10~12日に東京ビッグサイトで開催された日本最大級の同人誌即売会「コミックマーケット(コミケ)82」の企業ブースにこれまでと異なった動きがみられた。企業ブースは出版社やアニメ会社、ゲームメーカーの出展が大半だったが、今夏は、「Google(グーグル)」、「サントリー」や鳥取県などが出展。マンガやアニメなどの“サブカルチャー”とは無縁に見える企業の出展は、50万人を超える参加者にどのように受け入れられたのか。出展の意図と手応えを探った。
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コミケは、75年に始まったマンガや小説、ゲーム、音楽などの同人誌の即売会で、現在は夏と冬の年2回開催されている。11年夏は期間中、約54万人、同年冬は同50万人、今夏は過去最多タイとなる同56万人を集めた。ブースには、同人誌を販売する一般ブースと商業作品を扱う企業ブースがあり、企業ブースは、95年夏から導入され、96年冬から本格的にスタートした。
これまでの企業ブースでは、人気作の限定グッズの販売や新作のプロモーションを目的とした関連企業の出展が一般的だった。しかし、SNSのカバーイラストを集めた画集などを抽選で無料配布したグーグルや「国際まんが博」などのアピールを目的とした鳥取県、「C.C.Lemon 擬人化プロジェクト!!」と題して、美少女キャラクターが描かれた200種類の「C.C.レモン」缶を展示したサントリーなど、今回初出展した企業や自治体は、サブカルチャーに関連した新たな取り組みをアピールすることに主眼が置かれているのが特徴だ。また、鳥取県の担当者が「アニメやマンガなどサブカルが好きな人が集まる世界最大級の同人誌即売会を通じて鳥取県をアピールし、町おこしに結びつけたい」と話すように、サブカルチャーとは一見縁遠いこれらの企業や自治体が出展すること自体が、50万人以上の参加者の話題に上ることも大きなメリットだと感じているようだ。
これらの取り組みはおおむね成功だったようで、中でも女優の宮崎あおいさんが出演するテレビCMでもおなじみのブランド「アースミュージック&エコロジー」のブースでは、usiさんらネットで人気のイラストレーターがデザインしたキャラクター「初音ミク」のTシャツなど販売。ブースではブランドのコアターゲットの20~30代女性以外にも男性が多く訪れ、中には売り切れたアイテムもあったという。ブランドの担当者は「アパレルがコミケに出展するのは珍しいですが、コアターゲット以外の10代の女性も購入されていますし、メンズも人気です」と手応えを感じたという。また、グーグルのブースでも、無料の抽選でもらえる人気イラストレーターの画集を求めて多くの来場者が列を作り、同社関係者も「予想以上の人が来てくれた」と驚くほどの人気だった。
固定ファンの多い“サブカル市場”は一般的に不況に強いとされる。そうしたサブカル市場の消費者が最も集まるコミケに、さまざまな企業や自治体が新戦略のアピールの場として活路を見いだすケースは今後も増えていく可能性は高い。一方で、一部のコンテンツに人気が集中し、苦戦を強いられる関連企業も多い中で、“門外漢”がどこまでアピールできるかは不透明だ。目の肥えたユーザーの心をどうやってつかむか、より丁寧で息の長い施策も求められそうだ。(毎日新聞デジタル)