解説:「ガンダム」宇宙世紀という“大きな沼” “日5”放送の狙い 「水星の魔女」シーズン2に向けて

「機動戦士ガンダム 水星の魔女」のガンダム・エアリアル(改修型)の立像
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「機動戦士ガンダム 水星の魔女」のガンダム・エアリアル(改修型)の立像

 人気アニメ「ガンダム」シリーズの劇場版「機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ」、OVA(オリジナル・ビデオ・アニメ)「機動戦士ガンダム サンダーボルト」、劇場版「機動戦士ガンダムNT(ナラティブ)」がテレビエディションとして、1~3月にMBS・TBS系の日曜午後5時のアニメ枠“日5”で放送された。3作品はいずれも宇宙世紀を舞台としたアニメだ。3作が放送された毎週日曜は、関連するワードがSNSをにぎわすなどの大きな盛り上がりを見せた。“日5”で宇宙世紀作品を放送した狙いを解説する。

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 ◇新規ファンを開拓した「水星の魔女」

 “日5”は、土曜午後6時放送の“土6”が移動し、2008年4月に誕生した30分のアニメ枠で、「鋼の錬金術師 FULLMETAL ALCHEMIST」「宇宙戦艦ヤマト2199」「機動戦士ガンダム00」「機動戦士ガンダムAGE」「機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ」などが放送されてきたが、2017年4月の改編で一度終了した。2022年4月に復活し、「呪術廻戦」の第1期が再放送された。2022年10月~2023年1月には「ガンダム」シリーズの新作「機動戦士ガンダム 水星の魔女」のシーズン1が放送された。同枠で4月9日にスタートする「水星の魔女」のシーズン2の放送を前に、宇宙世紀作品が放送された。

 “日5”が復活したのは約5年ぶりで、「ガンダム」シリーズのテレビアニメシリーズの新作が放送されるのは、2015年10月に第1期がスタートした「機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ」以来、約7年ぶりだった。

 「ガンダム」シリーズの歴史は長い。富野由悠季監督が手掛けた第1作「機動戦士ガンダム(ファーストガンダム)」が放送されたのは1979年4月~1980年1月で、40年以上かけて広がり、進化しながら、幅広い世代に愛されている。この歴史がネックとなり、初心者には敷居が高く思えてしまうかもしれない。しかし、「水星の魔女」は、「ガンダム」のテレビアニメシリーズとしては初の女性主人公、学園を舞台とするなど新機軸を打ち出し、これまで同シリーズを見てこなかった新たなファンの開拓に成功した。

 「ガンダム」シリーズは、ファーストガンダムから続く宇宙世紀を舞台とした作品、“21世紀のファーストガンダム”とも呼ばれる「機動戦士ガンダムSEED」などの宇宙世紀以外が舞台の作品がある。「水星の魔女」は、A.S.(アド・ステラ)が舞台で、宇宙世紀作品ではない。“日5”で「閃光のハサウェイ」などを放送したのは、「水星の魔女」をきっかけに同シリーズに興味を持った人に向けて、40年以上にわたって広がり、深まってきた宇宙世紀作品に触れてもらうのが狙いだという。

 ◇3作のセレクトの理由

 “日5”で放送された3作品は、豪華クリエーターが生み出した名作ばかりではあるが、気になるのはセレクトの理由だ。「閃光のハサウェイ」は、1989~90年に富野監督が発表した小説をアニメ化、劇場版アニメ「虐殺器官」の村瀬修功さんが監督を務めた。2021年に公開され、興行収入が22億円を突破するなどヒットした。「NT」は、「機動戦士ガンダムUC」などの福井晴敏さんが脚本を担当した作品で、2018年に公開された。「サンダーボルト」は、「MOONLIGHT MILE」などで知られる太田垣康男さんのマンガをアニメ化した。「近年、最新技術で作られた作品」を選んで、“日5”で放送したという。

 「水星の魔女」で「ガンダム」シリーズに興味を持っても、膨大な作品群の中からどれを見たらいいのか?と悩む人もいるはずだ。ファーストガンダムから順番に見なければいけないというわけでもなく、どの作品から見ても楽しめる。入門編として「近年、最新技術で作られた作品」が選ばれたわけだ。

 ただ、その先には大きな沼が広がっている。“日5”をきっかけに宇宙世紀作品に興味を持った人は、さらに足を踏み入れてほしい。「水星の魔女」は“ガンダムらしい重さ”もある。沼にハマっていけば「水星の魔女」をより楽しめるはずだ。

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