ドラゴンボールDAIMA
第6話 イナヅマ
11月18日(月)放送分
人気アニメ「エヴァンゲリオン」シリーズの好きなキャラクター、エヴァ、使徒、セリフに投票するNHKの企画「全エヴァンゲリオン大投票」の結果が、5月16日放送の特番「発表!全エヴァンゲリオン大投票」(NHK・BSプレミアム)で発表されました。その結果、キャラクター部門の1位が式波・アスカ・ラングレーであり、3位は綾波レイ。初代テレビシリーズ以来、実に約25年もの間、ダブルヒロインとされていた二人ですが、少なくとも1990年代後半~2000年代初めのアニメ情報誌では綾波トップの座は揺るがず、エヴァ特集では常に表紙を飾っていたもの。それだけに、長年のファンの間には「綾波とアスカ人気が逆転した!」と衝撃が走りました。なぜ、逆転したのか……。分析してみました。(多根清史/アニメ批評家)
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今回の結果に対する反応はさまざまあり、その一つはNHKのまとめ方が「雑」なために信頼性が低いという指摘です。確かにテレビ版や旧劇場版での「式波」にあたる「惣流」のキャラクターは投票さえできず、綾波の最大の特徴でもある「一人目」「二人目」「三人目」などの区別もない。
しかし、そうした要素は誤差でしかない可能性が高いのです。なぜなら、2010年代から「綾波よりアスカ」の逆転現象は数々の人気投票で見受けられており、その流れは今回の結果に先んじて「EVANGELION STORE」で実施された「エヴァストア13周年大総選挙」(結果発表は2019年2月)でも可視化されていたからです。こちらは新劇場版に限られていますが、それだけにキャラ区分は「『序』の綾波」など精度が高めです。とっくにアスカ人気は綾波を抜いていたかもしれないわけです。
第二の分析は、時代の変化です。テレビ版から既に25年近くが経過し、時代の変化には勝てないというところですね。筆者の考えでは、こちらは半分当たっており、半分は事態の本質を捉え損ねていると思います。なぜ綾波が長らく人気トップを守っていたのか。それは「無表情キャラ」というカテゴリーを確立するほどの、強烈な斬新さのおかげが大きいでしょう。
綾波以前にも「銀河鉄道999」のメーテルなど、めったに感情を表に出さないキャラクターはいました。しかし、綾波登場以降は「機動戦艦ナデシコ」のホシノ・ルリや「涼宮ハルヒ」シリーズの長門有希などが同じ「無表情」カテゴライズされるキャラクターが多くなった。後追いしたというのではなく、視聴者の認識の枠組みが変わったということです。
それ以前と綾波の「無表情」が違うのは、設定やドラマと密接に結びついている点です。人に作られしクローンながら、傲岸な碇ゲンドウが手のヤケドも気にせず救い出すほど大切にしており、彼女もゲンドウの「割れたメガネ」を宝物にしている。シンジには最初は裸を見られても気にしなかったが、しだいに人間性に目覚めていく……。そうした多彩なドラマがある一方で、彼女の秘密が明かされることは、物語の核心に迫ることでもあり、それらを総合して「新しいキャラクター」でした。
とはいえ、新しさはいつかは風化していきます。秘密に彩られた無表情は「萌え」と同じように、マネするという意識さえなく「人気の要素の一つ」として広く取り入れられ、拡散していった。今や綾波の遺伝子はあらゆる創作物に何かしらの形で行き渡り、「特別な存在」ではなくなった。それこそが綾波が成功したキャラクターということでもあります。
もう一つは、新劇場版におけるアスカというキャラクターの変化です。明るい髪の色、勝ち気で尊大で人を見下しがち。しかし、心を開くと、徐々に焼きもちを焼いたり可愛いところを見せる、いわゆる「ツンデレ」という特性は、一見して過去の「惣流」と何ら違いはないようにも思えます。
しかし、旧作ではあれほど執着していた加持リョウジとは接点さえもない。エヴァ3号機の起動実験中に「そっか、笑えるんだ」といっていたことから悲惨な過去もうかがえますが、特に悲劇性が強調されているわけでもありません。旧劇場版での「惣流」は「あんたが全部私のものにならないなら私何もいらない」とヤンデレともいえるこじらせた愛情を見せていましたが、そんな面倒くささはどこにもないのです。
新劇場版のアスカは、ひたすら「良いやつ」です。加持との縁がないから元恋人の葛城ミサトに反発することもなく、シンジにほのかな思いを抱きながらも綾波との仲を取り持とうとする。あげくシンジとゲンドウが食事会の日だと知って、わざわざ3号機の起動実験に志願して大変な目に遭っている。
無表情でも、ツンデレでもヤンデレでもなく、周りの人々との出会いに感謝して自ら貧乏くじを引く「良いやつ」。そんな式波・アスカ・ラングレーに投じられた票の数々は、「友達になりたい」がかなり含まれているのではないでしょうか。昔のようなアニメキャラへの恋愛感情から、「こんな子が身近にいて楽しく過ごせたらいいな」へのシフトが、もしかしたら最大の時代の変化かもしれません。
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