名古屋を拠点に活動するアイドルグループ「SKE48」の活動を追った同グループ初のドキュメンタリー映画「アイドルの涙 DOCUMENTARY of SKE48」(石原真監督)が全国で公開中だ。映画は、オーディションやレッスンの様子など同グループの活動を6年にわたり撮影してきた記録映像に、新たに撮影した現役メンバーと卒業生らのインタビュー映像を交えた構成になっている。1期生の松井玲奈さんと大矢真那さんに、グループのこれまでや現状、タイトルにもある涙に関するエピソードなど、6年間の活動について聞いた。
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2人は、SKE48結成当初から在籍する1期生。加入した時の目標を、大矢さんは「最初はみんなで『AKB48を追い越せ』という目標を立てて進んできました」と言うが、6年が経過した今では「追い越すという目標ではなく、一緒に48グループを盛り上げるという感じになってきました」と明かす。目標が変わったのは、「MNB48ができたころぐらいに“AKB48グループ”という名前ができた」ことがきっかけだと言い、「48グループ中でSKE48が一つ飛び抜けなきゃいけないという新たな目標できました」と力を込める。
一方、松井さんは「入った時は、一つでもポジションをよくすること、真ん中に近づくことが一番の目標だった」と語るも、「6年を振り返ってみると、面白いことに今は真ん中に立ちたいとは思わない」と心境の変化を告白する。「逆に真ん中に立てる子を育てなきゃいけないし、そのために自分が一歩引いて、何かを残していかなければという考えになりました」と真意を説明する。考えが変わったきっかけは2013年に行われたSKE48初の“組閣”だと言い、組閣でチームEのリーダーになった松井さんは「それまでとは違って(自分以外)全員が後輩のチームになり、もともとチームEにいた木本花音ちゃんがセンターをやっている姿を見て、自分が前に出ることがすべてではなくて、ちゃんと支えてあげないといけないし、こういう子をもっと作っていかなければという気持ちになりました」と話す。
組閣といえばSKE48にとって大きな変動があった、14年の「AKB48グループ 大組閣祭り~時代は変わる。 だけど、僕らは前しか向かねえ!~」で「乃木坂46」との兼任が発表された松井さんだが、「ただ一人、グループの中で(名前を)呼ばれなくて席に残っている自分はどうなっちゃうんだろう……という不安もあった」と言い、「呼ばれた時は乃木坂46に移るということよりも、SKE48でいられてよかったという気持ちがすごく大きかった」と率直な思いを明かす。時間がたった今では「AKB48グループは大所帯だから、変わることが当たり前なんだというのは思っています」と語る。
さらに松井さんは組閣が行われることを、「これが5人組のアイドルグループだったら絶対にあり得ないことだと思う。たとえば、ももクロ(ももいろクローバーZ)にエビ中(私立恵比須中学)のメンバーが入るとなったらすごい騒動になりますよね(笑い)」とユーモアを交えつつ語り、「AKB48グループはそういうこともあり得てしまうグループで、自分たちもファンの方も受け入れながら新しい今のメンバーでのSKE48を作っていかなければいけない」と力を込める。さらに、「受け入れられないでいるファンの方にも認めてもらって、楽しんでもらえるようなグループにならないと、SKE48はこの先も続いていかないだろうと思います」と持論を展開する。そして、「いなくなったメンバーの穴は大きいけれど、そこは埋めていかなければ前に進めないし、現状で何をするのが一番なのかを考えながら活動しています」と今は前を向いている。
今作には「アイドルの涙」というタイトルが付いているが、うれし涙や悔し涙など涙にはさまざまな種類がある。涙から真っ先に連想したものを聞くと、大矢さんは「アイドルの涙といったら、私がすぐ出てくるのは玲奈の涙です」と即答。その理由を「玲奈は今までの映像とかでも、きれいに泣くから泣いてる表情を使われることが多い」と切り出し、「そんなにハートが弱いと思ったこともないけど、すごく絵になる泣き方をしていて、映画でもめちゃくちゃきれいに涙が出ている。だから(アイドルの)涙といったら玲奈です」と語る。
大矢さんの発言を聞いた松井さんは「うれしい」と笑顔を見せ、タイトルについて「すごくすてきなフレーズだなと思う」と印象を語る。しかし、「そんなにみんな泣いていたかなという気持ちもあって、(自分が)泣きすぎていて、あんまり泣いている実感がないのかな」と言いつつ笑う。「過去映像ではみんなやっぱりたくさん泣いているけれど、インタビューの中で泣いているメンバーが少なかったのもあるかも」と自分の涙に注目が集まっている理由を分析する。
現在までの活動の中で流した涙はさまざまな感情を伴っていた。「寂し涙が一番多かった」と話す大矢さんは、「メンバーの卒業は6年活動していても慣れることはなく、すごく寂しいし、そのたびに涙が出る」と心境を明かす。自身を「悔しい時、泣くぐらいならその気持ちを蹴り飛ばすぐらい自分が何かをやらなきゃと思うタイプ」と自己分析し、「悔しくて泣くということは普段あまりないけれど、メンバーの卒業だけはどうしてもやっぱり涙が出てきます」としんみり語る。
