ドラゴンボールDAIMA
第10話 ウナバラ
12月16日(月)放送分
ボーカル&ダンスユニット「EXILE」の橘ケンチさんの主演舞台「ドン・ドラキュラ」が9日から上演される。「ドン・ドラキュラ」は、1979年からマンガ誌「週刊少年チャンピオン」(秋田書店)で連載された故・手塚治虫さんのマンガで、82年にはテレビアニメが放送された。今回は、劇団「とくお組」の主宰で、ドラマ「ロストデイズ」ほかドラマ脚本や多くの舞台作品を手がけてきた徳尾浩司さんが脚本・演出を担当し、俳優の池田鉄洋さん、女優の原田夏希さんらベテランから若手まで実力派のキャストがそろう。主人公のドン・ドラキュラ役を演じる橘さんに、ドラキュラや父親といった役作りや見どころ、舞台に懸ける意気込みを聞いた。
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ドラキュラ役を演じることについて橘さんは、「周りから『ドラキュラっぽい』と言われることがあったり、以前にティム・バートン監督に対談でお会いした時も、僕を役者として使うにはどういう役がいいですかと聞いたら、『君はバンパイアだよ』と言われたことがある」という体験から、「その半年後ぐらいにこの話が来たので“ついに来たか”という感じでした」と笑顔で語る。
自身ではどのあたりにドラキュラ要素があると思うか、と聞くと「彫りが深いのが一因なのかな」と切り出し、「ちょっと悪役顔だから、そういうイメージがあるのでは(笑い)」と自虐的に分析。しかしドラキュラメークを施した自分の顔を見て、「想像以上にいい感じかもとは思いました」と仕上がりに満足げだった。そして、「自分に変身願望があるのかも」といい、雑誌「月刊EXILE」で好きな映画のワンシーンを自身がモデルになって表現する企画を引き合いに出し、「自分が全く違う何かに変われるというのは、見た目からも含めてワクワクして好き」と自己分析する。
続けて、「もちろん普通の人間としての役を演じるのも好きですけど、それは内面から出てくるもの。外側から思いっきり変えるのもすごく好きです」と言い切り、思い切って女性になるのはどうかと聞くと、「女装……やったら面白いかも」と楽しそうに笑う。
手塚作品の舞台化ということもあって、「正直うれしかったんですけど、“手塚治虫×橘ケンチ”という並びはいいのかなと思った」と恐縮する橘さんだが、「手塚先生のファンの方はたくさんいらっしゃいますし、僕も子どもの頃から読ませてもらっていましたから、その名を汚すことはできないとすごくいい意味でプレッシャーを感じました」と心情を告白。続けて、「いい意味で新しいドラキュラ像をお届けして、いい意味で期待を裏切っていきたいという思いがふつふつと湧いてきます」と意気込む。
橘さんが演じるドン・ドラキュラは、真面目で不器用、実直で熱意のある性格で、娘のことが大好きで心配性という人物。「(ドン・)ドラキュラが絵に描いたようなドラキュラではなく、結構人間的な部分が多い」と評し、「見た目や仕草とかはいびつなものを意識しているが、内面的には人間的な感覚でやっている」という。役作りは、「共演者の方々と芝居上でのコミュニケーションを通して距離感を測って、立ち位置や関係値を見極めながら自分がこういるべきだというふうに考えている」と説明した。
ドラキュラにはチョコラという娘がいる設定で、橘さんは父親役に初挑戦となる。「どうかなと思った」と戸惑いはあったが、「娘を溺愛していて、娘が誰にもいじめられないように気を使っているお父さんというイメージ」のもとけいこに臨み、「娘役の神田愛莉ちゃんが芝居がめちゃくちゃうまくて、その子のお陰でもありますが、余計なことも考えることなくスッと親子という関係にいけました」と感謝する。
そんな父親役を演じる姿を共演者からは「意外と自然にパパになっている」と評され喜ぶ橘さん。「自分ではまだ気づいていないのですけど、そう見えているのならいいかなと」と謙遜するも、「それが劇場に来てくれた人にも自然に受け入れられてくれたらいいなという感じはします」と目を輝かせる。
