女優の桐谷美玲さんの主演映画「ヒロイン失格」が19日に公開された。「ヒロイン失格」は、少女マンガ誌「別冊マーガレット」(集英社)で連載されていた幸田もも子さんのマンガが原作で、幼なじみで大好きな男子にふさわしいのは自分と考える主人公が、学校イチのモテ男らを巻き込んで騒動を起こす姿をコミカルに描く。主人公の女子高生・松崎はとりを桐谷さん、はとりの幼なじみの寺坂利太を山崎賢人さん、学校イチのモテ男・弘光廣祐を坂口健太郎さんが演じ、笑って泣けるラブストーリーを盛り上げている。今作のメガホンをとった英勉(はなぶさ・つとむ)監督に話を聞いた。
ウナギノボリ
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原作を読んだとき、「(『ヒロイン失格』という)題が気に入った」とインスピレーションを受けたと話す英監督は「原作を渡されたその場でパラパラと読んでみて、すぐにこれは面白いと思いました」と感じたという。
特に「主人公の女の子が恋愛に対して客観視ができているふうになっている構造」に英監督は興味を持ち、「(主人公は)ちゃんとヒエラルキーが分かっていて、その中で『私がヒロインで、ほかは脇役。恋愛に対してすごく分かっている』つもりだけど、実際ふたを開けてみたら全然分かっていなくてダメという主人公は、なかなかいないから、そこがまず企画として面白い」と力を込める。
原作を読み進めた英監督は「(はとりの)キャラクターも可愛いし、面白い上に、利太と廣祐もただの王子様ではなく、それぞれ人としてのキャラクターがあり魅力的」と登場人物を気に入り、「コミックから人が演じる実写になったときに魅力的なものになるのではと思った」と実写化のイメージが湧いたことを明かす。
映画化するにあたっては、「原作が持っている軸は絶対にずらさないようにというふうに考えて作った」と話す英監督は、登場人物のキャラクター像に力を入れたという。「脚本段階から、はとりの行動としてあり得るのか、利太はこういうことを言うのか、廣祐の行動はこれでいいのかなどは(スタッフとキャストで)話していた」と切り出し、「脚本の途中段階で美玲ちゃんも『こういうせりふがあったほうがいい』と意見を出してくれたり、現場でも『利太はこういうことを言うかな』とみんなで話したりしました」と振り返る。
そういった中、桐谷さんは変顔から丸刈り姿まで、コメディエンヌとしての一面を見せ観客を楽しませてくれる。「最初は、あまり彼女がドカーンとやるような印象がなかったので、どれだけやってくれるのだろうというのはあった」と英監督は本音を明かすも、「本読みをやったときに、もうそこで僕が思っているぐらいまで(桐谷さんが)やる気でいてくれたので、すごく安心した」と笑顔を見せる。
撮影中は事前に打ち合わせていた通りに桐谷さんが演じてくれたといい、「現場現場でシーンに合わせて、さらに(桐谷さんがレベルを)上げてくれたので、ものすごく演出したという覚えがない」と英監督は桐谷さんの演技を絶賛し、「これだけの美貌(びぼう)で、これだけ面白いキャラというのは、なかなかできないと思うから、何か賞をあげてください!」と大プッシュする。
桐谷さんの脇を固める利太役の山崎さんと、廣祐役の坂口さんも方向性の違うカッコよさをキラキラと好演している。「2人と会った瞬間、いけると思った」と英監督は確信したそうで、「2人とは最初に、どのぐらいの言葉の量を言うのかや、どういう立ち方をしているのか、人としゃべるときの距離感はどれぐらいかというような話をきっちりとしていたので、困ることはなかった」とイメージの共有もうまくできたと語る。
さらに原作で、はとりが柳沢慎吾さんふうの表情をするというネタがあるが、このネタに映画オリジナルのアイデアも加わり、柳沢さん、中尾彬さん、六角精児さんが出演し話題を呼んでいる。「ほかの誰にもできないので、もし出演NGでほかの人ということになっていたら、そのシーンはなしにしようと」と決意していた英監督。続けて、「唯一無二の人に出てほしかったし、その人が持っている唯一無二なものを出してほしかった」と強調し、「やっぱり修学旅行で見つけるのは六角さんじゃないとダメだし、中尾さんではなく誰が『いいんだよ』と言ってくれるのかとか、無意味に出てもらっているわけではなく、“有意義”に出てもらっている」とちゃめっ気たっぷりに語る。
今作は原作のテイストもあるが、英監督自ら「壁ドンといえば山崎くんみたいな感じもあったので、“ミスター壁ドン”の前でやってもらうのも面白かった(笑い)」と言うようにコメディー要素が強い。しかし、「恋愛映画を撮ろうというつもりだった」と英監督は切り出し、「ラブストーリーを撮ろうとしているから、よく見るとコメディー要素はいっぱいあるけれど、はとりの感情によって出てくるものだけで、彼女のキャラクターから発する笑いでしかない」と解説する。
さらに、「過剰な表現みたいなことはしていても、はとりが過剰な子なので出てくるだけというように基本的にはなっているので、(物語が進んでいき、はとりが)人のことをちゃんと思うようになると“切な(い)系”になる」と続け、「前半と後半で作品の印象が変わるのは、(はとりの)感情がそうなっているからで、そうするとコメディー要素というのは当然入らない。ヒロインがヒロインとして動いているだけなんです」と説明。「真っ向からラブストーリーを撮ったつもり」と英監督は言い切る。
今作は少女マンガを基に実写化しているが、「男性が見ても面白いと思う」と英監督は胸を張る。「(利太と廣祐の2人が)王子様ではなく、人として動いているから(男性が原作を)読めるし(映画も)見られる。架空の何かではなく、血肉が通っているキャラクターになっている」と理由を分析する。
そんな利太と廣祐のどちらにより共感が持てるかを聞くと、「利太かな」と英監督。「男の子は、だいたい利太っぽい(笑い)。バシッと結果を出そうと思うけど、そこに躊躇(ちゅうちょ)が入ったりとかいうのは、男の子から見たら割と分かりやすいはず」と持論を展開し、「廣祐までやろうとしたら、かなり自分で自分を作っていかないと、あの行動はなかなかとれないのでは」と言って笑う。そして、「変に斜に構えず、素直にポンと見てくれたら、大人でもすごくハッピーになれると思う」と完成作に自信をのぞかせ、「友達同士やデートで見に行くと気持ちいいのでは」とメッセージを送った。映画は全国で公開中。
<プロフィル>
1968年生まれ、京都府出身。96年から数々のCMにディレクターとして携わり、2008年に「ハンサム★スーツ」で映画監督デビューを飾る。その他の監督作に「高校デビュー」(11年)、「行け!男子高校演劇部」(11年)、「貞子3D」(12年)、「貞子3D2」(13年)がある。13年からテレビ番組「リアル脱出ゲームTV」(国際エミー賞ノミネート)、「マッチングクラブ」などを演出し、新たな分野にも挑戦している。
(インタビュー・文・撮影:遠藤政樹)
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