ドラゴンボールDAIMA
第10話 ウナバラ
12月16日(月)放送分
女子高生がアニメ制作に打ち込む姿を描いた大童澄瞳(おおわら・すみと)さんのマンガが原作のテレビアニメ「映像研には手を出すな!」(NHK総合)。本作で「アニメは設定が命」と持論を展開するアニメ好きの女子高生・浅草みどりの声優を務めるのが女優・伊藤沙莉さんだ。近年、出演作が途切れることがなく、いまや飛ぶ鳥を落とす勢いの伊藤さんだが、アニメ声優としても実力を発揮し、高い評価を得ている。
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伊藤さんは、過去にイルミネーション・エンターテインメントが手掛けた劇場版アニメ「ペット2」(2019年公開)でシーズー犬のデイジーの声を担当。そのときの会見で「ずっとアニメの仕事をしたいと思っていたけれど、声がかからないと思っていた」と喜びを口にしていたが、2年連続で“声の仕事”を射止めた。
伊藤さんといえば、子役として活動を開始し、これまで数々の作品に出演してきた経験豊富な女優だが、自身も以前のインタビューで「まず声で覚えてくれる人が多かった」と語っていたように、ファニーフェースからは想像できないハスキーボイスが大きな特徴として挙げられるだろう。
本人も「いまはすごくありがたい特徴」と述べていたが、その特徴的な声を考えると、女子高生の声にはどうなんだろう……という考えが一瞬頭の中をよぎった。しかし、伊藤さんの声は見事なまでに、浅草みどり(以下・浅草氏)いう女の子にマッチしている。それは浅草氏と伊藤さんに共通点があるからなのかもしれない。
浅草氏は、好きなアニメに関することに対しては一心不乱に話す熱量がありつつも、基本的には人とのコミュニケーションが苦手な女の子。人と話すときは、常に本来の自分を隠して、違うキャラクターを演じているような部分が感じられる。
伊藤さん自身、以前のインタビューで、バラエティー番組などでも軽快なトークを披露し、優秀なユーティリティープレーヤーぶりを発揮していることを称賛すると、「めちゃくちゃメンタルが弱くていつも吐きそうなんです」と発言し、「期待されることに応えようと演じてしまうところがある」と話していたが、対人関係において、本来の自分を隠して演じてしまうところがある浅草氏というキャラクターに共感できる部分が多いのでは……と感じた。
普通の芝居とアニメの声優の“演じること”の違いについて伊藤さんは、「普通のお芝居は大きめのリアクションを提示してから引いていくけれど、声のお仕事は足し算」と表現していた。確かに技術的な違いは多々あるだろうが、キャラクターをしっかり理解することは共に大切なことだろう。その意味で、浅草氏をしっかり手の内に入れているように感じられる。
もともと演技力には定評がある。以前は癖の強い役柄を演じることも多かったが、近年は役柄の幅が広がった。その中でも、立体的なキャラクターを演じ、視聴者を共感させる芝居は絶品だ。代表的なものは、TBS系の日曜劇場「この世界の片隅に」(2018年)で、松坂桃李さん演じる北条周作の幼なじみ・刈谷幸子や、NHK連続テレビ小説「ひよっこ」(2017年)の米屋の娘・安倍米子など。両キャラクターとも、意地悪な部分はあるが、その実は心優しい部分があり、端々から漏れ出てくる憎めないキャラクターを見事に演じ切り好感度の高い女性に仕上げた。
俳優がアニメーションの声を担当することには、常に賛否が付きまとうが、本作での伊藤さんを見ていると、演技という技術的なものはもちろんだが、役への理解度や親和性というものが大切なのではないかと痛感させられる。(磯部正和/フリーライター)
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