1巻が発売されたコミックスの中から、編集部と書店員のお薦めマンガを紹介する「はじめの1巻」。今回は、月刊マンガ誌「YOU」(集英社)で連載、高校生3人の淡い恋を描いた小森羊仔さんのマンガ「シリウスと繭(まゆ)」です。
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成績に自信のない高校3年生の繭子は、親友メグの勧めで、みんなのあこがれの的で自分もあこがれていたクラスの男子生徒ハルに放課後、勉強を教えてもらうことになる。そのおかげで繭子は期末試験で赤点を取らずにすみ、ほとんど話したことがなかったハルとも何気ない会話ができるようになった。そんな繭子とハルをメグはじっと見つめていて……。
この連載作の原形となる読み切りは集英社の女性マンガ誌が合同で行っているマンガ賞「金のティアラ大賞」の投稿作品でした。入賞はしなかったのですが、主人公・繭子の繊細な表情が印象に残る作品で、僕はその世界観がすてきだと思いました。
翌年、小森先生は同賞で見事銀賞を受賞しデビュー。受賞後、あの読み切りは、かなりはしょって作ったと伺って、それでは、ぜひしっかりと膨らませましょうという話になり初連載「シリウスと繭」がスタートしました。
物語は繭子の淡い恋心をシンプル、そして丁寧に描いていきます。初めは輪郭すらはっきりしない繭子の恋心が季節の移ろいと共に次第にはっきりしていきます。登場人物たちのピュアなやり取りはもちろん、虫の鳴き声、突然の雨の音、朝日にさえずる鳥などなど……ところどころに何気なく挟み込まれている季節のシーンもみずみずしい作品世界の重要な構成要素です。そんな物語を読み進めるうちに頭の中で、初めは無色だった世界が色づき始めるはずです。そして甘酸っぱい思いが胸に広がります。
はたして、繭子の淡い恋は成就するのか? ぜひお手にとって恋の行方を見守っていただけると幸いです。よろしくお願いします!
星のようなきらめきや、冬の冷たい風のような切なさと共にゆっくりと始まった繭子の恋。手をつなぎたいのにつなげないとか、自転車の2人乗りで星を見に行くシーンなど、もどかしさ満載! 視線をふと落としたりするような、気持ちが垣間見える仕草がとても丁寧に描かれていて、モノローグも叙情的で印象深いです。少しずつ近づく繭子とハルの距離のそばでひそかに形をかえてゆくメグとの友情も気がかりですが、1巻のラストには新たな人物も登場し、主に3人だけで展開していた物語が新たな広がりをみせる予感がします。
余談ですが掲載誌のYOU読者は、「シリウス」「親友と同じ人を好きになってしまう」というキーワードで「星の瞳のシルエット」を思い出してしまう世代では? 最近少女マンガを読んでいなかった方も新鮮な気持ちでときめいてしまう、正統派の少女マンガです。
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