名探偵コナン
#1146「汽笛の聞こえる古書店4」
12月21日(土)放送分
高橋留美子さんの人気マンガ「うる星やつら」の完全新作テレビアニメの第2期が、1月11日からフジテレビの深夜アニメ枠“ノイタミナ”ほかで放送される。新作は、同作を刊行する小学館の創業100周年を記念して、約36年ぶりにテレビアニメ化され、第1期が2022年10月~2023年3月に放送された。“昭和版”アニメで古川登志夫さんが演じた主人公・諸星あたる役を受け継いだのが、人気声優の神谷浩史さんだ。第1期の放送が始まると、神谷さんが演じるあたるは、ハマり役と話題になった。第2期の放送を前に、大役を受け継いだ神谷さんに「うる星やつら」への思いを聞いた。
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「うる星やつら」は、「めぞん一刻」や「らんま1/2」「犬夜叉」などでも知られる高橋さんの代表作の一つ。高橋さんは、1978年に「勝手なやつら」でデビューし、「うる星やつら」は1978~87年に「週刊少年サンデー」(小学館)で連載された。趣味はガールハントの高校生・諸星あたると、地球に来た鬼族の娘・ラムの日常が描かれた。新作テレビアニメは、原作のエピソードを選び抜き、全4クールでテレビアニメ化し、ラム役の上坂すみれさん、しのぶ役の内田真礼さん、面堂終太郎役の宮野真守さんら豪華声優が出演している。
第2期の放送を前に、ラム役の上坂さんを取材した際、神谷さんについて「るーみっくわーるどへの愛がすごいんです。先輩が一番貪欲で、楽しく、もっとあたるになりたい!という思いを全身で表現されていて、私も勇気づけられました」と語っていた。上坂さんは、先輩である神谷さんの姿を見て、大きなプレッシャーがある中で、楽しむことを大切にしようとしたという。とはいえ、大作ということもあり、神谷さんもプレッシャーがあったはずだ。
「もちろんプレッシャーはあります。だけど、せっかく自分が大好きだった作品に関われる機会に恵まれ、緊張感やプレッシャーに押しつぶされて、楽しめなかったら損だと思ったんです。僕としては、初代あたるを演じられていた古川登志夫さんに背中を押していただけたたことがやっぱり大きかったです」
古川さんは“昭和版”であたるを演じ、“令和版”ではあたるの父を演じている。神谷さんにとっては所属事務所の尊敬する先輩でもある。
「今回のアニメは、シークレットで計画が進んでいたため、役に決まった情報を開示できなかったのですが、古川さんは、あたるの父役に決まっていましたし、報告する許可をいただき、食事会を催してくださったんです。その会に向かう時、すごく緊張しました。緊張して、僕は何をしゃべったかも覚えていないんですけど、同じ事務所の先輩で、尊敬していますし、僕が大好きだった作品に関わっていらっしゃった方なので、誰かがやるんだったら、僕が絶対にやりたい!という思いがありました。古川さんが背中を押してくれましたし、キャストの一人一人がすごく楽しそうにやっているのを見て、これは楽しまなきゃ損だな……となって。緊張、プレッシャーもありましたが、好きだという気持ちが勝ったんです」
神谷さんの言葉からは、高橋留美子作品、古川さんへの大きな愛を感じる。
「留美子先生の作品がやっぱり大好きなんです。僕の中学、高校の時は、ほとんど高橋留美子でできていたと言っても過言ではない。留美子先生にもお伝えしたのですが、僕にとってのマンガは、高橋留美子か留美子じゃないか……というくらい大きかった。なおかつ一番好きな『うる星やつら』に関われるなんて、そんな機会に恵まれていいのだろうか!? 声優になって幸せだな……と思いながらスタジオに通っていました」
高橋さんと実際に会う機会もあったといい、「一番うれしかったですよ」と笑顔を見せる。
「すみぺ(上坂さん)と編集の担当の方と一緒に会食の機会をいただき、いかにどれだけ僕が留美子先生を好きかということを延々としゃべり続けました。高橋留美子って本当にいるんだ!と、うれしくなっちゃいまして。あのコマのあの表情が好きだとか、あのエピソードが好きだとか、ずっと話して、留美子先生も多分、好きだと言われることに慣れているとは思いますが、度が過ぎていました。取材でアトリエにお邪魔させていただいたことがあり、ここでいろいろな作品が生まれたんだ!と目の当たりにして、すごくうれしかったです。これまで発売されてきたグッズが置かれている倉庫も拝見させていただいて、博物館みたいでした。本当に楽しかったです。もう完全にファン目線です」
神谷さんに第1期で放送されたベストエピソードを聞いてみると、第10話で放送された「君去りし後」を挙げる。
「ベストは『君去りし後』なんです。イベントや特番で、ベストエピソードを紹介する機会があって、同じものを選ぶと、『前も選んだので別のエピソードをお願いします』となることもあるのですが、選び直そうと思ったら、できないこともないので、毎回違うエピソードを選んで、違う視点で話してきました。それぞれのエピソードで語れることがいっぱいあります。『君去りし後』以外のエピソードを紹介した時、弊社(所属事務所)の小野坂昌也さんから『君去りし後、アニメ化していないの? 何で1位じゃないんだ』とお叱りのメールがきて『いや、してますよ。事情があって今回は残念ながら選んでいないんです』と返信し、納得してもらったことがありました」
大好きな作品、尊敬する先輩が演じた役を受け継ぎ、神谷さんはどのように大役と向き合ったのだろうか?
