ジョジョの奇妙な冒険:第4部は「日常系」なのか

アニメ「ジョジョの奇妙な冒険 ダイヤモンドは砕けない」のビジュアル(C)LUCKY LAND COMMUNICATIONS/集英社・ジョジョの奇妙な冒険DU製作委員会
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アニメ「ジョジョの奇妙な冒険 ダイヤモンドは砕けない」のビジュアル(C)LUCKY LAND COMMUNICATIONS/集英社・ジョジョの奇妙な冒険DU製作委員会

 アニメでも人気の「ジョジョの奇妙な冒険」。現在放送中の第4部「ダイヤモンドは砕けない」は、数あるシリーズの中でも一二を争う人気のシリーズだが、週に約100本(再放送含む)のアニメを視聴する“オタレント”の小新井涼さんが独自の視点でその魅力を解説する。

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 「ジョジョの第4部は日常系です」。

 と聞いて、おそらくアニメを見ている人は、いや見ていない人でさえ「そんなわけないだろ!」というツッコミの気持ちがめばえたのではないでしょうか。

そうですよね、私もそう思います。「ジョジョの奇妙な冒険」という名前を冠した時点で、その作品はいわゆる“日常系アニメ”にはなり得ません。

 しかしそれを心得たうえで、誤解を恐れずもう一度言います。「ジョジョ第4部は日常系です」。ただしそれはもちろん、“普通の日常系”ではありません。

 内心では否定しつつも、“第4部”、“日常”と聞くと作品をご存じの皆さんには何かしら思い当たる節があるのではないでしょうか。本来日常系アニメとは180度真逆に位置するのが「ジョジョ」ですが、その中でどこか日常性を感じてしまうのがこの第4部。その一番の要素は、第3部までは世界各地で展開してきた物語の舞台が、「杜王町」というひとつの町に限定されている点だと思います。

 これまでは壮大なロードムービーをどこか俯瞰(ふかん)で眺めていたのが、第4部で舞台がM県S市杜王町という“日本のどこかにありそうな町”に収束されることで、そこで描かれる主人公・仗助たちの日常や学校生活が、視聴者である私たちの目線の高さにグッと近づくのです。

 そしてそこで重要なのは、そのことが決して作品世界のスケールダウンなどではないこと。ローカルラジオが流れ、毎日牛乳が配達され、テレビゲームをしたり、夜勤終わりの一杯を楽しみにしたりする……。杜王町で展開されるそんな“日常”は、その後に起こる事件の“非日常性”を増幅させるトリガーとなるのです。

 「隣近所に殺人鬼が潜んでいるかもしれない」どころか、先ほどまで普通に使っていたラジオやテレビのプラグから、配達された牛乳から、口をつけたウイスキー瓶から、殺人鬼がいつでもこちらの命を狙っている……。そんな“日常生活に潜む超異常性”を持つ事件がこの杜王町では次々に起きていきます。

 その落差の激しいギャップは言うなればまさに奇妙。ジョジョにとって欠かせないその要素を、杜王町の持つ“日常性”が強調しているのです。

 しかしその一方で、どんなに日常性が強まってもジョジョが決して“日常系アニメ”にはなり得ない“絶対的な非日常性”というものが存在します。言わずもがな、“スタンド能力”です。

 少し乱暴ですが、簡単に説明すると“目に見える超能力”のようなこの力。その前の第3部でも命がけの超人的なバトルを次々引き起こし、世界の命運をも巻き込んだ深刻な事態に物語を発展させるなど、まさにジョジョの世界観を非日常的たらしめてきた要素です。

 しかしこの第4部では、そんな限りなく非日常的なスタンド能力にまでも、日常性を感じてしまう瞬間があります。その原因となるのが、第4部がもつ、“学園モノ”要素です。

 仗助たちの通う高校の生徒や関係者であるスタンド使いたちのモチベーションは、世界征服でも重犯罪でもなく、割と身近なゆすりやひがみ、恋愛というもの。どこか憎めない小悪党のような彼らから生まれたスタンドも、殺傷性はありこそすれ、戦闘能力というよりは“少し不思議な力”に近く、どこか親近感すら湧いてしまう能力です。

 「一歩間違えれば命はない戦い」という緊張感は今までと変わらないのに、どこかそのバトルにほほ笑ましさも感じてしまう。それはそんなスタンド使いたちが、どこまでも非日常的であるはずのスタンドバトルに、“後輩をゆするOB”や“恋に燃えるクラスの美女”“モテる同級生をひがむオタク”など、どこか学園モノ的な、なじみあるエッセンスを与えてくれているからではないでしょうか。

 杜王町に見られる“日常性に潜む非日常性”、そして4部のスタンド使いたちに見られる“非日常的な要素の中の日常的要素”という、互いに相反する特徴。それらを踏まえた上でもう一度冒頭の言葉に立ち戻り、改めて「ジョジョ第4部の日常系とは『非日常的日常系』である!」と、提唱したいと思います。

 あくまでも個人的な見解ではありますが、だまされたと思って一度、第4部の1クール目を試食してみてください。「例えるならサイモンとガーファンクルのデュエット! ウッチャンに対するナンチャン! 高森朝雄の原作に対するちばてつやの“あしたのジョー”!」(作中の虹村億泰の有名なせりふより引用)ともいえる非日常と日常の“ハーモニー”がきっと味わえるはずです。

 ◇プロフィル

 こあらい・りょう=埼玉県生まれ、明治大学情報コミュニケーション学部卒。アニメ好きのオタクなタレント「オタレント」として活動し、ニコニコ生放送「岩崎夏海のハックルテレビ」やユーストリーム「あにみー」などに出演する傍ら、毎週約100本(再放送含む)のアニメを見て、全番組の感想をブログに掲載する活動を約2年前から継続。「埼玉県アニメの聖地化プロジェクト会議」のアドバイザーなども務めており、社会学の観点からアニメについて考察、研究している。

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