俳優の吉沢悠さんが出演する舞台「宝塚BOYS」が、23日から上演される。舞台は、宝塚歌劇団(宝塚)に第二次世界大戦後わずか9年間存在した「男子部」で“明日のスター”を夢見て青春を駆け抜けた男たちの物語。同作で男子部メンバーの一員を演じ、本格的にダンスと歌に挑戦した吉沢さんに、けいこの様子や「宝塚BOYS」の見どころ、そして今年3月に結婚したモデルで女優の桐山マキさんとの結婚生活などについて聞いた。(毎日新聞デジタル)
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舞台「宝塚BOYS」は、来年100周年を迎える宝塚で1945(昭和20)年に創設され54年に解散した男子部について書かれたドキュメンタリー「男たちの宝塚~夢を追った研究生の半世紀」(神戸新聞総合出版センター)を原案にしている。劇団内、観客などの大半が男子部に反対し、女子生徒とは一切口をきいてはいけないという厳しい規律の中、懸命にレッスンに励んだ男子部メンバーだったが、宝塚大劇場に一度も立つことはなかった……。そんな彼らの泣き笑いの日々が描かれる。2007年に初演され、今回が4度目の上演。男子部のメンバーは、吉沢さんはじめ7人全員が初出演となる。
「宝塚に男子部があったっていうこと自体が面白いと思う」と語る吉沢さんが、実際に宝塚のステージを見たのは最近のこと。「ここ数年の話なんですが、たまたま誘われて1度見に行ったことがあるんです。行く前までは、漠然とすごい世界だなと思っていて。女性だけのものですし、すごく華やかですし。でも実際見に行ったら、そんなに構えるものではなく、純粋に楽しめるエンターテインメントな空間だった。レビューは心奪われるくらい圧巻でしたね」と語る。
同舞台では、実際にそのレビューシーンも登場する。それは、男性のみで演じる「ここでしか見られないステージ」。そのシーンに向けて、ダンスと歌に挑戦した吉沢さんは「過去に1度舞台でダンスを踊ったことはあるけど、そのときは本当にひどくて、ただ動いてるだけでした。ダンスともいえないようなものだったので……。歌もカラオケに行ったりする程度なので、どちらもほぼゼロに近い状態。苦労しています」とけいこの苦労を語る。
さらに共演者には、プロのダンサーや歌手も名を連ね、「最初はやばいなって思いました」と本音を明かす。しかし、「今は、実力の差は最初から分かってることだし、逆に自分ができる面で彼らが困ったときにフォローしたり、僕がダンスや歌で困ってるときにうまい人がフォローしてくれたり……。そういうことが男子部の結束を深めてくれているんです」と共演者が互いに補い合うことで団結心が芽ばえているという。その証拠に「公私ともに仲がいいですね」と吉沢さんは笑顔を見せ、けいこ後に共演者と飲みに行くこともよくあるのだという。
宝塚らしいダンスや歌も披露する「宝塚BOYS」だが、一方で吉沢さんは「男くさい部分やヤンチャな部分だったり、男子部メンバーの成長模様も描かれていて、逆にそっちの芝居がメイン」だと語る。「想像以上に芝居するのが大変だった」といい、「男子部7人の人間関係がうまくパスワークできていないと成立しない舞台。たとえば自分の調子がよくても、誰かの集中力が切れていたらうまく回っていかない。全体の温度が上がっていないとダメなんです」と続ける。
「変な言い方ですけど、男子部メンバーは普通ではないと思うんです。終戦直後のあの時代に、女性に交じって歌って踊って夢を追うっていうのは。戦争に負けてみんなが落ち込んでるときにエンターテインメントで人々を明るくしようっていう志を持ってるっていうのは、いい意味で広い目で物事をとらえていたんだと思うんですけど、そういう男たちの集団なんで、内側はハイテンションじゃないと。だから、そこにリアリティーを求めると、全員が同じテンションで集中していないといけないし、誰かがせりふを話しているときにもそれぞれ動きに気持ちを込める必要がある。舞台の基本中の基本をすごく丁寧にやってる感じですが、そこに楽しさと難しさを実感しています」と熱く語る。
さらに今回は、4度目の舞台化。「これまで再演を重ねているということはどんどんグレードアップしてるってことなので、正直4代目のプレッシャーはあります」と吉沢さん。「過去の舞台も一応見ましたが、あまり引っ張られるとよくないので参考程度に。今回のメンバーでできる男子部を作りたいという気持ちが強いです。役のベースが自分から出ていないと僕が演じる意味がないと思ってるので、自分だったらこうした方が面白いっていうところを、けいこで動いてみて演出家の方に採用してもらったりしています」と語る。
現在「宝塚BOYS」の公演に向け、日々けいこにいそしんでいる吉沢さんは、実生活では3月に結婚したばかりの新婚ホヤホヤ。「自分一人の人生ではないので、40、50、60歳……とこの先、芝居で飯を食っていくために意識は変わりました。よりストイックになったというか。今後の人生設計を考えると、この仕事でお金をもらうっていうことは、よりシビアにもなりますし、そのためには僕が役者としてよりよくなっていかないといけないことですし。そういう意味で、すごくいい効果が生まれています」と結婚後の心境の変化を語る。
また、仕事面での変化とともに生活面でもよい変化が生まれている。「やっぱり食事面では、すごくサポートしてもらっています。体調もいいですね」と仕事に私生活に充実した日々を過ごしているようだ。
そんな夫婦二人三脚で挑む最新舞台について、吉沢さんは「宝塚BOYSの物悲しかったり笑えたりする空気感は、忙しくて不満が多い現代人に何かを思い出させてくれるものだと思います」とアピール。「物事をすぐにあきらめてしまう人が多い今の時代において、かなわないかもしれない夢に9年も人生をささげるっていうのは、なかなかできないこと。ましてや女性との接触も禁じられていますし。そういう部分を大事に演技してるので、男性が見たらすごいなって思うかもしれないし、女性だったら可愛いって思っていただけるかもしれないし、絶対に何かを感じてもらえる舞台になっていると思います。それからえんび服(タキシード)に羽を背負って男性が宝塚のナンバーを歌い踊るシーンもお楽しみに」とコメントしている。
「宝塚BOYS」は、23日から8月11日まで東京・有楽町の「シアタークリエ」で上演。その後、名古屋、兵庫、横浜、新潟、千葉で上演される。
<プロフィル>
よしざわ・ひさし。1978年8月30日生まれ、東京都出身。98年にドラマ「青の時代」(TBS系)でデビューし、その後、映画、テレビ、舞台など幅広く活躍。最近では、11年にドラマ「JIN−仁−」「南極大陸」(ともにTBS系)など話題作に出演し、2012年公開の映画「道~白磁の人~」に主演。舞台においては、11年に「オーデュボンの祈り」で主演を果たし、最近では今年2月に「遠い夏のゴッホ」に出演している。現在、ドラマ「ダブルトーン ~2人のユミ~」(NHK BSプレミアム)に出演中。