名探偵コナン
#1146「汽笛の聞こえる古書店4」
12月21日(土)放送分
マンガ誌「週刊ヤングジャンプ」(集英社)で連載中の人気マンガ「テラフォーマーズ」のOVA付きコミックス10巻が20日に発売された。「テラフォーマーズ」は、貴家悠(さすが・ゆう)さんが原作、橘賢一さんが作画を手がけるSFアクションマンガで、火星を舞台に驚異的な進化を遂げたゴキブリと、昆虫の能力を持った人間との戦いを描く。9月26日からのテレビアニメ(TOKYO MXほか)放送開始に先がけ、コミックス第1巻に収録されている「バグズ2号編」が前後編でOVA化され、10巻に前編、11月発売予定の11巻に後編を収めたDVDが付いてくる。原作を手がけている貴家さんに、アニメ化への思いや原作制作の裏側などを聞いた。
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完成したOVAの映像を見て貴家さんは「とてもよく再現していただいた」と感嘆し、「改めて動いている人の腕がもがれているのを見ると、なかなかきついなと思ったり、マンガだと慣れてはいるんですけどね……」と自作ながらアニメでの表現に驚く。そして、「人が叫ぶシーンは(声優の)皆さんの迫真の演技もあり、私もドキドキしながら見てしまいました。声が入るとまた違いますね」と完成度の高さに喜びをかみしめる。「マンガは全部視覚から入ってきますが、(アニメは)聴覚から入ってくる部分があるので、そこがすごく面白かった。『テラフォーマーズ』をぜひ、(DVDで)耳でも楽しんでほしい」と強調する。
アニメ制作や声優のキャスティングにあたり、「オーディションに同行して、ある程度『こんな声がいい』とお願いさせていただきました」という貴家さん。キャスティングされた声優について「皆さん演技が素晴らしく、とてもいい仕上がりになっていると思います」と充実感をにじませる。「マンガを作っている時などにイメージしている動きや声にかなり近くなっています」と笑顔を見せる。
OVAでのお気に入りのシーンは、「(宇宙船の)「バグズ2号」から車で脱出する時に、“メダカハネカクシ”という(昆虫の)能力で車がグーンと飛んでいくCG(コンピューターグラフィックス)のシーン」を挙げ、「すごくカッコいい」と絶賛する。続けて、「ナレーションのメダカハネカクシの説明が、原作とは微妙に違う感じで面白かった。緊迫感の再現度と相まって覚えています」と理由を説明する。
今作は火星を地球化する「テラフォーミング計画」の一環としてゴキブリを火星に送り込んでいるが、なぜゴキブリだったのか? 当時、出版社にヤンキーマンガを持ち込んだところ、「担当さんから『面白いと思います。次は潜水艦か宇宙船か火星の話を書いてきて』と言われました(笑い)」と振り返り、「今は理論が進化して古いものになってしまいましたが、もともと火星に最初は人間ではなくてコケとゴキブリを送るという理論はあった」と説明。「理論を知っていたところから入りました」と発想のきっかけを打ち明ける。
人型へと進化したゴキブリの“テラフォーマー”のビジュアルは、なんとも形容しがたい魅力を放つ。「僕の中では人型というのは最初から決まっていた」と切り出し、「虫を連れていって何かに影響を受けて人と同じような進化を500年でするという設定は、もともとあった」と続ける。そして、「デザインは橘先生と話し合って決めました」といい、「原始人的な部分を残しながら虫的な部分も残す。どのラインが気持ち悪いのかというのは橘先生が何枚もデザインを描いてくださる中で、いろいろと試行錯誤しながら決めたところ」と制作過程を語る。「橘先生も力を入れて描いたところだと思うし、初めて見た人が『気持ち悪い』とか『怖い』、『可愛い』とか言ってくれるとやっぱりうれしい」と強烈な印象を与えたことに自信をのぞかせる。
人間側も手術により昆虫の能力を持ったキャラクターが数多く登場する。貴家さんは「昆虫マニアではないが、専門家の人が一般向けに書いている本を読むのが好き」といい、「僕が最初から詳しく知っていなかったからこそ、そういう感動を読者の皆さんと一緒に味わえるのではと“言い訳”しています(笑い)」とユーモアを交えて語る。キャラクター作成の基準については、「『こうなってこういうふうに終わる』とストーリーの大枠は決まっているが、それと毎週どう盛り上げるかは、別の作業」と前置きし、「ストーリーに必要だから出すキャラもいれば、シチュエーションで出なきゃいけないキャラもいる」と説明する。
さらに、「物語作りは最終的にはキャラクターだと思う」と語る。「最初は必要性だけで出てきた半分“モブ”(群衆)みたいな感じだったキャラクターが、続きを書いているうちに『こいつはこういうやつだったんだ』と分かるシーンや、『モブだと思っていたけどいいやつ』みたいなことを自分で思ったりすることもある」と笑い、「そのキャラクターのことが分かる時というのは、書いていて面白い」と明かす。時には、あまりに入れ込みすぎて、「もともと殺す予定のキャラを書いているうちにだんだんそのキャラのことが分かってきて、キャラクターを立てすぎてしまうみたいな時もある(笑い)」というが、「僕自身楽しみながら作っている」と制作に好影響をあることを面白がる。
思い入れが深いキャラに「“ミイデラゴミムシ”の人」というゴッド・リーを挙げ、「体の中にハイドロキノンと過酸化水素を作り体内で混ぜて爆発させるなんて仕組みがすごく面白いので、最初から描きたかった虫の一つ」と明かす。「なぜそんな仕組みを持った生物がいるんだろうという面白さを最初に表現したキャラだと思う」と熱弁する。そして、「橘先生の絵がすごくカッコよく、最初のインパクトとして読者の方だけでなく僕たちも印象に残っているキャラ」と振り返る。
現在まで連載されたエピソードの中で、「アドルフ(・ラインハルト)班長の話」が印象に残っているといい、「体から電気が出るところ以外は、ほぼ“実話”といっておけば、お分かりいただけると思う」と苦笑する。人気作へと成長した今作だが、「最初は6話で終わる予定で書いていた(笑い)」と豪快に笑い飛ばす。テレビアニメの見どころについては、「第1話の出来がすごくいいので、純粋にエンターテインメントとして楽しんでいただきたい」と語り、「アニメをきっかけにマンガも新品で買って読んでいただけるとうれしい」とちゃめっ気たっぷりに笑う。ところで貴家さんはゴキブリは平気なのか?と尋ねると 「絶対に無理!」と即答し、「資料とか読む時もきついですし、橘先生の仕事場に行った時も資料があると裏返してしまう(笑い)」と大の苦手なことを告白。続けて、「橘先生は『もう慣れました』と言っていましたが、僕は慣れません!」と真剣に嫌がっていた。
<プロフィル>
さすが・ゆう 1988年生まれ。マンガ誌「ミラクルジャンプ」(集英社)創刊に合わせて掲載された「テラフォーマーズ」で原作者デビューを果たす。デビュー前は、同作の作画を担当する橘賢一のアシスタントをしていた。
*……「テラフォーマーズ 10巻 OVA同梱版(バグズ2号前編)」(作・貴家悠 画・橘賢一)8月20日発売/1980円/集英社刊
(インタビュー・文・撮影:遠藤政樹)
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2024年12月23日 01:00時点
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