ヒップホップアーティストのKREVA(クレバ)さんが、2014年1月から上演される音楽劇「最高はひとつじゃない2014」で音楽監督と座長を務める。11年に初演された同タイトルの舞台をさらにパワーアップしたという作品で、前回に引き続き、KREVAさんの楽曲と役者としての姿を楽しめる内容になっている。舞台を経験して「音楽制作では、より深く自分と向き合えた」と語り、先ごろ初のライブアルバム「SPACE TOUR」もリリースしたKREVAさんに、舞台制作と音楽活動のバランスなどについて聞いた。(水白京/フリーライター)
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−−まず、2011年に初演された音楽劇「最高はひとつじゃない」の内容について簡単に教えていただけますか。
三つの違う時代をそれぞれ生きる人々と、そこを自由に行き来する存在の俺がいて、その時代の中でもがきながら生きるところに自分の歌がかかわってきて、三つの時代をつなぐというか。最初は音楽監督というチャレンジのつもりだったんですけど、演じることも入ってきたし、役者さんもラップにチャレンジしたり、舞台で踊る、いわゆるヒップホップのダンスをする人たちに演技が求められるシーンがあったり、ほぼ全員が何かしらチャレンジしてるような舞台だったと思います。
−−やってみた感想は? 音楽ライブとの違いは感じましたか。
いわゆる座長としてリーダーシップを求められることが、自分的には心地いいというか。みんなを先導していくのは子供のころから好きだったし、得意だったので、すごくやりがいを感じました。やっぱり、「ラップってどうしたらいいんですか」っていう人たちに教えたり、「演技できない」って悔しがってるダンサーを励ましながら、「いけるいける!」というムードにもっていくのは、ライブとは違うものだったと思います。
−−演じるということへの戸惑いはありませんでしたか? ラブシーンのような場面もあったようですが……。
(ライブの)ステージ上でバーンと見えを切る感じとあまり変わらず(演技は)できたと思います。ラブシーンは「(演じると)絶対に恋に落ちる」って演出家の方が言っていて、期待3割、ドキドキ7割でいったんですけど、何もなく……(笑い)。
−−そうでしたか(笑い)。また、その後は音楽活動においてアルバム「SPACE」を引っさげたツアーを行い、そのライブCD「SPACE TOUR」も今月月4日に発売されましたね。
“余白があることで生まれる余裕”というのがアルバムの意味だったんですけど、ライブ的には、そのスペースにみんなで入ってきてもらって、今あるスペースを完成させようみたいな感じだったんですよ。今まではDJと一緒にやってきたんですけど、今回は“半生バンド”っていう名前で、DJ、ベース、ドラム、キーボードという形式だったので、後ろで4人が演奏しながら常に動いている状態で、その演奏の上に自然と身を任せて踊ったり。後ろにDJ一人という状態よりも自分を開放しやすくなったっていうのはありました。
−−舞台の経験が生きたと思う点は?
舞台以降は、全体を考えたペース配分で、飛ばすところは全力で飛ばす、みたいなことはうまくなったなって感じます。でも音源をあとで聴いたときは、緊張感がすごくよみがってきて。それこそ曲の出だしのところはちょっと抑えてるなとか、そういうペース配分をしていたことまでが思い出されて、ライブをしたのと同じように疲れました(苦笑)。
−−そして「最高はひとつじゃない2014」の公演も決定していますね。前回と比較して、どんな内容になりそうですか?
前回はサウンドにかかわってる時間よりも、演じてる時間のほうが長かったような気がするんですよ。音楽監督という肩書が付いてるんだし、それなら、自分の出番を減らしてでもサウンドにもっとかかわりたいなって。あと前回は、三つの時代を飛び越していく人と、その時代にしかいない人の両方を演じていたので、それによって物語が入り組みすぎてるなって感じる部分もあって。なので、前回の話を受けてるんですけど、時代のすみ分けがしっかりされているような感じになるんじゃないかなと。“(part)2”ではないけど、1.3ぐらい。Mac(マッキントッシュ)でいうならニューOS「(最高はひとつじゃない)10.0.1 」って感じじゃないかなと思います。
−−なるほど。ところで「最高はひとつじゃない」というタイトルにはどんな意味合いが込められているんですか。
ちなみに一番最初にこれを言ったのは(お笑いコンビ、キャイ~ンの)ウド鈴木さんなんです。「(香取慎吾の特上!)天声慎吾」というテレビ番組で、天野(ひろゆき)くんとウドちゃんが慎吾王子に最高のおもてなしをするという“おもてなしバトル”みたいなのがあって、ウドちゃんが「天野くーん、最高はひとつじゃないんだよ」とか言ってね。「ホントだ!」と思って、それから好きで歌詞にも使ったりしてます。三つの時代をまたぐという話の中では大事なポイントで、生きてるそのときどきが最高っていうことだと思うんですよね。
−−それでは、きたる「最高はひとつじゃない2014」についてメッセージをお願いします。
ラップを(舞台で)やるのが新しいっていうのもあるんですけど、自分の言葉をせりふのように扱ってくれる部分もすごく多いので、やけに韻を踏んでる、リズミカルなせりふと思って聴いていただければ、ラップを聴かないという人にも楽しんでもらえるんじゃないかなと思います。
<プロフィル>
1976年6月18日、神奈川県生まれ、東京都江戸川区育ち。2001年、3人組ヒップホップユニット「KICK THE CAN CREW」のメンバーとしてデビュー。04年からソロ活動をスタートさせる。KREVAさんが最近、最高だと思う物事は「物を捨てられる自分」。「昔は、雑誌とかテレビに出てくる捨てられない女たちかっていうくらい捨てられない男で(笑い)。テストも全部とってある、みたいなやつだったんですけど、今はキッチリ“よし、これは捨てるぞ”って目標をもって捨てられるというか。そういうのって変われるんだなって最近実感してるんです。変われる自分も最高だと思うし、捨てられる自分、サイコーって思ってますよ」と話した。