俳優の阿部寛さんが5日、名古屋市内で映画「海よりもまだ深く」(是枝裕和監督、21日公開)の会見を行った。同作が、思い描いた人生とは異なる道を生きる人々の姿を描いていることから「なりたかった大人になれたか」と聞かれると「なれてはいないけど、こういう仕事をやらせてもらえて、すごく幸せ。若いときに見た50(代)の俳優さんは、すごく大人に見えた。そこには全然……。(自分は)小学生、中学生の自分もまだ残っていて、思い描いた50(代)ではないですね」と笑顔で語った。
あなたにオススメ
“あの頃”のジャンプ:実写ドラマ化も話題「ウイングマン」 1983年を振り返る
会見には是枝監督も出席。同じ質問に是枝監督は「なりたかった大人にはなれていないです。今の仕事が嫌いかと言われるとそんなことはないですが、子供の頃、映画監督になりたかったわけではないので。だいたいみんな、なりたかったものじゃないところに流れ着く。それをどう受け止めるかですよね」と話した。
映画は、妻に愛想を尽かされ、一人息子の養育費も払えない、自称作家のダメ男、良多(阿部さん)が主人公。ある日、良多の母(樹木希林さん)の家に集まった良多と、別れた元妻の響子(真木よう子さん)と息子が、台風のために帰れなくなり、一晩をともにすることになる……という物語。阿部さんは是枝監督作品で3度目の主演。良多という名前のキャラクターを演じるのも3度目で。良多には是枝監督自身が投影されているという。
是枝監督は、20代の記者から「なりたいものになれなかった大人への応援作か」と聞かれると「応援というほど、前向きじゃないかも。20代だとそう思うかもしれないし、受け取る人のもの」といい、「(主人公は映画の後も)何一つ変わらず、成長しないかもしれない。非常に漠然としているけど、『台風が来た翌朝の団地はきれいだね』という“読後感”をもってもらえれば」と話した。