ワンピース エッグヘッド編
第1154話 秘策の真相 ベガパンクの勝利宣言
12月21日(日)放送分
話題のマンガの魅力を担当編集が語る「マンガ質問状」。今回は「マンガ大賞」にもノミネートされた野田サトルさんの「ゴールデンカムイ」です。「ヤングジャンプ」(集英社)の大熊八甲(はっこう)さんに作品の魅力を聞きました。
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--この作品の魅力は?
この作品をお伝えしやすく料理に例えるなら“寄せ鍋”。アイヌ料理でいうとオハウ(汁物)でしょうか。この料理(作品)を彩る食材(魅力)は、血湧き肉躍る「冒険」、ロマンあふれる「歴史」、人類最大の欲求=食欲を満たす「狩猟グルメ」、知識欲を満たし畏敬の念を抱かせる「アイヌ文化」などなど、たくさんあります。
そして、これらは一つでもメインをはれる強い食材ですが、全部入れているのに破綻しない。殺し合わない。それどころか相乗効果で見事に引き立てあっている。これはひとえに野田サトルという料理人の腕が達者だからです。つまり、この作品の最大の魅力とは、さまざまな種類、かつ引き立て合う“魅力の全部入り”にあると思います。何がでるか分からないという点も魅力だとすればおいしい闇鍋と言えるかもしれません(笑い)。
--作品が生まれたきっかけは?
新作の相談していた際に、弊社文庫編集部の同期に「何か面白いネタはないか」と何冊か文庫を借りにいきました。前作連載開始時からずっと担当しているので、野田先生の考え方や好みのジャンルなど、引き出しはある程度、わかってはいたので、いくつかアタリをつけて参考にしようと思っていました。そこで「これは面白そうだな」と思った(狩猟モノの)一冊の主人公の名前が、偶然にも野田先生の前作「スピナマラダ!」の主要キャラと同姓だったんです。
野田先生は、そういった“きっかけ”を大切にする方です(前作をアイスホッケーモノに決めたときにもそういった“きっかけ”がありました)。そこで狩猟ジャンルで行くことを決め、ご自身が好きなモノ(出身地・北海道、ミリタリーなどなど)を全部入れて作品が生まれました。“きっかけ”と言うならキャラクターの名前ですね。
--舞台となる世界の設定が細やかに描写されていますが、どうやって調べていますか。
この作品がこれほどの時代再現度と情報量で世界を構築できているのは、野田先生の“行動力”と“咀嚼(そしゃく)力”の賜物(たまもの)だと思います。具体的には取材です。野田先生はどこでも、1人でも、どんどん行動します。どんどん写真を撮り、話を聞き、体験します。
印象的だったのは「マンガ家はとにかく“見る”力が大切です。“描く”ことは“見る”ことです」という言葉です。残念ながら週刊連載が開始してからは締め切りがあるのでなかなか取材に行くことができませんが、それは担当がカバーします。そして、文献・資料です。コミックスの最後にある参考文献に載せている書名は、ほんの一部です(すべては載せきれないので)。野田先生はそれらの膨大な活字情報量を咀嚼して、糧として原稿に落とし込むことができるのです。
また、アイヌ語監修の中川裕先生をはじめとするさまざまな関係者の方々が、とても真摯(しんし)にご協力してくださることがとても大きいですね。
--ヒロイン・アシ(リ)パのモデルはいるのでしょうか。
モデルはいません。ただ、名前の候補はいくつかありました。この名前は「新年」という意味なのですが、アイヌ語監修の中川先生に「未来」と解釈することもあり得たとうかがいました。作中の時代背景が激動期だったことも踏まえ、新しい時代を切り開くキャラクターになってほしいと願いを込めてこの名前になりました。現在では、名は体を表すような娘に育ち過ぎてくれたようで、本当によかったです(笑い)。
--編集者として作品を担当して、今だから笑えるけれど当時は大変だった……、もしくはクスッとしたナイショのエピソードを教えてください。
ほとんど前向きな苦労なので……。あったかもしれませんが、「面白いね」「スゴイね」といっていただけるたびに、ツイッターでエゴサーチをするたびに(笑い)、重版がかかるたびにだいたい忘れます。ただ、もっともっと広がってよい作品だと思うので……。
大熊「まだ満足してないですよね?」
野田先生「当然です」
そう、よく言い合ってます(笑い)。なので欲しがり続けている“苦労”はあるかもしれません。
--今後の展開は?
未来や宇宙に行きます……というような展開はないのですが、旭川第7師団本部や網走監獄、北海道全土、果ては樺太まで(!?)、杉元一行は、さまざまな地を旅して食べたり、生きたり、はいだりします。また、季節も変わると自然も動物も文化風土も変わります。新しい景色をぜひご期待ください。
--読者へ一言お願いします。
いつも、応援いただきありがとうございます。この作品のジャンルは、冒険、歴史、グルメ、ギャグ、ご自身が引っかかったお好きなジャンルの作品だと思って下さい。100人いれば100通りの読み方で自由に楽しんでいただけたらこの上なく幸せです。キャラクターも野田先生も(担当も)命を削って生きています。ぜひ引き続きよろしくお願いいたします。
週刊ヤングジャンプ編集部 大熊八甲
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