ドラゴンボールDAIMA
第6話 イナヅマ
11月18日(月)放送分
声優育成ゲームが原作のテレビアニメ「CUE!」。できたてホヤホヤの声優事務所AiRBLUE(エールブルー)に所属する個性豊かな声優の卵たちが、夢に向かって駆け出していく姿を描いている。六石陽菜役の内山悠里菜さんらメインキャラクターの声優の卵たちを演じるのも新人声優だ。新人だらけのアフレコの様子は? 声優が主人公ということもあり、アニメではアフレコ風景も描かれているが、実際のアフレコはどんなものだろうか? アニメを手がける片貝慎監督、ゲームの収録から約2年半にわたって声優の卵を見てきた音響監督のハマノカズゾウさんにアニメ制作、アフレコの裏側を聞いた。
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◇新人ばかりで大変? 仲間感、一体感も
ハマノさん ゲームの時、2年半くらい前から関わっていますが、間違いなくフレッシュです。
片貝監督 ゲームのテーマとも関わってくるのですが、キャラと声優の境遇がリンクしているところもあります。彼女たちには、今この瞬間しかないものが詰め込まれています。作品としてもそこを大事にしようとしています。
ハマノさん レギュラーでテレビアニメのアフレコは初めてという子が半分くらいですからね。とにかく全力なんです。そのフレッシュな感じがよくて、そこが作品に出ていると思います。
ハマノさん これが意外に大変じゃないんです。
片貝監督 コロナ禍ということもあり、チームごとに収録しています。いい意味で、自分の芝居に集中できていたようです。自分のもっているポテンシャルを出しやすい環境なのかもしれません。
ハマノさん リラックスしていますよ。ゲームからやっているので、仲間感もありますし、みんなで頑張ろう!という一体感があります。一般的に新人は、自分のことで精いっぱいになってしまい、自分のせりふに集中しすぎて、バランスが悪くなることもあります。慣れてくると、作品の中での役割を考えるようになるのですが。今回は、バランスが悪くなるようなことはなかったです。
片貝監督 新人さんは、作り込みすぎる傾向がありますよね。収録は、会話ですので、そこがうまくいかないことがあります。でも、今回はそういうことは少なかったですしね。
ハマノさん とんでもなく成長しました。ゲームの収録は一人ずつだったのですが、最初は、ノイズが入ってしまいますし、マイクの使い方も分かっていないし、基本的なダメ出しをしていましたが、アニメではそんなことはありませんでした。何よりも、自分の役をきちんと理解できるようになっていることが大きい。最初はブレていたところもあったけど、今は、キャラクターを確立しています。
片貝監督 どひゃー!となるのかな?と思ったら、そんなことがなかった。ハマノさんが鍛えてくださったので。
ハマノさん 最初はどひゃー!でしたけど(笑い)。彼女たちの努力の積み重ねですよ。
片貝監督 「うまくなったね!」とよく話をしていますよね。アフレコはお休み期間もあり、9カ月くらいでしたが、その中でもうまくなりました。素晴らしいですね。
ハマノさん 第1、2話の時、ディレクションで「会話をして!」と言ったことがあったけど、途中からそんなことはありませんでした。こんな芝居ができるようになるとは……。うれしいですね。
ハマノさん 「うますぎるからちょっとヘタにして」と言うことがありました。
片貝監督 新人は会話ができなかったり、キャラを読み切れなかったり、練習をしすぎて固くなってしまったりすることもあります。劇中にもそういうエピソードがあります。でも、できる子たちなんですよね。難しいことを要求しても対応してくれます。アニメでは、キャラクターたちが初めて出会います。「ゲームの距離感ではやらないでほしい」とお願いしましたが、それもすんなりやってくれましたし。
ハマノさん 第1、2話の初めまして感がなくてはいけないですしね。
片貝監督 例えば(赤川)千紗は、ガンガン言うキャラだけど「初めましての距離感で」とお願いしたり。そこもいい感じにやってくれました。うまいんですよね。
片貝監督 今回に限らずあることなんです。アニメ制作はライブ感があるものでして、役者のいい演技によって考え方が変わることもあります。いい刺激を受けることがあります。
片貝監督 実在するスタジオを参考に、CGでアフレコブースとコントロールルーム、ロビーを作っています。構造物としてリアルなんですよね。アレンジはしていますが。
ハマノさん 実際に録っているスタジオをCGにしているんです。
片貝監督 一番リアルなのはコントロールルームでの会話ですね。僕とハマノさんにとっては日常なんですが、キャストは知らない世界です。実際に、どういうやり取りが行われているのかは、キャストには聞こえません。ストーリー的にはリアルとファンタジーの中間ですが、あそこは生々しいですね。
ハマノさん ファンタジーなのは、アフレコ中に決めぜりふの前に、息を入れて気合を入れるところですね。息を入れるとノイズになってしまうので、実際はありません。でも、気合を入れた方が作品としては面白いので、ファンタジーとして入れています。
片貝監督 リアルだと静かですからね。盛り上げる意味でやっています。
ハマノさん モデルがいるんですか?
片貝監督 実はいます。某音響監督です。
ハマノさん 今はあそこまで厳しい方はなかなかいないですよね。
片貝監督 ただ、作品として厳しい目線の人が必要だったので、厳しくしました。彼女たちが緊張するような存在感を出したかった。ハマノさんは優しいですよ(笑い)。
ハマノさん 現場は、みんなで楽しんでいると「もっと面白くしたい!」となり、ポテンシャルを引き出せることがありますしね。新人は緊張していますし、音響監督にオッケーをもらうために頑張り始めて、視聴者のことを考えなくなる……ということもありますが、それはマズい。集中できるような環境を作るようにしています。
片貝監督 そんなにいいことばかりではないところも描いています。新人には苦しみもあり、そういう世界ではあるけど、いい意味でエールとして受け取っていただければ。楽ではないけど、すてきな世界として描こうとしています。
ハマノさん 華やかな世界に見えるかもしれませんが、一つ一つ積み重ねて成長することが大切です。壁もあり、壁を越えることで成長できます。壁に当たることを楽しんでほしいですね。壁があるから成長できるところもありますし。
片貝監督 そうですね。
ハマノさん 収録の最後の方は毎週のように泣いていました。
片貝監督 涙もろいおじさんたちがコントロールルームで泣いていました(笑い)。彼女たちの演技を聞くとウルッとくるんですよね。
ハマノさん 本人たちとキャラクターがシンクロして、いろいろな思いがこみ上げてきちゃってね。
片貝監督やハマノさんが話すように「CUE!」は、ファンタジーであり、リアルでもある。声優の卵、キャストが成長、躍動する姿をじっくり見てほしい。キャストとキャラクターがシンクロして、彼女たちを応援したくなるはずだ。