発売前日の土壇場で延期が決まり、ちょっとした騒動になったソニー・コンピュータエンタテインメント(SCE)のネットワークレコーダー・メディアストレージ「nasne(ナスネ)」が、諸問題が解消されたとして30日発売された。ハードディスクと衛星チューナーを内蔵し、ネットワーク連携にも対応と、100万台以上を販売したPS3用地デジチューナー「torne(トルネ)」の“進化系”であることに加え、1万6980円というネットワークレコーダーとしては手ごろな価格もあって、ゲーマーのみならず幅広い層から注目の商品だ。さっそく「nasne」を触り、操作感などを確かめた。(大類洋輔/毎日新聞デジタル)
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「nasne」は、500GBのハードディスクドライブ(HDD)と地上デジタル、BS、110度CSのチューナーを搭載したレコーダーで、ネットワークを介してソニー製品などと連携できる。「nasne」の本体に映像出力端子はなく、本体を家庭内ネットワークに接続し、「PS3」や「VAIO」などの対応機器を経由することで番組の視聴や録画を行うのが特徴だ。また、ネットワークレコーダーの名の通り、ホームネットワーク内の対応機器であれば、「nasne」にアクセスすることで、家中どこにいても番組の視聴や録画ができる。
録画モードは「DR」と「3倍」の2種類。また、1台のPS3に対して、nasneは最大4台まで登録可能で、その場合は4台の同時録画が可能になる。また、「torne」と組み合わせれば、nasneとtorneで2番組を同時録画できるため、1台のPS3から最大で5番組の同時録画ができる計算だ。VAIOの場合も、1台のVAIOに対して最大8台の同時登録ができる。
レコーダーのほか、メディアストレージとしての機能も装備。動画や音楽、画像などのさまざまなコンテンツを「nasne」に搭載されているHDDに保存し、家庭内ネットワーク上にある各種DLNA対応機器と共有することができる。USBで外付けHDDを接続すれば保存容量の拡張も可能だ。
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今回、PS3と連携した環境で「nasne」を体験した。箱から取り出した本体は非常にコンパクトで軽量。重量は約460グラム、外形寸法は幅約43ミリ、奥行き約189ミリ、高さ約136ミリと片手で持てるサイズになっている。背面の入出力は、LAN端子、アンテナ入力端子(3波混合)、アンテナ出力端子(同)、USB端子だけのシンプルな作りだ。映像出力がないので、従来のAV機器のようにテレビのそばに置かなくてもいい。場所を選ばず設置できるというのも大きなポイントだ。
まず最初に、「nasne」にアンテナケーブルとLANケーブルをつなぎ、ネットワークへの登録処理を行うのだが、その操作が非常に簡単だったことに驚かされた。接続すると「torne」アプリがネットワークを自動検出し、後は登録画面に従って操作するだけで、簡単に「nasne」を利用することができる。SCEの担当者によると、「買ってすぐに使える」ことを意識したといい、家電機器の接続やネットワーク接続などに苦手意識を持っている人でも苦労しないだろう。
操作感は「torne」の特徴を引き継ぎ、軽快な動きでレスポンスも高速。ストレスフリーでメニュー操作やEPG(電子番組表)の閲覧ができる。番組の検索方法もシンプル。EPGからの検索のほか、ジャンル検索やキーワードによる検索も可能で、さらにBS、CSの中で自分が契約している番組だけを検索するなど、見たい番組の絞り込みはしやすい。一方、ある特定のキーワードで検索した番組を全て一括録画予約登録するなどの機能は備わっておらず、録画予約機能に関しては、若干の物足りなさを感じた。ただ、1万6980円という価格の手ごろさを考えれば、このパフォーマンスは十分過ぎると思う。
視聴する番組を選んだり、録画した番組を視聴するなどの処理は、「nasne」と「PS3」間のネットワーク経由で行われるのだが、そのアクセスの速さにも驚かされる。体感としては、既存のHDDレコーダーの同操作より、同じか、もしくはそれよりか速いと思われるほど。また、再生中のスキップ、変速などのコントロールやシーンサーチなどのトリックプレーもネットワーク越しにもかかわらず非常に高速で操作できる。
このように、「nasne」と対応機器のアプリの組み合わせにより、ネットワークを介しても高速操作を実現している。このアプリの開発にも強いこだわりがあったようで、SCEの担当者も「nasneをいかにストレスなくコントロールするかというところでチューニングし、速いレスポンスを実現した」とそのできばえに自信を示している。
番組配信に関して、2ストリームに対応。「nasne」1台につき、録画した番組はネットワーク内の2台の対応機器に同時配信が可能で、例えば、録画した番組を1人はPS3を介してリビングで、もう1人はPSVitaを使い別室で同じタイミングで見ることができる。さらに、それぞれ独立した配信になるため、どちらかが再生を止めても、もう一方の視聴を干渉しない。共有した番組を、好きな時に好きなように見られるのが「nasne」の特徴だ。ただ、放送中の番組のライブ視聴はネットワーク内デバイスのうちいずれか1台のみ。ライブ視聴とそのほか1台のデバイスへの録画番組配信という使い方は可能だ。
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PS3以外の操作も試した。VAIOでは、専用の無料アプリケーション「VAIO TV with nasne」上で「nasne」にアクセスできる。インターフェースは「torne」のものと若干違うが、視聴や録画の操作は、やはりシンプルで、直感的に行える。「VAIO」ならではの使い方として、録画した番組をBDやDVDなどへ書き出しできるのは大きな利点だ。そのほか、タブレット端末「Sony Tablet」やスマートフォン「Xperia」からも専用アプリを使用して「nasne」にアクセスできる。ともに、携帯端末という特性を生かし外出先からの録画予約も可能だ。
また、「PSVita」は、年内提供予定の「torne for PSVita」(仮称)アプリを使用して「nasne」にアクセスでき、録画番組の書き出しも対応する予定。なお、PS3の「torne」を経由してのPSPへの番組書き出しも可能だが、「WOWOW」などBSの有料チャンネルの場合はコピーではなく、ムーブ形式での書き出しとなるようだ。
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ネットワークを介して番組を視聴するという方法や製品は今までにもあったが、今回の「nasne」は、「対応ソニー製品と連携」というシンプルな使い方を提案しており、いま一つ分かりにくい“ホームネットワークAV”を敬遠してきた人にも導入しやすく、対応機器があれば家中どこででも視聴できるという“新しいスタイル”を実現できる製品となっている。もちろんDLNAに対応しているので、必ずしもソニー製品である必要はないのだが、圧倒的に分かりやすいのは確かだ。
そして、その製品自体のパフォーマンスも申し分ない。前述の通り、PS3など対応機器とアプリを一緒に使用することで、「nasne」の魅力を最大限に引き出すことが可能で、ユーザーインターフェースの操作感や、視聴、録画に関する機能などの使い勝手の良さ、500GBのHDD内蔵、メディアストレージの機能も付いている。これで1万6980円というのは、やはり驚きだ。ホームネットワークや対応機器などの環境が整っている人であれば、魅力ある製品に違いないだろう。残念ながらビッグイベントであるロンドン五輪前の発売はかなわなかったが、香川真司選手らの活躍で話題の海外サッカーや、9~10月の番組改編期に相次ぐヒット映画の放送や大型特番をチェックするのにはうってつけ。PSPなどへの書き出しを活用すれば、移動中や外出先など幅広いシーンでの活躍も期待でき、VAIOにも対応している“一歩進んだ”レコーダーとして、100万人以上の「torne」ユーザーだけでなく、多忙なビジネスマンなど新規ユーザーの取り込みもねらえそうだ。