注目映画紹介:「愛、アムール」 慈愛に満ちた老夫婦の物語に圧倒される

(C)2012 Les Films du Losange - X Filme Creative Pool - Wega Film - France 3 Cinema - Ard Degeto - Bayerisher Rundfunk - Westdeutscher Rundfunk
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(C)2012 Les Films du Losange - X Filme Creative Pool - Wega Film - France 3 Cinema - Ard Degeto - Bayerisher Rundfunk - Westdeutscher Rundfunk

 先ごろ発表された米アカデミー賞で作品賞、監督賞など5部門でノミネートされ、見事、外国語映画賞に輝いたミヒャエル・ハネケ監督の「愛、アムール」が9日に公開された。パリの高級アパートで暮らす音楽家の夫婦ジョルジュとアンヌ。2人は静かに、愛に満ちた余生を送っていた。ところがその生活が、アンヌの病によって一変する。ジョルジュは、アンヌの願いを聞き入れ、自宅での介護を始めるが……というストーリー。

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 ジョルジュを演じるのは、「男と女」(66年)や「暗殺の森」(70年)などで知られる名優ジャン・ルイ・トランティニャンさん。アンヌ役は「二十四時間の情事(ヒロシマ・モナムール)」(59年)や「トリコロール/青の愛」(93年)などに出演したエマニュエル・リヴァさん。リヴァさんは、惜しくも受賞は逃したが、今作の演技でアカデミー賞主演女優賞にノミネートされていた。

 妻を車いすから立たせ別のいすに移動させたり、ベッドに横たわる妻の寝息に夫が聞き耳を立てたり。そうかと思えば、今度は妻が、隣で眠る夫の横で不安そうな表情を浮かべたり……。夫が妻を、妻が夫を思いやる姿に胸が詰まる。「ファニーゲーム」(97年)をはじめ、ハネケ監督の作品には、血を見せないながらもどこか残酷なにおいがして、いつも神経を逆なでされていた。もちろん、今作の“老い”と病に追い詰められていく夫婦の姿は悲しくて残酷ではあるけれど、半面、これほどまでに慈愛に満ちた夫婦の物語が撮られたことに、正直驚くとともに圧倒された。ハネケ監督自身の家族にも同様のことが起きたことが、監督にこの物語を考えつかせたという。なお今作は、前作「白いリボン」(09年)に続き、昨年のカンヌ国際映画祭で最高賞であるパルムドールに輝いている。9日からBunkamuraル・シネマ(東京都渋谷区)ほか全国で公開。(りんたいこ/毎日新聞デジタル)

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