歌手のJUJUさんが、6枚目のオリジナルアルバム「WHAT YOU WANT」(「あなたの欲しいもの」の意)を9日にリリースした。日本テレビ系ドラマ「偽装の夫婦」の主題歌としても話題のタイトル曲「What You Want」、映画「娚の一生」の主題歌「Hold me,Hold you」などのヒットシングル曲ほか全13曲が収められ、ハイセンスで表情豊かなアルバムに仕上がっている。「(今作を)自分の欲しいものに邁進(まいしん)する時のBGMにしてほしい」と語るJUJUさんに、新アルバムの話や楽曲にまつわる恋愛観などについて聞いた。
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――昨年はデビュー10周年でしたが、その後も休むことなくハイペースなリリースが続いていますね。
休んだたら休んだで不安になるから、私自身、貧乏性なんだと思うんですよね。あと、占いで「マグロ」っていわれたので。マグロって止まると死んじゃうじゃないですか。「あなたはマグロだから、止まらない方がいいわよ」っていわれて、行けるところまで泳ぎ続けようかなと。
――今回のアルバムにも収録されている「PLAYBACK」「What You Want」など、最近のシングル曲はダンサブルなナンバーが多いですが、その理由は?
私、もともとはアップテンポのものが好きだったり、クラブミュージックが好きで(デビュー前に)ニューヨークに行ったというのもあって。バラードばかり歌っていると、イメージが“大人の女性”みたいなところにいってしまって、でも私自身は、年齢は大人ですけど、全くもって大きな子供の“オドモ”なので、全然落ち着いてもいないし。悲しい経験もたくさんあるから、バラードで切々と悲しい曲を歌うのもアリだけれど、もっと素の自分に近いところを皆さんに知っていただけたらうれしいなっていう気持ちがあって、昨年の「Hot Stuff」という曲から、そういう方向にちょっとシフトチェンジしつつ、というこの1年間で。
とはいえ「PLAYBACK」を出す時はちょっとドキドキしたんですね。真夏を楽しむ曲で、たぶん世の中的に夏のイメージもそんなに(自分に)ないだろうし、「(詞の中で)“bikini(ビキニ)”なんていってどうしちゃったんだ」って思われないかなとか(笑い)。ただ、私は夏も大好きで海も行くし、サーフィン三昧していた時期もあって、今でもそうしていたいっていう気持ちがあるんですね。とはいうものの、大丈夫かなと思ってリリースしてみたら、ものすごくいろんな方に楽しんでいただけて、「ならば」と思って調子づいて作ったのが今回のアルバムなんです。私が好きなディスコっぽい曲や80’sのキラキラした感じの曲、とにかく楽しくなって体が動くようなものを新録曲では多めに入れようというのはありました。
――曲調とは別に、アルバムとしてのテーマはあったんですか。
大人だからいろんなしがらみがあって「これはしちゃいけない」「ガマンしなきゃ」とかって考えてるせいで縮こまってる部分って自分にもあるし、それをもうそろそろ解放したいなって思ったんですよね。タイトルの「WHAT YOU WANT」も、自分が欲しいものに対して、大人ぶらずに貪欲になれたらいいな、そういう大人がもっと増えてもいいんじゃないかなって思ったので。いろんな意味の“欲しいもの”……人の心が欲しかったり、そういう状況が欲しかったり、別れを望んでそれを欲することもあるし。それを欲して手にしては、自分のチョイスで物語が始まったり終わったりするわけで、その“欲しいもの”にフォーカスを当てた曲たちです。
――リスナー目線では、足を踏み入れたくてもなかなかできない大人の恋愛や、恋の駆け引きが描かれていますね。
恋はスリリングであってほしいっていう。自分はそんなに分かりやすく駆け引きを仕掛けるタイプでもないので、こんな強気な女性になってみたいなって。あと、ままならない(恋や思いを描いた)世界観というのは、お家芸じゃないですけど、軸としてないといけないから、「予感」という曲があったり、この年になったからこそ、自分を殺してでもその人の何かを信じたいっていう気持ちが分かるようになるから、「君がついた嘘なら」という曲があったり。私のアルバムって1枚目からずっと物語になっていて、一人の女性に起こり得るいろんなことがつむがれているので、「予感」のところは、その人がまた、ままらない恋に落ちた状態なんです。
――アルバムの主人公のように、JUJUさんも年月を重ねてきて、恋愛観や好きな男性のタイプって変わってきましたか。
変わってないかもしれないですね。追いかけられるよりも追いかけている方が向いているっていう、一生幸せになれないパターン(笑い)。結婚には向かないんだろうなって。さらに「あなたマグロよ」っていった占師に「一生結婚しないわね」っていわれちゃったので……。好みのタイプは、いい意味で身勝手な人、端的にいうと「ろくでなし」ですかね(笑い)。キレイにいうと「絶対に誰にも譲れない確固たる自信とスタイルがある人」が好きで、そこにルビを振るなら「ろくでなし」。「こっちのことも尊重してよ。自分のことばっかり」っていう。でも、私はそういう人でちょうどいいんだと思います。
――なるほど。それでは最後に、アルバムタイトルの意味が“欲しいもの”ということで、今作で得たものと、プライベートで“欲しいもの”を教えてください。
私の目標の一つに、クラブミュージックだけに特化したアルバムを作るっていうのがありまして、そこに行く足がかりができたなって。あと、プライベートで欲しいものは、“考え過ぎない毎日”。最近は発達しすぎたSNSのせいで、どこで何を書かれるか分からないと思うと、どこにも行けなくなる……っていうことからも解放されたいからこのアルバムを作ったんです。そんなことを考えても、自分が思うほど誰も(自分のことをSNSに)書かないよと思って。いろんなことにとらわれず、今を楽しむっていうことを一番したいです。
<プロフィル>
2004年にシングル「光の中へ」でデビュー。06年、ブレークのきっかけにもなった3枚目のシングル「奇跡を望むなら…」をリリース。JUJUさんが初めてハマったマンガは、小学生の頃から読んでいる「一休さん」。「時代モノが昔からすごく好きで、時代劇とかを見るのも好きな子供だったんです。一休さんの賢さや、桔梗屋(利兵エ)の意地悪にもちゃんと耐えたりとか(が好きで)。あと、シンプルな大切さを教えてくれて、子供ながらに、生きる知恵をくれるマンガだなあと。すごく好きでした。DVDのボックスセットも持っています」と話した。
(インタビュー・文・撮影:水白京)