はたらく細胞!!
01「たんこぶ」
12月13日(金)放送分
アニメ「新世紀エヴァンゲリオン」のヒロイン・アスカの物まねで知られるお笑い芸人の桜 稲垣早希さん。「エヴァ」だけでなくさまざまなアニメやマンガ、ゲームが大好きという稲垣さんが、熱い思いを語ります。(毎月25日更新)
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今回は、乃木坂太郎さんの「幽麗塔」です。そう! ミステリーです。あまり小説や難しい話が苦手な私はミステリーというのは普段そんなに近寄らない分野だったりします。なぜなら、キャラの人間関係の構図をすぐに忘れてしまって何回も読み直さないとついていけないから……。
「あれ? この人とこの人っていつ出会ったんだっけ?」「あれ? この人とこの人って血がつながってるの?」「あれ? あの秘密はこの人も知ってるの?」「あれ? あれ? んん?」と大混乱に陥ります。金田一少年でいっぱいいっぱいです。
だからこの幽麗塔もちょっと苦手な分野ではあるのですが、これはもともとある探偵小説をマンガにしたものだそうで、同じミステリーでも「わー!絵が奇麗~、キャラがすてき~、読みやすい~、感謝~♪」となったのです。
しかも作者が「医龍」の乃木坂さん! すごいですね~、作家さんって! いろんな分野が描けるんですね~。しかも原作があるものでもオリジナリティーでどんどん世界に引き込んでいくからすごいです!!
あらすじですが、幽麗塔という建物で殺人事件がおきます。これがなんとも残酷な事件で、老婆が時計台の時計の針に縛りつけられて、針が進むごとに体がまがっていくという拷問のような殺害の仕方なんです。そして、主人公で無職の天野太一は、この幽麗塔の管理人の職に就くために中に入りますが、気がつけば老婆と同じように時計にくくりつけられています。そこをテツオという美少年に助けられます。テツオは「この時計台は巨大金庫になっていて、とてつもない財宝が中で眠っている。それを僕と一緒に探さないか?」と天野を誘います。無職の天野はこの話に乗るのですが、とんでもない事件に巻き込まれていくのです。
さて、私的には、このマンガの魅力はいくつかあるのですが、まず主人公の天野がイライラするキャラなところもある意味その一つ。
とにかく天野は頼りない。エヴァのシンジのほうが男らしいくらい。働かず本ばかり読んで、優柔不断で、それほど男前ではなくて、はっきり言って魅力うっすいキャラです。でも、そのせいかもしれませんが、共感はしやすかったり、他のキャラを引き立てたりしていて、なんとなく憎めないんです。
もちろんストーリーが面白いのもポイント。
殺戮(さつりく)を繰り返している犯人の「死番虫」は一体だれ!? 何人も仮面をむいてるけど、その直後に死んじゃうからまだ誰かわからない! テツオと近い存在の人なのか? ひょっとして本当に老婆を殺したのはテツオ? そして丸部検事の変態的恐ろしさ……。昭和の時代背景が組み込まれたミステリーで、ずーっとハラハラドキドキしっぱなしです!
そして、物語に大きく影響を及ぼしている要素なんですが、実は美少年のテツオは、老婆の養女の麗子という女性だったことが判明します。この、「実は女!!」という展開、さまざまなマンガでよく目にしますが、私はいちいち「実は女戦法」でわくわくします。かっこいいキャラが女なんて、さらにかっこいい!!ってなります。以前話したキングダムのキョウカイもその1人ですね~。
しかし、このテツオの場合はもう複雑……。「男子校に潜り込むため」とか「強く見せるため」とか「逃走するため」という意味ではなく……。テツオの「実は女」は複雑で重くて読んでて胸が痛いです。
舞台は昭和29(1954)年です。物心ついたときから心は男な麗子は女の子の遊びや女物の服を着ることを嫌います。そして、男装して生活していき、「女の体で心が男」の自分を受け入れてくれる男性と本当の友情を求めて生きています。
今ではオネエタレントが大人気だったりする世の中ですが、この時代は多分もっと、周りからの理解が難しかったんでしょうね。私自身はそうじゃないので、どこまで行っても絶対この悩みは本当の意味で分かることはないと思うのですが、少し前にフランスでロケをしていたときに男性同士のカップルと出会いました。
フランスでは、ようやく同性同士の結婚が法律で認められたらしく、そのカップルは願いがかなったと本当に幸せそうでした。その顔から、今までの苦労が一瞬うかがえたというか、一時の出会いでもそういうのを感じました。
そしてこのマンガを読んでいたら、そのカップルの顔が頭に浮かびました。これはミステリー以外でもそこの部分が大きく書かれていますので無視できないところなのですが、一方の天野が結構ふわふわしているキャラなのでハラハラします。普通の男性の天野と恋愛感情ではない「本当の男同士の友情」は生まれるのか!というのがすごく気になるところです。
よく会話で「男女の友情はありえるのか」というのがありますが、これはもう「仕事と私どっちをとるの?」以上に難しいテーマなのかと思います。個人的には私は唯一8年くらい続いている男友達がいるのですが、その人と死ぬまで友達であれば「YES」だし、途中でどっちかが好きになれは「NO」だし……。いうことで結論がでるのですが、それも人によるし、タイミングや状況にもよるし、人それぞれ組み合わせの問題かもしれないし……。と考えるとやっぱり答えはでませんね~。天野とテツオがどうなっていくのか今後の展開が、正直「死番虫」の正体より気になってしまうのです。
桜 稲垣早希(さくら いながき・さき)=1983年、神戸市生まれ。07年2月に、お笑いコンビ「桜」を結成。07年の「M−1グランプリ」で3回戦に進出するなど活躍していたが、09年末に相方がコンビを卒業し、ピン芸人として活動。アニメ「エヴァンゲリオン」のヒロイン、アスカの物まねで知られ、バラエティー番組「ロケみつ」(毎日放送)でブレーク。「R−1ぐらんぷり」で4年連続準決勝進出を果たしている。最近ではバラエティー番組などでナレーションもこなすなど、芸の幅を広げている。
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