大矢さんの話を神妙な面持ちで聞いていた松井さんは、「言うなれば孤独だったな……」とつぶやき、「リクエストアワーの最初の年に自分のソロ曲が1位になってうれしかった」というが、「振り返ってみるとコンサートの最後はこの曲でよかったのか、ひな壇のメンバーはどういう思いをしているんだろうと思った時に、その気持ちが分からない自分が不安で、終わったあとに一人で泣きました」と当時の心境を明かす。
さらに「その翌年も1位にしてもらってうれしかったけど、2位が『お待たせSet list』というようやく始まったチームK2のオリジナル公演の曲で、その曲が2位にランクインしたことはすごく意味があって、会場もメンバーも誰もが祝福している中、一人(ステージの)袖で待っている私はどういう気持ちでいればいいんだろうと思った」という。大矢さんが「それだけ玲奈を支えたいというファンの方が多いんだから、玲奈は孤独じゃないよ」と声を掛けると、「そうだけど、私はすごい孤独感を抱えながらステージに立っていました(笑い)」と当時の心境を語る。
松井さんは、孤独を感じていたことを「寂しいわけではないけれど、その当時はみんなに壁を作っていた」という。「自分が上に上がっていくためにここにいるという気持ちでやっていて、そういう意味では『みんなと自分は違う』と思って孤独を感じていた」と理由を説明。「本当はみんなと仲良くしたいけどどうすればいいかわからないという涙も多かったし、不器用ですね……」と言って自嘲気味に笑う。大矢さんは「(松井さんのは)すごく高い壁で乗り越えられなかった」と笑顔で切り返されていた。
今年はSKE48を皮切りに乃木坂46、NMB48、HKT48とドキュメンタリー映画が続々と公開される予定だ。SKE48ならではの見どころを「ほかのグループのはまだ見られていないですが、今作では卒業生たちもピックアップしてくださっているところ」と大矢さんは言い、「SKE48にいたから(卒業メンバーが)今のお仕事でも輝いている部分があるというのがすごく分かる映画になっているし、(現役メンバーは)みんながSKE48にいたいと思う映画になっているのでは。“SKE48魂”の継承みたいなものが見えると思います」と力を込める。
松井さんは「私たちの出発点や根源に何があるかを丁寧に切り取っていただいている」と言い、「(振り付けなどの指導も)ただ厳しくされているだけではなく、その時に(牧野アンナ)先生がどう思っていたかというのも描かれていて、私たちは映画を見て先生の気持ちを初めて知ることになりました」としみじみ語る。そして、「どうしてSKE48が今のようなグループになったのかはこの映画を見るとよく分かるし、自分たち自身も気づかされることが多かった」という。
卒業したメンバーにもスポットが当たっている今作だが、3月にはグループを支えてきた中西優香さんと佐藤実絵子さんの卒業が発表されている。松井さんは「2人は自分たちがやめることは“最終手段”と言っていましたが、そういう状況になってきているということを後輩メンバーに分かってほしい」と切り出し、「2人は(卒業までの)短い期間に何かを残そうとしてくれているので、私たちもちゃんとその気持ちをくみ取って、グループを中から活性化させて、さらに飛躍していかなければと思っています」と力強く語る。
大矢さんも「にしし(中西さん)と姉さん(佐藤さん)が卒業を決め、後輩たちがやっと口に出して『SKE48をこうしていこう』と言い始めているのを聞くと、(2人が)卒業発表をしたんだなという実感が出てきた」としんみり。だが、「同時にSKE48は今の勢いのままではだめだと思っているから、ほかのグループの中から一つ飛び抜けていかなきゃいけないので、これからも何事も手を抜かずみんなで一生懸命やっていければと思っています」と意気込む。
最後にSKE48の魅力を、大矢さんは「SKE48ファンだけではなく、最近グループのことを知ったり好きになった人たちには、今も昔も変わらない一生懸命さは、劇場公演を見てもらったら一発で分かってもらえるところ」と話し、続けて「なかなか劇場に来られないという方も多くいらっしゃると思いますが、劇場公演だけではなく全国ツアーや大きなコンサートなど、1回は来てほしい。そうしたら一発で魅力が分かると思います」と力説する。横で聞いていた松井さんも「そうです!」と力強くうなずいた。映画は2月27日から全国で公開中。
<松井玲奈さんのプロフィル>
まつい・れな 1991年7月27日生まれ、愛知県出身。2008年に「SKE48オープニングメンバーオーディション」に合格。14年に開催された「AKB48 37thシングル選抜総選挙」では5位にランクイン。最近ではドラマやバラエティー番組への出演、ファッションショー、14年には初主演映画「gift」が公開されるなど個人の活動も目立つ。
<大矢真那さんのプロフィル>
おおや・まさな 1990年11月6日生まれ、愛知県出身。2008年に「SKE48オープニングメンバーオーディション」に合格。14年に開催された「AKB48 37thシングル選抜総選挙」では30位にランクイン。SKE48チームS所属でニックネームは「まさにゃ」。48グループ内では「KD(キッズ大好き)メンバー」として知られている。
(インタビュー・文・撮影:遠藤政樹)
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