脚本・演出を手がける徳尾さんの印象を「すごい柔軟で受け皿がすごく、みんなが思っているものを全部一回(自分で)引き受け、それを自分の中の軸で精査していって一筋、道を通していく感じの方」と表現する。今作ではプロデューサーから「ケンチのやりたいことをやろう」という言葉を掛けてもらったといい、「話の内容やキャスティング、演奏などもこういうのがいいですと、いろんなわがままを言わせてもらって徳尾さんに一回聞いていただき、台本に反映してもらったりしたこともあった」と説明する。
さまざまな提案をしたという橘さんだが、今作に携わるに当たって、「橘ケンチが舞台をやったらこうなるというものを提示したかった」と決意したという。「原作のまま忠実に再現するよりも、より振り切った世界観にしたかった」と言い、「ドラキュラは芸術性もあると思っていて、全体のセットをアート的な雰囲気にしたり、劇場に入った時からその世界観で見る前からワクワクするような、すべてがエンターテインメントになっているようなものにしたかった」と力を込める。実現するため「仕掛けもいろいろ提案した」と話し、「役者さんもそうですし、美術面とか衣装にもおしゃれさを入れたかったので、パリコレなどでも活躍する若槻善雄さんにイメージアドバイザーという形でアドバイスやアイデアをいただいた」と明かす。
さらに踊りについては「今回はコンテンポラリー的な踊りが合うかなと思い、コンドルズの近藤良平さんに手伝っていただきました」と続け、「一流のクリエーターや表現者が集まってそこから新しい何かが生まれるというのをやりたかったので、そういった意味ではいろいろわがままというかアイデアを出させていただきました」と感謝する。「もちろん、それはさすがに無理というのでボツになったものもありますが(笑い)」と言いつつ、充実感に満ちた表情を見せる。
「ドン・ドラキュラ」については、「ドラキュラは見た目が怖くて人間を恐れさせる恐怖の対象だけど、原作では三枚目でコメディー要素が多く、新しいドラキュラ像のような気がして、手塚ワールドが炸裂(さくれつ)している」と感じたという。「吸血鬼という存在を通して人間の本質を問いただすというテーマが舞台にはある」と切り出し、「動物は仲間は食べませんが、人間の場合はいろんな感情などが原因になって戦争が起き、人を殺してしまったりする。そういうことをするのは生き物の中では人間だけだし、そういうものをドラキュラ、吸血鬼という存在を通して問いかけている」と舞台に込めたメッセージを語る。
今回の舞台を、「コメディー要素が多いので見ていて楽しいと思いますし、その分、最後は泣けると思う」と解説。コメディータッチの役をやることも多いという橘さんは、「コメディーの場合は役にのっとった上で、いろいろ振り切らないといけないこともあるし、会場の空気感というのを一瞬にして察知しなきゃいけない」という心構えで臨んでいるといい、「今回の場合は僕が発信するというよりは周りがそういう芝居をして、僕はそれに翻弄(ほんろう)される感じが多いかもしれない」という。さらに「周りが池田さん、野添(義弘)さん、平田(敦子)さんというお三方の笑いが三者三様あって、それぞれめちゃくちゃ面白くて、全部受けてそれぞれに応えているので、そこが一つの見どころだと思います」と自身の新たな一面に期待を寄せる。
また、今作を楽しみにしている人に向けて、「新しいドラキュラ像を見てほしい」と橘さん。「芝居とEXILEのライブのいいとこ取りで、劇場に行った瞬間から世界観に没入できることを目指している」と語り、「見るだけではなく体感してもらえるような、そういう新しいエンターテインメントに向けてけいこを重ねているので、全身で楽しんでほしいです」とメッセージを送った。舞台は「AiiA 2.5 Theater Tokyo」(東京都渋谷区)で9日から上演。
<プロフィル>
1979年9月28日生まれ、神奈川県出身。2007年に「J Soul Brothers」に加入し、「二代目 J Soul Brothers」 として活動後、09年に「EXILE」に加入する。12年7月からは「THE SECOND from EXILE」としても活動。14年7月に芸名をKENCHIから橘ケンチに改名。俳優としても活動し、劇場版「SPEC~結~」(13年)、ドラマ「スターマン・この星の恋」(13年)、舞台「歌姫」(14年) などにも出演している。初めてはまったポップカルチャーはテレビと映画で、「『金曜ロードショー』が大好き。すごく特別な感じがして、いまだにワクワクする」という。
(インタビュー・文・撮影:遠藤政樹)