注目映画紹介:「宇宙兄弟#0」 初劇場版アニメは原作者書き下ろし 兄弟の原点が描かれ感動的

(C)宇宙兄弟CES2014
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(C)宇宙兄弟CES2014

 小山宙哉さんが週刊マンガ誌「モーニング」(講談社)で連載中人気マンガ「宇宙兄弟」初の劇場版アニメ「宇宙兄弟#0」が9日に公開される。「宇宙兄弟」は、幼いころに宇宙飛行士になる約束をした兄弟、南波六太(むった)と日々人(ひびと)が主人公で、2012年にはテレビアニメ化や小栗旬さんと岡田将生さんのダブル主演で実写映画化もされた。初の劇場版アニメとなる今作は、小山さん自らが手がけたオリジナル脚本で、六太と日々人の少年時代や宇宙を目指す本当の理由などが描かれている。テレビアニメシリーズに引き続き、渡辺歩監督がメガホンをとった。

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 月面着陸ロケット「CES-43」に搭乗する宇宙飛行士のブライアン・J(声・大塚明夫さん)のバックアップクルーに新人ながら選出された日々人(声・KENNさん)は、実力不足に頭を悩ませる。ブライアンに励まされ訓練を続ける日々人だったが、月での任務から地球に帰還する時に起きた不慮の事故でブライアンが命を落とす。一方、日々人の兄・六太(声・平田広明さん)は宇宙飛行士になる夢をあきらめて自動車会社に勤務。ブライアンのニュースを知り日々人に掛ける言葉などないと無力さを感じていたが、幼い頃のある言葉がよみがえり……というストーリー。

 真っすぐさと純粋さがあり、熱過ぎず気取らない登場人物たちが繰り広げる物語からはキラキラとした青春の輝きを感じ、心の底をそっとくすぐられるような感動と興奮を与えてくれる。原作者自身が書き下ろしているだけに、その物語の完成度は期待をはるかに上回った。南波兄弟の少年時代のエピソードからタイトルバックへと続くオープニングは、爽快感と期待感をあおり、「ユニコーン」の歌う主題歌が実にマッチ。六太と日々人の信頼と絆が見え隠れする何気ない会話や、脇役たちの存在感がしっかりと描かれ、あらゆる場面での感情移入を容易にした。何よりマンガやアニメでは故人として描かれてきたブライアン・Jが、ワイルドかつ重厚ながらもちゃめっ気も併せ持つ人物像として登場。日々人とブライアンの交流シーンは印象的で、今作ではもちろん今後「宇宙兄弟」の作品に触れる際には思わず涙ぐんでしまうかも。個人的に少年時代の南波兄弟と両親のやり取りの場面は、今作で最も光る場面の一つとして挙げたい。夏らしく、前向きな気持ちにさせてくれる作品だ。新宿ピカデリー(東京都新宿区)ほか全国で公開。(遠藤政樹/フリーライター)

 <プロフィル>

 えんどう・まさき=アニメやマンガ、音楽にゲームなど、ジャンルを問わず活動するフリーの編集者・ライター。イラストレーターやフォトショップはもちろん、インタビュー、撮影もOKと、どこへでも行き、なんでもこなす、吉川晃司さんをこよなく愛する自称“業界の便利屋”。

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