっているのではないでしょうか。

 −−七美が社会人になった「後篇」の撮影は東京で行われました。印象に残っているシーンはどこでしょうか。

 恵比寿ガーデンプレイスのシーンですね。(七美と矢野が)再会するところとさよならするところ。(三木監督は)いろんな画をいろんなアングルで撮っていらっしゃいました。

 −−原作を読みながら役作りをしたそうですね。

 七美に共感する、しないは別として、彼女の発言だったり、行動だったりを見ながら、声のトーンやくせを探っていきました。

 −−七美に共感できなかった?

 (七美と私とでは)経験してきたことが違うので、(気持ちは)分からなかったですね。でも、やっていくうちに生田(斗真)さんは、生田さんでなく矢野になっていって、高岡(蒼佑)さんは(矢野の親友の)竹内さんになっていったので、その中にいる私も自然と「僕等がいた」の世界観に関われた感じがしました。

 −−七美を演じるにあたって配慮したところはどんなところでしょうか。

 普段よりもちょっと高い声でしゃべったり、ゆっくりしゃべってみたりしました。あとは、焦るところで手をパタパタさせたり、少女マンガ的な動作というんでしょうか、ギュッと固まったりしていた記憶があります。

 −−高校時代を描く「前篇」、社会人になってからの「後篇」、どちらが演じやすかったですか。

 演じやすいということはなかったです。ただ、私は通信制の高校だったので、クラスメートと戯れたりするという経験がなかったので、今回の撮影はいい経験になったと思います。それから、釧路という解放感のある環境で1カ月半も過ごせたことで、メンタル的にすごくリフレッシュできたと思います。

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 ◇生田斗真はプライベートでは“赤ちゃん”

 −−「前篇」と「後篇」の間には6年の歳月が流れた設定になっていますが、撮影は、5月に釧路、6月に東京と短いブランクで行われました。やりにくいことはなかったですか。

 「前篇」の釧路は、つんと鼻につくような寒さの中で撮影していて、(自然の中に)放牧されたような気分でした。かたや東京はすごく蒸し暑くて、人ごみをよけながらの撮影ということで、現実に引き戻されたような感じでした。東京と釧路の間が1週間くらいしかなかったんですが、その環境の変化を感じたときに、釧路での撮影がすごく昔に感じられて、それが「前篇」「後篇」の時間的経過を表現するのに役立ちました。ですから、「後篇」がやりにくいということはなかったです。

 −−印象的なせりふがたくさん出てきますが、吉高さん自身、記憶に残っているせりふはありますか。

 そうですね……。いっぱいあるんです。文字のほうがインパクトが大きいという言葉もあれば、言葉にするから耳にすっと入ってくる言葉もあるし……。

 −−例えば「後篇」の「記憶が思い出に変わる瞬間を私は知っている」という言葉はどう思いますか? そもそも「記憶」と「思い出」の違いってなんだと思います?

 ナレーションの部分ですね。記憶というのは現在進行形なんじゃないんですか。ING形。思い出になったら過去になっちゃう。進んでいないんですよ。

 −−七美の中では、矢野は思い出にしたくない、でも思い出に変わっちゃったと?

 ……と、私は理解して演じていました。一緒に歩くんじゃなくて、そこに止まったままのものを抱えていたというイメージで演じました。

 −−吉高さんご自身、初恋の人が運命の人になりえると思いますか。

 私、初恋の人はプールの先生なんですよ。私が幼稚園のときに25歳くらいだったはずです。とすると、いま45歳ぐらい。名前も顔も思い出せないんですけれど。

 −−ということは、初恋の人は運命の人になりえない?

 初恋なのか、そもそもあれが恋というのか。ちょっかい出してました。先生が生徒さんを集めて、今日はなになにをしますという説明のときに、その先生の足の親指の毛を引っ張って抜いていたりとか。好きだから意地悪するという心の目覚めを、その先生が教えてくれたような感じですね。

 −−そのときの感情は、今回の七美役に生きています?

 いいえ。ちっとも(笑い)。人を好きになる、なり方が違うんでしょうね、七美さんと私とでは。

 −−生田さんに対する印象は共演する前と後とで変化しましたか。

 すごく変わりました。ああ見えて、すごく熱い方ですし、お芝居の話が大好きですし、現場では絶対二枚目なんですよ。スタッフさんにも気配りができて、すごく広い視野を持っている方で、常に現場を見渡してるような方です。でも、プライベートでは割と幼い、赤ちゃんです(笑い)。そのギャップが不思議だなと思います。

 −−改めて「後篇」の見どころとメッセージをお願いします。

 「前篇」で見せたキラキラした感じや、ほっこりした感じが、「後篇」ではまるで違うテンポのストーリーになっていて、でも七美と矢野がお互い成長する過程もあって、最終的にはどうなるのかなという展開になっています。大人になったらなったでいろんな事情が出てきて、それを描く「後篇」では、登場人物一人一人のエピソードも丁寧に描かれています。私は「前篇」あっての「後篇」だと思っています。「後篇」も見応えがあって面白いですよ。

 <プロフィル>

 1988年生まれ、東京都出身。06年の「紀子の食卓」で映画デビュー。この作品でヨコハマ映画祭最優秀新人賞を受賞。08年初主演作「蛇にピアス」ではブルーリボン賞新人賞、日本アカデミー賞新人俳優賞などに輝いた。11年「婚前特急」でヨコハマ映画祭主演女優賞受賞。他のおもな出演作に、映画は「重力ピエロ」(09年)、「GANTZ」前編・後編(11年)など。ドラマは「太陽と海の教室」(08年)、「美丘 君がいた日々」(10年)、「私が恋愛できない理由」(11年)などがある。初めてはまったポップカルチャーはゲーム。「小さいころからゲームが大好きで、『スーパーマリオブラザーズ』などもやっていました。わが家は決して裕福な家庭ではないですけど、父も兄もゲーム好きで取り合いになってしまうので、一人に1台ずつ当たるようにテレビが3台ありました」と話した。

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