スマートフォンでナメコを栽培するという異色の無料ゲームアプリ「おさわり探偵 なめこ栽培キット」が、シリーズ累計約2262万ダウンロード(10月30日現在)という人気を集めている。中国や韓国、東南アジアなどでもそれぞれ100万ダウンロードを記録しており、夢は「世界。アメリカやヨーロッパへ進出したいですね」と語る生みの親・ゲームを開発したビーワークスの担当者たちに、なぜナメコを題材にしたのか、ヒットの理由はどこにあったのか話を聞いた。(毎日新聞デジタル)
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「なめこ栽培キット」はそもそも、ニンテンドーDS用ゲーム「おさわり探偵小沢里奈」をiPhoneアプリに移植する際、宣伝のために作られた無料アプリの3作目で、主人公の探偵・小沢里奈の助手として登場するナメコをモチーフにしたキャラクター「なめこ」を本物のナメコのように栽培するゲームだ。企画したディレクターの大廣将之さんは「ゲームを出しただけではユーザーの目に留まりにくいので、宣伝用の無料アプリを出して興味を持ってもらおうと思った。一つじゃ弱いので三つ。二つは軽いもので、最後の1本は誰でも遊べるきちんとしたゲームを作ろうと思った」と開発の経緯を語る。
キャラクターの中でも主人公ではなく、なめこを選んだのは、意外にも海外で注目されたからだという。キャラクターデザインを担当した河合真吾さんは「ニンテンドーDS用の『おさわり探偵小沢里奈』を海外で販売した際、『なめこ』という言葉とキャラクターに興味が集まったので、アメリカでは、なめこを中心にしたプロモーションで販売されていたんです。ホームページでもなめこのイラストを大きく載せて『これは一体何だ?』といったプロモーションをした。結構なインパクトがあった」と振り返り、「今回も、知らない人が見たときに気になるというところを押し出していくことにした」という。
11年6月に配信を開始したところ、なめこを育てて収穫するシンプルさと、不思議で多彩な種類のレアなめこたちが口コミで話題となり、爆発的にユーザーを増やした。宣伝とコラボ企画の窓口を務める伴雄斗さんは「配信初日から1万人が遊んでくれて、ツイッターで『今日からなめこ始めました』『なめこ育ててます』とつぶやいてくれて、口コミの話題を集めてくれた」とうれしそうに明かす。配信から2、3日後には数万、1週間足らずで当時のiPhoneアプリでは大ヒットといわれた10万ダウンロードを突破。当初は予定になかったアンドロイド版もユーザーの要望が強く、対応することになった。
配信開始当初のユーザーの反応は賛否両論があったという。河合さんは「可愛いって反応でしたが、最初の頃は『ビジュアルが気持ち悪い』という反応も多かった」と苦笑する。だが、伴さんは「『気持ち悪いけれど、なんだか続けちゃう』という人が多かった」とうなずき、「まさかアプリでなめこを育ててるとは思わない。『なめこ』という言葉が記憶に引っかかるワードだった。なめこって、日本人なら誰でも知ってるんですが、iPhoneアプリには一個もなかったんです(笑い)。だから一回聞いてすぐに覚えられて、検索してすぐに出てくる」とヒットの理由を分析した。
ゲームの魅力は、体の長い「長なめこ」や、ナメコには見えない猫の顔としっぽを持つ「ねこなめこ」、真っ白な体の「白なめこ」など、現在151種類以上もいるというユニークななめこたち。キャラクターを作るときは、まず思い付いた名前だけを羅列した“なめこリスト”を大廣さんが作成し、河合さんが名前だけを見て思い付くキャラクターを描いていく。
大廣さんが期待を裏切られたというキャラクターは、ツタンカーメンの顔をした「黄金なめこ」で、「僕は単純に金色のなめこを想像していたら、まさかのファラオで驚きました(笑い)」といい、一方の河合さんは「(大廣さんが)期待しているものはあえて聞かない。期待を裏切ってやろうと思って」と笑う。2人の間でリスト以外に情報共有は一切なく、「それぞれのインスピレーションで作るから面白くなる」(伴さん)というのがキャラクター作りの秘訣(ひけつ)のようだ。
現在は、キャラクターそのものが大人気となり、ぬいぐるみ、ストラップ、フィギュアなどの関連グッズが発売されており、ハローキティとのコラボグッズや、京都の舞妓(まいこ)さんにふんしたしろなめこなど観光地のお土産となる「ご当地なめこ」まで登場。「ご当地なめこ」は「現在39種類。メーカーでは年に100種類くらい出すのを目標にしている」(河合さん)という人気ぶりだ。
コラボ企画を統括する伴さんは「なめこを何年も愛されるキャラクターにしたい。アメリカ、ヨーロッパでのなめこの認知が(世界的に人気のゲームアプリ)『アングリーバード』の次くらいになるといい」と大きな目標を語った。
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