3人組バンド「サンボマスター」が約2年3カ月ぶりのオリジナルアルバム「ロックンロール イズ ノットデッド」を11日にリリースした。今作は、東日本大震災後に被災地や各地へ積極的に赴き、ライブを行ってきた経験が原動力となった渾身(こんしん)のアルバム。「サンボマスター」は00年、ボーカル&ギターの山口隆さん(福島県出身)、ベースの近藤洋一さん(栃木県出身)、ドラムの木内泰史さん(千葉県出身)で結成。3人に新作完成までの経緯を聞いた。(水白京/毎日新聞デジタル)
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−−バンドの成り立ちのお話からお聞きします。皆さんは、もともと大学の音楽サークルの先輩・後輩だったそうですが、バンド結成のきっかけは?
木内さん:俺がちょうど大学を卒業した春、山ちゃん(ボーカル山口さん)から「俺とロックンロールで心中しよう」って誘いの電話がかかってきまして、二つ返事で「分かった」と。それでバンドをやることになりました。
近藤さん:俺は(結成まで)ベースを弾いたことがなかったんです。
山口さん:もともと友達で仲良かったし、(楽器が)うまいからとかじゃなくて、楽器はなんでもいいから近ちゃん(近藤さん)に入ってほしいって。それで「練習やるから、明日10万円のベース買ってきてくんねぇか」って。
近藤さん:覚悟の10万円でした(笑い)。
山口さん:だから、バンドへの心意気とか勢いっていうところで、バンドを組んだらもう目的達成、みたいな。100万枚(CDを)売るとか、ライブの動員をなんとかして、みたいなことはまったく思ってなかったんです。ただ、5000人のお客さんを前にしてもビビんないヤツがいいなとは思ってて、2人ともビビんないだろうなって。でもその何年後かに、ホントにフェスでそんな人数の前でライブをやるとは思ってませんでした。
−−今回の「ロックンロール イズ ノットデッド」は6枚目のアルバムになりますが、どんな思いで制作に臨みましたか。
山口さん:昨年1年のライブやフェスでのお客さんのすごさというか、震災が起きても“立ち上がるんだ”というすごく力をお客さんからもらって。仲間のバンドマンも、物資を送ったりというのも含めて、すごく力強く活動してたんですね。そういうものから受けた衝動や力をちゃんと返す作品にしようというのはありました。
近藤さん:お客さんの一体感というか、“悲しい”とか“怒り”という感情の先に、そういう一体感で支え合おうとする、希望に満ちた明るいものを感じたんです。それにすごく衝撃を受けましたね。
木内さん:日常がこんなにいとおしいもので、こんなにあっけなく奪われる可能性があるものなんだっていうのも初めて思い知りましたし。でも、“悲しい出来事”をそのまま形にするんじゃなくて、俺たちなりのロックンロールの解釈で形にしようっていう、ものすごく高いモチベーションはありました。
−−アルバムが仕上がって、自分たちで改めて感じることは?
木内さん:“前作を踏まえて”というのはよくあると思うんですけど、全然そういうこともなく、今、目の前にある曲をどう形にするかっていうことしか考えてなかったから、自分でもすごくフレッシュな感じがするし、6枚目にして最高傑作なんじゃないかと思います。
近藤さん:猪苗代湖ズの「I love you&I need you ふくしま」を初回盤限定でカバーさせてもらったんですけど、昨年の震災以降、僕らもほぼ全部のライブ会場で歌わせてもらったんですね。そのとき、もちろん故郷の福島を思うっていう、すごく個人的な歌なんだけど、いろんな人が自分の大切な場所をそこに重ねたり、すごくシンパシーを感じたという声をいただいて。そんなふうに、たった一人の人がたった一人の人のために歌うっていう曲が今回は多いと思うんですけど、すごく強烈な普遍性がどの曲にもあるなって。
−−山口さんは昨年のNHK紅白歌合戦で、猪苗代湖ズとして「I love you&I need you ふくしま」を披露しましたよね。緊張したりしませんでした?
山口さん:不思議なもので、ああいう場に立つとそういうもの(緊張)がなくなるんですよね。100人の前でも、何千万人の人が見ている状況でも、やっぱ一緒じゃないと逆に失礼だと思うんです。そういう意味では、いつもと同じように力の限り歌いましたけどね。
木内さん:俺らは舞台袖で見てたんですけど、すげぇ緊張しました。人のライブを見てあんなに緊張したのは初めて。(カバーする際も)“猪苗代湖ズのメンバーの思いをしっかり背負ってやろう”って、けっこうな決断をして臨んだし、俺らにとってもすごく大事な曲です。
−−いろんな気持ちが詰まったアルバムであり、タイトル「ロックンロール イズ ノットデッド」にも意味深さを感じますね。
山口さん:昨年からのライブやフェスで受けた衝動や、日常生活を送るってこんなに大変なのかっていうことに気づいたその衝動になんて名前を付けるのか。「君たちは終わった」といわれて「いや、俺は終わってると思ってない」って心のどこかで思うことに、なんて名前を付けるのかっていうところで「ロックンロールイズ ノットデッド」という言葉が思い浮かんで。だから、 震災にからめなくても“もう一回新しい恋に生きる”でもいいと思うし、“打ちのめされてももう一回やるんだ”っていう気持ちを持ってくださるなら、それは僕らにとって幸せなことですよ。
<プロフィル>
00年、山口さん、近藤さん、木内さんで結成。03年にメジャーデビュー。初めてハマッたポップカルチャーは、山口さんが「アメリカ文化」。「おやじがジャズ好きで、ジャズのレコードがすごく家にあったんです。あと、60年代の西部劇の映画とか。それが小学生くらいのときで、アメリカってこんな自由なのかって思いました」。近藤さんは「田宮模型(プラモデルメーカー。現・タミヤ)」。「プラモデルのバッテリーやモーターが別売で、それを買いそろえて自分で組み立てるっていう“大人になった感”がすごく面白かった」。木内さんは「週刊少年ジャンプ」。「小1~2年のとき、公園のトイレにマンガが落ちてて、テレビアニメで見るのよりずっとストーリーが進んでる『キン肉マン』が載ってるのを見て、それから『少年ジャンプ』にハマりました。毎週穴が開くほど読んでましたね」と話した。
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