ドラマ化もされた「チーム・バチスタ」シリーズの10年後を描いた海堂尊さんの新作「アクアマリンの神殿」（角川書店、7月2日発売）は、「ナイチンゲールの沈黙」や「モルフェウスの領域」などに登場する少年・佐々木アツシが主人公となる先端医療エンターテインメント小説だ。世界初の「コールドスリープ＜凍眠＞」から目覚め、未来医学探究センターで暮らす少年・佐々木アツシは、深夜にある美しい女性を見守っていたが、彼女の目覚めが近づくにつれて重大な決断を迫られ、苦悩することになる……というストーリー。マンガ家の深海魚（ふかみ・さかな）さんのカラーイラスト付きで、全24回連載する。

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◇西野昌孝の敵編２　曾根崎教授とショコちゃん

　筆頭はゲーム理論の世界的権威でもある「ステルス・シンイチロウ」ことマサチューセッツ工科大学の曾根崎伸一郎教授だ。

　西野さんの言葉の端々から、二人がいつかバトルすることは決定事項のようだ。けれども西野さんはひたすら逃げ回っているらしい。

　実はぼくは曾根崎教授とメールのやり取りをしているのだけれど、そのことは西野さんには秘密だ。もっとも、いくら秘密にしたところで、業務用のマザーコンピューターを使っているわけだから、とっくにバレているのかもしれない。

　二人目は、ぼくのもうひとりの後見人、ショコちゃんこと如月翔子。

　東城大学医学部付属病院・オレンジ新棟二階の小児病棟の看護師長である彼女は、いずれこの物語に乱入してくるはずだから、ここでの紹介は、小児病棟で日夜、子どもたちのケツを追い回している白衣の天使、くらいに留めておこう。

　でも、こんな不適切きわまりない表現をしてしまった時は、背後に要注意だ。

「それじゃあまるであたしは色ボケおばはんみたいじゃない。ちゃんと目上の女性を敬いなさいよ。ほんっとにクソ生意気になったわね、アツシ小僧わあ」

　なんて神出鬼没でいきなり後ろから頭をゴツンと叩きにくるに決まっている。

　油断大敵、ショコ降臨。思わず左右を見回す。

　でも、さすがに今夜は大丈夫だろう。

＜毎日正午掲載・明日へ続く＞