スマホゲームに押されて今ひとつ元気のないテレビゲーム業界だが、「仮想現実(VR)」に注目が集まっている。VRは三次元CGの発展とともに注目されてきたが、ハードウエアのスペック向上や電子チップの価格が下がったことにより、製品化が着々と進んでいる。そのVRデバイスの代表格が「オキュラス・リフト」と「プロジェクトモーフィアス」(開発コードネーム)というヘッドマウントディスプレーだ。そしてVRの体験で驚くのは、想像以上に現実と非現実の境目があいまいに感じる……ということだ。特に「プロジェクトモーフィアス」は、PS4と組み合わせることで、ゲーム業界とコンテンツのあり方を変えるポテンシャルがある。
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先日、東京都内で開催されたプロジェクトモーフィアスの体験会に参加した。銃撃戦が体験できるVRゲーム「The London Heist」では、ゲームに熱中して弾丸を避けようとして、ゲーム世界の机に伏せようとして、思わずつんのめってしまった。海中を探索するVRゲーム「The Deep」では、水中にいるような浮遊感があり、サメが襲ってくるシーンではおもわずのけぞった。従来のゲームにない感覚は実に新鮮で、スリル満点。従来のゲームではありえなかった体験に興奮した。
だがVRの課題も感じた。プレーする当人は刺激的なのだが、ゲームに詳しくない第三者から見ると滑稽に見えてしまい、周囲に魅力が伝わりづらい。ヘッドマウントディスプレーなしでは、ただの映像にすぎないのも事実だ。1980年代に起きたファミリーコンピュータの大ブームは、端からゲーム画面を見るだけで面白く、それが大きな追い風となった。現状、プロジェクトモーフィアスは、第三者視点では未知の興奮を感じづらい面がある。
また価格もネックだ。ヘッドマウントディスプレーとゲーム機、ソフトをすべてそろえるとなるとどうなるか。例えば、PS4本体(3万9980円、税抜き)が必要で、「プロジェクトモーフィアス」の価格予想も数万円と見る人が多い。VRを遊ぶ住環境もそうだし、動くとケーブルが邪魔になることもある。もちろんデバイスとソフトの継続的な改善は必須となる。
だがそんな課題があっても、VRはゲーム業界を変革する可能性を秘めているというのが私の結論だ。
現在ゲームのメインプラットフォームは、スマートフォンであり、特に日本国内のテレビゲームの家庭用ゲームは明らかに過渡期を迎えている。そんな中、VRの進化と深化は、スマホゲームにない長所と言える。SCEの創業者の一人で、プレイステーションの生みの親として知られる久多良木健さんが2013年の当時、黒川塾の中でも「プレイステーション4はネットに溶ける」という表現を使った。今考えると、SCEはゲームを主軸にしながらも、ゲームの枠を大きく超えたVR体験やエンタメ体験の創出をもたらすことを“予言”したのだろう。
VRの魅力の一つは産業としてのポテンシャルの高さだ。もちろん初期はゲームを中心になるのは間違いないが、将来的には、VR体験型の映画館や、グーグルのストリートビューに近いサービスでVR体験を創出する流れになるだろう。少なくともゲームタイトルの充実がVRの終着点はでないのは明らか。つまり社会性が伴ったとき、真価が世間一般に広く認められることになるだろう。そして体の不自由な人、老人といったことに関係なく、誰もが気軽に体験できるVRの登場で、ゲームの定義は大きく変わる可能性を秘めている。
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