アニメ質問状:「フルーツバスケット」 原作者とやり取りを密に 結末から逆算も

アニメ「フルーツバスケット」の一場面(C)高屋奈月・白泉社/フルーツバスケット製作委員会
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アニメ「フルーツバスケット」の一場面(C)高屋奈月・白泉社/フルーツバスケット製作委員会

 話題のアニメの魅力をクリエーターに聞く「アニメ質問状」。今回は、 高屋奈月さんの人気少女マンガが原作のテレビアニメ「フルーツバスケット」です。トムス・エンタテインメントの伊藤元気プロデューサーに作品の魅力を語ってもらいました。

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 --作品の概要と魅力は?

 言わずと知れた少女マンガの名作、高屋奈月先生の「フルーツバスケット」が原作となります。母親を交通事故で亡くし、一人テント暮らしをしていた本田透が、ひょんなことから草摩紫呉(そうま・しぐれ)、由希(ゆき)、夾(きょう)と共同生活することになります。彼らは十二支の物の怪(もののけ)の呪いのために、異性に抱きつかれると動物に変身してしまう不思議な体質。十二支の仲間たちを中心に、個性的なキャラクターに囲まれてにぎやかで楽しく、ドタバタの毎日が繰り広げられます。

 しかし、そんな生活の中で、彼らの抱える闇に気づきはじめる透。互いに心を通わせ、闇を照らすように明かりをともす温かい物語が作品の魅力です。ホームコメディーの心地よさもあり、でも扱っているテーマが、いじめや親とのわだかまり、友達との関わり合いなど、時代を問わずティーンが抱えている悩みを等身大で描いているのも特徴だと思います。

 --アニメにするときに心がけたことは?

 一度アニメ化されていること、また高屋奈月先生のご意向もあり、「新しいフルーツバスケット」にすることを目指しました。スタッフやキャストを一新することはもちろん、キャラクターデザインや美術背景、画づくりを現代向けにしつつ、一方で高屋奈月先生とのやり取りを密にして、原作の名言、名シーンを大切にすること、作品に愛情を傾けることを第一に心がけました。また原作が完結していることを生かし、結末から逆算してそのせりふ、表情、シーン、エピソードが最大限の効果を持つように再構成する、という狙いを持って取り組んでいます。

 --作品を作る上でうれしかったこと、逆に大変だったことは?

 高屋奈月先生にごあいさつをして作品制作に取りかかった時期から放送に至るまでの時間が長すぎたため、実際にテレビで映像が流れた瞬間はうれしかったです。特にいつ放送されるのか正式決定がされないまま制作を続けていた時期は「まさかお蔵入りに」と心配になっていたので……。

 また、映像が徐々に形になり、キャストさんの声が入り、効果音、音楽が乗った時、「本当にいい物語だな」と実感できたことが励みになりました。音楽の横山克さんに作曲していただき、作品の雰囲気に合うウタ・アリィさんに歌っていただいた挿入歌が満を持して作中に流れた時も感動しました。大変だったことは、取材活動です。なかなか理想の場所が見つからず、毎週のように重いカメラを持って駆けずり回ったことがつらかったです。

 --今後の見どころを教えてください。

 透の前に次々と現れる、一癖も二癖もある十二支のキャラクターと、お騒がせなエピソードが見どころだと思います。同時に、異性に抱きつかれると動物に変身する、というものではなく、本当の意味での草摩家の秘密、呪いも明らかになっていきます。透がその暗く深い闇にどのように関わっていくのか、彼女の母親譲りのいちずで優しい気持ちがどんなふうに草摩家の凍りついた心を氷解していくのか、その言動すべてに注目してほしいです。アフレコで作品とキャラクターに入り込みすぎて本当に泣き出してしまった石見舞菜香さんの素晴らしいお芝居も楽しみにしてもらえればと思います。

 --ファンへ一言お願いします。

 キャラクターデザインや美術設定、シナリオ、絵コンテはもちろん、キャスティングや色味に至るまで高屋奈月先生にご確認していただき、アフレコにも可能な限りご参加いただけているので、原作ファンの方々にもきっと納得いただける内容になっていると思います。期待の高い作品だと思いますし、その分プレッシャーも大きいですが、井端義秀監督はじめスタッフが魂を込めて制作しておりますので、ぜひご覧いただけるとうれしいです。

トムス・エンタテインメント 制作本部 制作8班 アニメーションプロデューサー 伊藤元気

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