ベイマックス:製作のコンリさんに聞く「伝えられる物語がある作品」と続編に前向き?

ディズニー劇場版アニメーション最新作について語ったプロデューサーのロイ・コンリさん
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ディズニー劇場版アニメーション最新作について語ったプロデューサーのロイ・コンリさん

 ウォルト・ディズニー・スタジオが贈る最新劇場版アニメーション「ベイマックス」(20日から全国で公開)は、亡き兄タダシが生前発明したケアロボット“ベイマックス”と14歳の少年ヒロが繰り広げる感動アドベンチャー作だ。舞台となる都市名が、米サンフランシスコと日本の東京を掛け合わせた“サンフランソウキョウ”だったり、主人公の名前がヒロだったりと、日本をイメージさせるものが多い今作。ベイマックスの目も、日本の鈴から着想を得たという。今作のプロデューサーを務めたロイ・コンリさんは、これまで、大ヒット作「アナと雪の女王」(2013年)や「シュガー・ラッシュ」(12年)を世に送り出してきた。このインタビューを録音するために取り出したレコーダーの二つ並んだイヤホンとマイク用の穴を見るなり、「ベイマックスだ!」とご機嫌のコンリさんに、製作の裏話や最近のディズニーのアニメーションに見られる“変化”について聞いた。

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 ◇“友達の力”が二つの物語の懸け橋に

 コンリさんは、今作の企画を聞いた時のことを「打ちのめされるような大きな喪失を味わった少年が、亡き兄が発明したベイマックスの存在で痛みから回復する……このアイデアを監督のドン(・ホール)から聞いた時、ディズニー映画に必要なすべての“ハート”があると確信しました」と振り返る。

 とはいえ今作には、ヒロとベイマックスの心温まるストーリーだけでは収まり切らない展開が後半待ち受けている。ヒロとベイマックスは亡き兄タダシの友人たちと協力しあい、タダシの死の真相に立ち向かっていくという、スーパーヒーロー作品の様相を呈していく。そんな予期せぬ展開は「もともと最初からアイデアとしてあった」というが、「二つの物語を一つの作品でどう成立させるかには苦労した」と打ち明ける。それを打破できたのは「ヒーローの喪失感を埋められるのは友達の力だということを思いついたから」だという。かくして「少年が悲しみから立ち上がる物語」と「スーパーヒーローチームの活躍」という二つの話を融合させることができた。

 ◇“成熟度”アップの陰にラセターあり

 最近のディズニーのアニメーションは、いい意味で観客の期待を裏切るストーリーになっている。アーケードゲームの中で繰り広げられる「シュガー・ラッシュ」もそうだったし、「アナと雪の女王」もお姫様モノの“王道”をいく展開にはなっていなかった。そこに、かつてのディズニーアニメからの脱却がうかがえるが、それはディズニー在籍21年のコンリさんも感じていることだという。

 その大きな要因としてコンリさんが挙げたのは、06年からディズニーのチーフ・クリエイティブ・オフィサーとなったジョン・ラセターさんの存在だ。「ジョンは、ストーリーテラーとしてもフィルムメーカーとしても優れた人物です。彼が(ディズニー・スタジオに)参加してからの8年間、一緒に仕事をすることで、私自身もプロデューサーとして、ストーリーテラーとして、フィルムメーカーとしてより強くなったと感じています。ジョン・ラセターが参加して以降、スタジオの、特に物語をつづるという側面では、ディズニーの伝統に根ざしていながら、ちょっと革新的な要素が加わり、さらに成熟度を増してきている。それが作品に表れてきているのではないでしょうか」とコンリさんは分析する。

 ◇続編の可能性も示唆

 さて、今回の「ベイマックス」。アイデアの源には、超能力を持つ日本人6人が活躍するマーベルコミックス「ビッグ・ヒーロー・シックス」があり、続編があっても不思議ではないエンディングになっている。今作のために新たに開発されたソフトによって、一段と精密さを増した映像は、実写と見まごうばかりだ。とすれば、マーベルの他のヒーローたちとベイマックスの共演も将来的にありうるのでは? 

 いささか突飛な問いに、コンリさんは「確かに、マーベルのコミックが原作ではありますが、この映画化の話をマーベルとした時から、これはディズニーのアニメーションであり、ディズニーの世界観で作っていきたいということで両社は合意しました。ニューヨークやロサンゼルス、はたまた東京という実在する都市で活躍するマーベルの世界とは違います。もっと空想的なのがディズニーの世界観であり、それが(今回の舞台である)サンフランソウキョウなのです」と説明。そして、「ですから今後、キャップ(キャプテン・アメリカ)やスパイダーマン、アイアンマンとの共演はないでしょう」ときっぱり否定した。

 その一方で「知的財産権」を重んじ、後世に残る作品作りを信条としているコンリさんは、このインタビューが行われた10月の時点で「スタッフみんなで心を込めてこの作品を完成させたばかりなので、正直そこまで頭が回っていない」としながらも、「『アナと雪の女王』では(続編について)自分の意見を出したりしました。『ラプンツェル』も世界中でヒットし、続編の声も上がりましたが、語るべき物語がなかったからそうしなかった」ことを明かし、続編にとって重要なのは、「伝えられるストーリーがあるかを見極めることだ」と強調。その上で「ベイマックス」は、「これまで私が手掛けた作品の中で、もっとこの世界の中で伝えられる物語がある、つまり、続編の可能性があると初めて思った作品です」と語り、続編の製作にまんざらでもない様子だった。映画は20日から全国で公開。

 <プロフィル>

 1954年生まれ、米ロサンゼルス出身。サンフランシスコにあるアメリカン・コンサーバンシー・シアターで演劇を学び、運営ディレクターを務めるなどしたのちに、93年、ウォルト・ディズニー・アニメーション・スタジオに入る。以来、「ノートルダムの鐘」(96年)、「トレジャー・プラネット」(2002年)、「塔の上のラプンツェル」(10年)のプロデューサーを務めた。「シュガー・ラッシュ」(12年)、「アナと雪の女王」(13年)では「スタジオ・リーダーシップ」としてクレジットされている。

(インタビュー・文・撮影:りんたいこ)

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