最近テレビやCMでちょくちょく見かけるけれど、実はあんまりよく知らない……。そんな、いまさら聞けない“ネクストブレーク芸人”の基礎知識を、本人の言葉を交えて紹介。今回はお笑いコンビ「クマムシ」をピックアップする。独特の歌ネタ「あったかいんだからぁ♪」がキモカワいいと女子高生らを中心に話題を集め、多くの芸能人にカバーされたことで人気が拡散。サビしかないネタにもかかわらず、1月20日にはレコチョク着うたランキング1位、レコチョクシングルランキング2位を獲得、ついに2月4日にはCDデビューも果たした。2人にコンビ名の由来、ブレークのきっかけなどについて聞いた。
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「あったかいんだからぁ♪」のネタは、「アイドルソング漫才」と称して、大柄で丸刈り頭のいかつい風貌の長谷川俊輔さんが、「もしも女の子に生まれ変わったら」というテーマで、相方の佐藤大樹さんの「コブダイの親分みたいな顔で何言ってんだよ!」という突っ込みにもめげずにアイドル風の歌を披露。歌のサビで「あったかいんだからぁ~」と、握りしめた手で顔をすりすりしながら可愛い声で歌ったり、佐藤さんの突っ込みに怒ってほおを膨らませてみせたりして、爆笑を誘う……。
フレーズとともに見せる長谷川さんのキュートな仕草は、意識しているアイドルなど、モデルは「特にいない」というが、長谷川さんが、ただ歌っているだけじゃつまらないと考え編み出した。長谷川さんは「もともとそういう(ぶりっこな)女の子が好きだった。怒ったときに、ほおをふくらます子とか……」と誕生秘話を頬を赤らめながら明かす。
「あったかいんだからぁ♪」のフレーズを歌う長谷川俊輔さん(はせがわ・しゅんすけ、1985年12月18日生まれ、埼玉県出身。趣味は音楽鑑賞、DJ)とツッコミの佐藤大樹さん(さとう・ひろき、1988年3月30日生まれ、富山県出身。趣味は音楽鑑賞、ファッション、恋愛、クラブに行く)のお笑いコンビで、ワタナベコメディスクール第12期卒業生、ワタナベエンターテインメント所属。
2010年にコンビを結成し、芸歴5年目。2人はスクールでたまたま同じクラスになり、最初はピン芸人になるつもりだった長谷川さんを佐藤さんが誘った。2人で組んで初めてやったコントで、月に1回のスクールのライブで優勝できたことで、正式にコンビを組むことになった。コンビ名の「クマムシ」は「深海とか、南極とか宇宙とか住みにくいところでも生きられる最強の生き物の名前。何をされても死なない、芸能界でもしぶとく強く生きてくんだ」という意味を込めて佐藤さんが命名したが、のちに長谷川さんがいろいろ調べたところ、「クマムシの唯一の弱点は『上からの圧力』なんです。踏むと死んじゃう……。ヘタこいちゃったな。皆さんに優しくしてもらわなければ生きていけない」と苦笑する。
まだ芸歴5年目ながら、コンビ結成1年に満たないスクール時代には、すでに解散の危機があった。テレビでスクールの生徒を密着するという企画番組の出演者として選ばれ、2、3カ月間密着された際、「ロケに佐藤君が2度遅刻したんです。1度目は許してもらえたんですが、2度目は『もうダメだ』となって、周りからも『もうあいつはダメだから解散した方がいいんじゃないか』と言われた。このままじゃ(卒業しても)事務所に所属できないって、僕もすごく悩んだ」(長谷川さん)というが、佐藤さんが丸刈りにして、誰よりも朝早く来て、学校の草むしりをして反省したことで、解散をとどまった。
コントでスクール内ライブの優勝を勝ち取ったものの、事務所所属後はなかなか結果が出なかったため、当時ネタをチェックしてくれていた作家のアドバイスで、長谷川さんの好きな歌ネタを作る方向に路線変更。ビジュアル系ソングを作ったが、「コントでやるメイクとか衣装が大変」と、漫才スタイルでやったところ、「事務所でライブ3位になった。自分の見た目とのギャップがあるのがいい」(長谷川さん)と、手応えを感じ、生まれたのが「あったかいんだからぁ♪」だという。
13年の元日(大みそか深夜)に、お笑いコンビ「日本エレキテル連合」などのブレークのきっかけとなったバラエティー特番「ぐるナイおもしろ荘」(日本テレビ系)で初めて同ネタを披露し、「ちょっと話題になった。営業もちょっと増えましたが、それから伸びなかった」(長谷川さん)。元の生活に戻りかけた9月に、バラエティー番組「アメトーーク!」(テレビ朝日)の特別企画「ザキヤマ&フジモンがパクリたい−1GP」で同ネタが取り上げられ、2度目のブレークとなった。佐藤さんは「(プチブレーク中に)何とかしようとして、ボケと突っ込みを逆にしてみたり、いろんなことをしてみたけれど、(同番組を見ていた)『アメトーーク』のプロデューサーに声をかけられた」といい、オーディションで出演を勝ち取って「もう一度『あったかいんだからぁ♪』がフューチャーされた」と喜んだ。
その後、「あったかいんだからぁ♪」と歌う長谷川さんを、アメトーーク!の芸人のほか、AKB48の柏木由紀さん、K-POPの人気グループ「BIGBANG」、4人組バンド「SEKAI NO OWARI」などが、キュートな仕草とともにカバーし、一気に人気が爆発。ワンフレーズの歌でCDデビューまで勝ち取った。
同ネタの反響に、「すごくやっぱりありがたくて、(『アメトーーク!』が)まねをするという企画だったのが大きなポイントだったと思う。視聴者が笑ってくださって、僕らのことを知ってくださった」と、長谷川さんが感謝すると、佐藤さんも「まねするなら、僕ら本家をまねしようと、(視聴者や芸能人が)、僕たちを見てくださった」とうなずいた。長谷川さんが特にうれしかったのは、SKE48の松井珠理奈さんのカバーだったといい、「一番最初に、松井珠理奈さんが初めて動画で、ファンに向けてのひとことでやってくださった。 『珠理奈がやってる!』って」と、興奮気味に語ると、佐藤さんも「あれは可愛かった~」と思わず目を細めた。
ブレークしたものの、長谷川さんにだけ注目が集まることで、佐藤さんは「長谷川が笑いをとったら、もっと笑いをとろうとしますね。ライバルは長谷川です」と断言した。長谷川さんは佐藤さんについて「テレビの収録とかでも、僕になかなかパスを振ってくれない。とにかく自分自分ってなっちゃう」と、最近の悩みを打ち明けたが、「佐藤君は一人っ子気質の天然なところとか、まだまだ面白いことを秘めている。僕が引き出してあげたい」と期待を寄せ、「弟まではいかないですけれど、とにかく僕がしっかりしないと」とコンビ愛を見せた。