超硬派のゲーム雑誌「ゲーム批評」の元編集長で、現在はゲーム開発と産業を支援するNPO法人「国際ゲーム開発者協会日本(IGDA日本)」代表の小野憲史さんが、ゲーム業界の現在を語る「小野憲史のゲーム時評」。今回は、コンピューターゲーム開発者向けの会議「CEDEC」について語ります。
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2013年8月21~23日、横浜パシフィコ(横浜市西区)で開催された「CEDEC」では、例年に比べて既存のゲームの枠に収まらない議論が目立った。
基調講演の一つでは、大阪大の石黒浩教授が人間そっくりのアンドロイド開発を通して、人間の存在感について話した。特別招待セッションではNHKエンタープライズの森内大輔さんが、空間や建物に映像を投影する「プロジェクション・マッピング」が持つ意味について講演。トヨタ自動車によるドライビングシミュレーターの講演もあった。
また選考委員によってノミネートされ、参加者の投票を元に優れた作品を選出するCEDECアワードのビジュアル・アート部門で「アニメ ジョジョの奇妙な冒険」オープニング制作チームが最優秀賞を受賞した。本作は原作の劇画タッチを生かしたCGアニメーションで、ゲームではないが、参加者の多くが支持した形だ。ジャンルの枠を越えて自由な作品作りを評価する気風が改めて感じられた。
振り返れば、これまでゲーム業界は「KGNの法則」で成長してきた。KGNとは、「K(こんなの)G(ゲームじゃ)N(ない)」の意味だ。アーケードのゲームファンは家庭用ゲームを、家庭用ゲームのファンはソーシャルゲームを、それぞれ「こんなのゲームじゃない」と批判したが、より多くのユーザーを引きつけて業界の成長に貢献した。それを支えたのが絶え間ない技術革新で、今後も続くと予想される。
しかしPS4やXbox ONEの登場を前に、業界は早くも「テレビの前でコントローラーを握って遊ぶ大作ゲーム」か、「スマートフォンで空き時間に遊ぶカジュアルゲーム」の二極化が進んでいる。開発者はユーザー離れというリスクを恐れるあまり、「ゲームのカタチ」が次第に固定化され、業界全体で「KGN」が少なくなってきた。
停滞感が漂う日本のゲーム業界だが、復活のカギは「企業や業界の壁をなくし、異なる技術を組み合わせて新しい体験を創出すること」で、すなわち「KGN」の復活だ。そのためには人や技術のお見合いをする場所が必要で、それがCEDECの存在意義になりつつある。引き続き「KCN」(こんなのCEDECじゃない)といわれるような議論を期待したい。
おの・けんじ 1971年生まれ。山口県出身。「ゲーム批評」編集長をへて2000年からフリーのゲームジャーナリスト。08年に結婚し、妻と猫3匹を支える主夫に“ジョブチェンジ”した。11年から国際ゲーム開発者協会日本(IGDA日本)代表に就任、12年に特定非営利活動(NPO)法人の認定を受け、本格的な活動に乗り出している。
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