ドラゴンボールDAIMA
第10話 ウナバラ
12月16日(月)放送分
米女優スカーレット・ヨハンソンさん主演の映画「ゴースト・イン・ザ・シェル」(ルパート・サンダース監督)が全国で公開中だ。今作は、士郎正宗さんのマンガを押井守監督がアニメ化した劇場版アニメ「GHOST IN THE SHELL/攻殻機動隊」(1995年)をハリウッドが実写化したSFアクション作だ。映画のPRのために来日したバトー役のデンマーク人俳優ピルー・アスベックさんが、「攻殻機動隊」の世界観について語った。
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「(原作が初めて発表された)89年に、すでに士郎正宗さんには、われわれの世界の未来が見えていた。それは本当にすごいことだと思います。僕は彼を“予言者”と呼びたい」と切り出したアスベックさん。押井監督による「GHOST IN THE SHELL/攻殻機動隊」と、バトーを主人公にしたアニメ映画「イノセンス」(2004年)については、「未来はこうあるんだということを見せてくれるアイコン的作品」と称賛を惜しまない。
とはいえ、原作マンガもアニメも、その世界観は哲学的かつ精神性に満ちており、一度見ただけではなかなか理解し難い。アスベックさんもそれを認め、オリジナルの劇場版アニメは「少なくとも50回は見た」と打ち明ける。そして、「こういう、もしかしたら分からないかも、と思ったストーリーの場合は、分からないことを受け入れるしかないと思っている。だって、僕らが今、なぜここにいるのかさえ分からないんだから。分からないなりに、この状態を、あるいは人生を、よりよくしようとするしかないわけだからね」と達観したところを見せる。
その上で、今回の「ゴースト・イン・ザ・シェル」について、「僕がいいなと思っているところは、1980年代に流行したサイバーパンクを結構取り入れているところだ。80年代風の音楽がかかっていたり、洋服に肩パッドが入っていたり、バトーも四角い体形だしね。それはすべて、作品が80年代に生まれたということで、士郎さんへのオマージュと、僕らなりのタッチを加えた結果なんだ」と話す。
「日本文化はもともと大好き」というアスベックさん。アスベックさんの故郷デンマークで、最も触れることができる日本文化は映画だそうだ。「日本映画は僕にとってはすごく哲学的で、観客から何かを求める、そういう作品だと感じる。常にアイデンティティーを巡る話であったり、復讐(ふくしゅう)の話であったり。でも、決してそれを声高にいうのではない。たけしさん(北野武監督)の『座頭市』(2003年)もそういう話だったと思う」と語る。
だからこそ、今回の「ゴースト・イン・ザ・シェル」が、世界でどう見られるかに興味があるという。「だって、これは日本の物語を米国的に脚色した作品。米国映画というと、より大きなアクションを期待するところがあるよね。対して日本の作品は、すべてのディテールにちょっとした機微を感じさせるように描かれている。その差が(世界の人々に)どういうふうに映るか楽しみなんだ」と期待を寄せる。
日本文化に対する思いを語るうちに、歯止めが利かなくなった様子のアスベックさんは、ついには「(日本の)皆さんは、世界でどのくらい日本文化が人気を博しているか自覚しているのかな?」と問いかけた上で、「僕は本当に日本の文化をリスペクトしているんだ。だって、欧州や米国に強い男性キャラクターしかいなかった中で、強い女性キャラクターを最初に生み出したのは日本なんだからね」と力を込める。さらに、「宮崎駿監督の作品、ジブリ作品は大好きで全部見ている」と続け、話題はアスベックさんの娘にまで及んだ。
「4歳の娘が、『もののけ姫』(1997年)が大好きで、ハロウィーンでも彼女はもののけ姫の扮装(ふんそう)をしたんだ」と、スマホを取り出し、そのときの画像を見せてくれた。そして、「娘にとってみれば、もののけ姫は“森の中でオオカミや精霊に乗って駆けることができる少女”であって、多層構造の、この物語のすべてを理解していないとは思う。だけど、デンマーク版のハロウィーンで、そういう仮装をしたいと思うほど思い入れがある。製作から20年もたった作品が、ほかの国の4歳の女の子にそこまで愛されるというのは、やっぱり、ストーリーと日本文化の力だと思うんだ」と熱く語った。映画「ゴースト・イン・ザ・シェル」は全国で公開中。
<プロフィル>
1982年生まれ、デンマーク出身。デンマークの政治ドラマ「コペンハーゲン/首相の決断」(2010~13年)や、「ボルジア家 愛と欲望の教皇一族」(11~13年)の最終シーズンなどに出演。また、米HBOの人気シリーズ「ゲーム・オブ・スローンズ」(11年~)に第6シーズンから出演している。映画出演作に「LUCY/ルーシー」(14年)、「ある戦争」(15年)などがある。
(インタビュー・文・撮影/りんたいこ)
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