注目映画紹介:「大人ドロップ」 伊豆を舞台にした4人の青春群像劇 池松壮亮、橋本愛らが好演

(C)2014 樋口直哉・小学館/「大人ドロップ」製作委員会
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(C)2014 樋口直哉・小学館/「大人ドロップ」製作委員会

 樋口直哉さんの青春小説を映画化した「大人ドロップ」(飯塚健監督)が公開中だ。大人の入り口にいる4人の高校生のモヤモヤとドキドキを見つめた群像劇で、「荒川アンダー ザ ブリッジ」の飯塚監督が手がけ、主演は「愛の渦」(2013年)などに出演した実力派若手俳優の池松壮亮さんのほか、橋本愛さん、小林涼子さん、前野朋哉さんが同級生を演じている。主題歌と挿入歌は黒猫チェルシーが担当した。伊豆急沿線のロケ地の景色も見どころでスクリーンから爽やかな風が吹いてきそうだ。

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 高校最後の夏休み前、浅井由(池松さん)と親友のハジメ(前野さん)は、音楽室で連弾する入江杏(橋本さん)とハル(小林さん)を眺めていた。ハジメは、ちょっと大人びた杏のことが好きで「話がしたい」と言い出す。浅井にとって杏は幼なじみで、杏から昔、肝油ドロップをもらった甘い思い出が浅井の胸にずっと残っていたが、思春期を迎えたころから話さなくなっていた。「デートがしたい」と言い出すハジメに協力しようと、浅井はハルに頼み込んで、ダブルデートの約束をとりつける。しかし、杏とハジメを2人きりにしようという策略がバレて、杏を怒らせてしまう。仲直りができないまま夏休みが来てしまい……という展開。

 音楽室にいる美少女2人を遠くから眺める男子2人。このシーンが、映画全体を端的に表している。高校3年生のこの時期、男子よりも女子は大人びている。これは、置いてきぼりをくらった男子の映画だ。「大人になるってなんなんだ?」という主人公・浅井の気持ちが全編を貫き、大人にならざるを得なかった杏や大人になるために行動に走ろうとするハルたち女子と好対照に描かれていく。男子が無人販売の野菜を食べながらふざけているころ、憧れの女子は将来について難しい選択を迫られていた。後半は、引っ越した杏に会いに行く浅井の旅路となるが、ロケーションも素晴らしく、浅井が狭い学校や地域から飛び出して歩を進める感じがよく出ている。賢そうでミステリアスな杏を演じる橋本さんは本当に魅力的な演技を見せ、モヤモヤ男子を池松さんが好演している。前野さんや小林さんも愛すべき同級生として存在感を出している。4日からTOHOシネマズ六本木ヒルズ(東京都港区)ほか全国で公開中。(キョーコ/フリーライター)

 <プロフィル>

 キョーコ=出版社・新聞社勤務後、闘病をきっかけに、単館映画館通いの20代を思い出して、映画を見まくろうと決心。映画紹介や人物インタビューを中心にライターとして活動中。趣味は散歩と街猫をなでること。

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