マンガ質問状:「何もないけど空は青い」 美しき“最強のヒロイン”にシビれる!

西森博之さん原作、飯沼ゆうきさん作画の「何もないけど空は青い」1巻
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西森博之さん原作、飯沼ゆうきさん作画の「何もないけど空は青い」1巻

 話題のマンガの魅力を担当編集が語る「マンガ質問状」。今回は、「今日から俺は!!」や「天使な小生意気」などで人気のマンガ家・西森博之さん原作、飯沼ゆうきさん作画のマンガ「何もないけど空は青い」です。隕石(いんせき)の襲来でやってきた未知のバクテリアによって金属が分解され、文明崩壊の危機が訪れた現代を舞台に描いた今作品について、小学館「少年サンデー」編集部の鈴木翼さんに作品の魅力を聞きました。

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 −−この作品の魅力は?

 大前提の大嘘として鉄がこの世からなくなります。鉄は文明を支える根幹ですので、人類は大混乱ですよね。電気、水道、ガスに交通システム、生活インフラが全滅で、携帯も使えないし、鍵も壊れちゃってドアもなくなるのでほぼアウトドア状態。考えるとやるせないことばかりなのですが、作品に登場するキャラクター、特にヒロイン華羅(から)の肝がすわってること! 「私は終わりだと思ってないから」というセリフがあるのですが、ネームで初めて読んだ時、絶妙でシビれました。華羅はフィジカル的にも男子顔負けで、暴漢を撃退した後、トドメに男性のシンボルを潰しにいくんです。強いです。まねできないです。美貌も兼ね備えていますから最強感半端ないです。このヒロインが好きになった男が仁吉という主人公です。ぼくとつな男なのですが大変味があります。この作品はジャンルを問われると難しいのですが、SFでもパニックモノとも違って実はこの2人のラブストーリーなんです。

 −−作品が生まれたきっかけは?

 西森先生が2012年に上梓した小説「満天の星と青い空」(小学館)を下敷きにしています。この小説の、鉄が世界からなくなる設定にシビれまして。世界観を変えずに異なる主人公でサンデー用にお話を作れないかとお願いしました。依頼したのは居酒屋さんでしたね。ビール3杯目くらいのタイミングでしたか。その後とんとん拍子で面白い原作ができあがりました。作画の飯沼さんは編集部内で候補を何人か立てまして、その中で絵の雰囲気とやる気と“西森愛”が一番強かったからです。企画の概要を話し終わる前に食い気味に「やります!」と言っていただいたのは印象深いです。

 −−編集者として作品を担当して、今だから笑えるけれど当時は大変だった……、もしくはクスッとしたナイショのエピソードを教えてください。

 取材でとある田舎を訪れた時のことです。湧き水を探していたのですが、ネットで調べた場所にもなく、現地の方に聞いた場所にもなく、山で遭難しかけ、マツタケ泥棒にも間違われ、それでも見つけられず途方に暮れて、日も暮れてきて、現地の方も見かけなくなり、あー無駄足になったなーと一同肩を落としていたら、一人の少女が現れました。子供なので多分聞いても分からないだろうなと思いつつダメモトで尋ねると、ここから上に行って左行って土の道行くとある的なアバウトな返事。これじゃあたどり着けないなーと思っていたら、しっかり湧き水がそこにあったんです。土の道の先に。子供を疑った自分たちを猛省しました。疑ってごめんなさい、そしてありがとう。あの時のお礼が言いたくてこの場を借りさせてもらいました。

 −−今後の展開は?

 仁吉の実家に避難している華羅たちですが、こんな世の中になって食べるのが困難なオヤツを得ようと頑張ります。今の私たちからしたら素朴な食べ物なのですが、とてつもなくおいしそうに見えます。この作品の見どころのひとつは食事のシーンです。必死になって、それこそ『鉄腕ダッシュ』のように一から作りますから、喜びが半端ないのです。

 −−読者へ一言お願いします。

 私の言葉よりここは西森先生からのお言葉をお届けしようかなと思います。オリジナルはWEBサンデーのコーナー「まんが家バックステージ」でも読めますので、時間がありましたらそちらもどうぞ! それでは……。

 「ロビンソン・クルーソー」を読んだことありますか。僕はあれを読んだ時、作者はどれほどシミュレーション好きな人間なのかと思いました。無人島に流れ着いてしまったら、飲み水はどうしようか、永続的に暮らすにはどうするか。そんなことを本気で考えてる人だな、そう思いました。実は僕もそんなことを考えて夜に眠れなくなるタイプです。

 ある時、ふと思いました。災害でも、細菌でも、戦争でもなく、いきなり文明がなくなったらどうなるんだろうか。人はその時どうするんだろうか。映画を見て、音楽を聴いて、テレビを見て育った人たちが、夜に明かりがなくなったらどうするんだろうか。人間だけがいきなり、置いていかれる世界です。普通の人には耐えられないような世界でしょう。けど、強い人や、誇り高い人たちはどうするんだろうか。そんなことを考えて、「満天の星と青い空」という小説を書きました。それのアナザーストーリーをサンデーで原作用にと頼まれ、作ったのが「何もないけど空は青い」です。主人公が地球を救うようなスケールの話ではありませんが、人がどうするのかを描きたいと思っています。自分ならどうするか、そんなことを考えながら読んでくだされば幸いです。

 小学館 少年サンデー編集部・鈴木翼

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