2015年春アニメ短評:アニメ記者が独断と偏見で語る(後編)

「アルスラーン戦記」のビジュアル(c)2015 荒川弘・田中芳樹・講談社/「アルスラーン戦記」製作委員会・MBS
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「アルスラーン戦記」のビジュアル(c)2015 荒川弘・田中芳樹・講談社/「アルスラーン戦記」製作委員会・MBS

 今年の春アニメが出そろってから約1カ月がたった。アニメ担当記者が、田中芳樹さんの人気小説が原作の「アルスラーン戦記」や「Fate/stay night 」など話題作を独断と偏見で語る。

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 ◇アルスラーン戦記

 王道のファンタジーでありながら、世の中の矛盾を皮肉たっぷりに描く人気小説家・田中芳樹さんの味がにじみ出ている。もちろん「鋼の錬金術師」の荒川弘さんが描くキャラクター、数万の兵が激突する戦闘シーンなどの見せ場も見事で、シーンごとに重みがあるのも良い。小説ファンならばご存じの通り、ひ弱な王子の成長、先の読めないストーリーが楽しいのだが、アニメでどう表現されるか見定めたい。アニメの第1~2話で救われない展開が続くだけに、嫌がって見切る人もいそうなのが心配ではあるが。第3話で知恵者・ナルサスを見事に口説き落とすシーンは、原作を読んでせりふが分かっていてもシビれます。(成)

 ◇食戟のソーマ

 「ミスター味っ子」などの系譜にある料理がテーマの作品。「週刊少年ジャンプ」(集英社)で連載中の人気作のアニメ化ということもあって、放送前から話題だったが、気になる調理シーンや料理の表現がすごくリアル。深夜アニメなので“夜食テロ”効果は絶大だ。忘れてはいけいないのが、原作でも話題だった食事中のキャラのリアクションで、美少女キャラが恍惚(こうこつ)の表情を浮かべる姿がセクシーすぎて、見ていて赤面してしまうほど。裸エプロン姿で料理する一色慧など男性キャラもいい味を出している。(鉄)

 ◇響け!ユーフォニアム

 武田綾乃さんの小説が原作で、京都アニメーションの最新作。高校の吹奏楽部を舞台に、登場人物たちの成長や葛藤が描かれている。京アニで音楽モノ、というと真っ先に思い出すのは「けいおん!」だが、今作で描かれているのは“ゆるふわ”とはまったく別物の“スポ根”路線。京アニ作品であえて近い作品を挙げるなら男子水泳部を舞台にした「Free!」だが、よりギャグ色を薄めた感じだろうか。そのぶん登場人物たちの必死さや緊張感が伝わってきて、まだ前半だが視聴後は毎週ハラハラと続きが気になってしまう。柔らかな物腰で生徒たちにきついセリフを吐く男性顧問の笑顔も不気味で緊張感に拍車がかかる。個人的には今期最も続きが気になる作品。(鰭)

 ◇Fate/stay night [Unlimited Blade Works]

 創作集団「TYPE-MOON」の代表作のアニメ化で、今回は原作の“凛ルート”の後半部にあたる。これまで行動を共にしてきたサーヴァントのセイバーを奪われた主人公の衛宮士郎と、同じくアーチャーに裏切られた遠坂凛が2人きりで聖杯戦争を継続する。これまでの作品で過激な描写で描かれてきたイリヤの受難シーンは、原作でも個人的に抵抗があっただけに懸念していたが、昨今の社会事情もあってか、抑制的だが効果的な演出で描かれていたのが好印象だった。マスターたちの権謀術数と士郎の成長譚が描かれる原作を最高の形で映像化しており、原作ファンでなくても引き込まれるのでは。(立)

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