インターネットやスマートフォンの普及により「テレビ離れ」が叫ばれて久しいが、ドラマ「半沢直樹」が大きな話題となるなど、まだまだ影響力を持つテレビ。業界の現状を、一流のテレビマンたちが語り合うイベント「実力派テレビマンに聞く　就職と仕事の話」が26日午後3時半から、早稲田大学大隈講堂で開かれる。イベントを前に、「ガチンコ！」（TBS）の合田隆信さん、「モヤモヤさまぁ～ず」（テレビ東京）の伊藤隆行さん、「ダウンタウンDX」（読売テレビ）の西田二郎さんの3人の名物プロデューサーが、「テレビのいま」についての本音を語り合ってもらった。最後となる第3回は「笑っていいとも！」の終了と、テレビマンの資質についての思いが語られた。

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ーー「笑っていいとも！」が終わります。ビッグニュースでしたが、どう受け止めていますか。

　合田　新聞の1面に載りましたからね。それだけ社会にとって値打ちを持っていたということで、そんな番組そうそうないですよ。帯番組のモンスターですからね。

　伊藤　悲しかったですね。「いいとも」は昼に見ちゃうという番組。昔とはだいぶ変わっていると思いますが、単純なバラエティーですよね。やんなくていい、収録でいいやつを生でやってる。この時間に、みんな（新宿のスタジオアルタに）集まってるよ、ってテレビですよね。

　合田　ちょっと角度が違うけれど、フジテレビがバラエティーが強いのは「いいとも」があったからだと思っています。フジのテレビマンは、必ず若いときに、いいとものディレクターをやんなきゃいけない。「いいとも」では、必ずなんかあると、すぐにゲームをやるじゃない？　生でやれるサイズのゲームを、いつも考えなきゃいけない。作り手があそこで学ぶ。フジはコントが強いというけれど、ゲームが強いんだ。「はねるのトびら」とか「めちゃイケ」、フジの王道のバラエティーには絶対にゲームがあって、フジテレビの強さを支えていた根本だと思う。ゲームの作り方は、どの局もどうやっても永遠に追いつけないという感じがします。

　伊藤　「いいとも」が終わることは、局の「らしさ」を持った番組が終わっていくことで、危機感を感じた方がいいと思う。チャンネルによってすみ分けられた顔、そういうものが失われたものに危機感があった方がいいと思う。それが企画力とかになると思うんですが。

　合田　面白いことをやろうとする企画力と演出力と、やろうという度胸が大事。僕たちは、若い人が番組を作れる環境作ってあげないと。若い子たちがいいものを作れるように概念とか考え方を変えていく。視聴率のために一時しのぎはやっぱりよくないって意識していわないと。番組がどんどんつまらなくなっていると思うんですよ。「ダウンタウンのガキの使いやあらへんで!!」の年末の「笑ってはいけない……」はすごいと思った。8、9年前、初めの時は、「こんなものをやる日テレはアホか」と思ったけれど、やっぱり面白いものを作ったら見てもらえるんだという証明になった。あれを見ると僕は毎年反省しますよ。「ガキ使」で培ってきた笑いに対するひたむきな一番おもろいを追求して、ダウンタウンを笑わせようという企画だから、松本（人志）さんにも相談できないから、基本的にスタッフで考えるんでしょう。（放送作家の）高須（光聖）さんは大変ですよね。

　西田　あれ、6時間でしょう。スピンオフも合わせたら9時間、30分番組が18回分、半年分くらいをどかんとやっちゃうわけですからね。

　合田　すばらしい番組だなと思う。何本かありますけれど特に。あれを見ていつも反省する。あれをみんなが面白いというなら、我々は努力不足というしかないので。「いや、ああいうのは視聴率取れないのよ」というのは、うそだと思わされる。

ーーバラエティーが面白くないと、テレビは面白くないですよね？

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　合田　責任重大。ドラマはさっきもいったけれど選ばれちゃってるから。日々の暮らしを豊かにするのはバラエティー。

　西田　面白いモノを作ろうと思わないと、面白いモノはできないわけですから。責任重大ですよね。日々の情報を交えてそれを面白く伝えるものが増えてきているので、ストレートに面白いモノが減ってきている。そんなモンじゃなくて面白いモノ。伊藤さんがやろうとしているものとか、そういう思いはもっていていいもんなんやって若い子たちに伝えたいですね。

ーーテレビマン志望の若い人に、伝える場があればと。

　合田　人工的にでもそういう場所を作っていかないと、枠の問題とか局の編成を考え直すいい時期だと思う。

　西田　我々は天然のサケみたいなもんで、勝手に川を上がってきたけど、今の子は海におって、川に上がってこないかもしれないですよね。誰かが養殖してでも、海からあげてこないと。

　伊藤　基本的に自分が見たいものでいいと思う。「ダウンタウンが好き」なら、ダウンタウンとの面白いモノって考えられるよね。企画だってすぐできるよねと思う。

　合田　見たいものがね、意外と「え、そんなモンが見たい」ってものもあるっていう問題も……。「熟女がケンカしているのが見たい」といわれたら、あっ、そうなんや。合ってるわ、お前純粋でえらい、ってそういう問題もあるからな。「めちゃイケ」やりたいってやつも少なくなって、「モヤさま」がやりたいっていうやつも出てくるよ。

　伊藤　「モヤさま」何をやりたいんだろうって思っちゃう。

　合田　いろいろあっての伊藤さんの「モヤさま」なんだけれど、表面的な意味でも「モヤさま」やりたいは、どうなんだろう。見たいもんをやりたいというのも。

　伊藤　大いに自己実現してほしい。可能性の原石を大事にしてほしいな。

　合田　バカで楽観的で度胸のある人がこれからはちょっと本当にそういう人に来てほしいな。そうじゃないとやっていけない。今、環境が悪すぎて。

西田　いるのかな？　そういう人が。

　合田　それに、テレビが好きっていう条件が付く。一番条件ですが、「テレビが好きか」って聞くと、「なんすかその質問」っていう感じ。今の子は、「たまに見てますよ。1時間、2時間くらい」という映画みたいなレベルとちがうんですよ。面接では好きですというけれど、見てない。

西田　テレビ好きじゃないという人も来てほしいとは思うんですけれどね。新しいものがあるかも。

ーーこうしてテレビマンが局を超えていろいろ話をするのもいいですね。

　合田　テレビ界が豊かで栄えていた時代なら、競い合って切磋琢磨（せっさたくま）というか「あいつつぶしたる」とかやっていたけれど、今はやっててもお互いいいことない。どんどん意味がなくなっていくだけなので、いろんなテレビ局のテレビマンが話すのはいいと思う。

　※イベント「実力派テレビマンに聞く　就職と仕事の話」が26日午後3時半から、早稲田大学大隈講堂で。3人のほか、「水曜どうでしょう」（北海道テレビ）の藤村忠寿エグゼクティブディレクター、「トリビアの泉」（フジテレビ）の宮道治朗バラエティ制作部長、「方言彼女。」（テレビ埼玉）の遠藤圭介プロデューサーが参加し、テレビについて語り合う。参加無料だが、申し込みが必要。特設サイト（http://www.ipg.co.jp/waseda/）で。