「古川さんが演じられたあたるには、追いつけない。あれは本当に古川さんしかできない何かなんですよ。やろうと思っても僕はとてもじゃないけどできない。原作を読んでいて、頭の中で鳴っている音を頼りに収録しています。令和版は、原作に忠実であることが一本の柱としてあるので、僕が原作を読んでいる時に鳴っているニュアンスを乗せようとしています。そのニュアンスは、古川さんのあたるの影響が絶対にある。あたるってこうやってしゃべるよね、という思い込みが自分の中にある。古川さんのあたる、原作から僕が感じたイメージをミックスして、自分の体を通して表現する。自分の中に住んでいるあたるがあって、それを自分の体を通じて表現していく。すごく面白いです」
どうやら複雑なことが行われているようだが……。
「僕が『うる星やつら』の原作を読み始めたのは、連載が終わるくらいのタイミングだったんです。最初はアニメから入って、もう既にあの声、あのリズムでしゃべるというものが自分の中に存在していました。ちょっと複雑なことですが、自分の中にはないものだけれど、“諸星あたる回路”が存在はしているんです。その回路は使うつもりはなかったものなのですが、自分の中に取りこんでいて、それを使って演じさせていただいているんです」
神谷さんの代表作の一つに西尾維新さんの小説が原作のアニメ「<物語>シリーズ」の主人公・阿良々木暦がある。アニメを見た後、西尾さんの小説を読むと、神谷さんの声が頭の中で鳴る……という経験がある。
「それと同じことが起きているんです。『うる星やつら』の原作を読んだら、古川さんの声でしゃべるんです。それを僕の体を使って表現する。変な感覚のまま、収録をやっているんです。でも、楽しかったです。回路が出来上がっているから、この時はこうしゃべる……というものがある。だから、ここはどうしよう?と考えることは、実はないんですよ」
あたるの父を演じる古川さんと一緒に収録する機会もあった。
「テストが終わって、音響監督から『あたる』と言われた瞬間、古川さんが『はい! あ、私じゃないか』と反応されたのがうれしかったです。完全にファン心理です。第1話の雷が落ちるシーンで、父が『これは父さんが若い頃、使っていた雨ガッパだ。着ていけ』と雨ガッパを渡すシーンがあるんだけど、バカみたいな親子だな……と面白かったです。父から子に渡す……とこのエピソードの中ではそんなに意味のあるシーンではないんですけど、ちょっとした意味が生まれる。くだらないやり取りですけど、すごく好きです」
ラム役の上坂さんもハマり役と話題になっている。
「すみぺはすみぺなんです。ただマイクの前に立って芝居を始めるとラムちゃんになる。あのギャップはいまだに埋められません。ラムちゃんが憑依してんじゃないかな?という気はします。収録の際、すみぺは僕の右側に立っています。役者さんがいる側に台本を持ってその人にしゃべりかけるように距離感を作ることがあるのですが、僕は左手で台本を持つクセがあり、今回は左手で持ったままでした。気配は感じるけど、すみぺの姿を見ていないけど、ラムちゃんを感じる。面白いですね。あたるも、ラムに向き合ってるんだか、向き合ってないかが微妙なところありますし」
新作テレビアニメは「おそ松さん」「映像研には手を出すな!」などでも知られる浅野直之さんがキャラクターデザインを手掛けた。浅野さんのデザインは、懐かしくあり、新しくもあり、魅力的だ。
「浅野さんの描くラムちゃんはやっぱり超可愛いです。例えば、キービジュアルのラムちゃんを見ると、ラムちゃんの柔らかい肌の質感みたいなものを感じることができます。拡大してみると線なんです。浅野さんの描く線は魔法みたいです。浅野さんはやっぱり特別です。線に魔法をかけられる方なんです。オープニングのダンスも超可愛いです。でも、媚(こ)びて見えない。媚びた感じで、単に可愛いでしょ!とアピールしているわけではない。それが不思議です。僕は、留美子先生に美的センスをハッキングされているから、バイアスがかかりまくっていて、冷静に判断できないところもあるのですが。でも、やっぱり超可愛いです」
新作テレビアニメは全4クールで、第2期から3クール目に突入する。
「実は一番好きなキャラクターは、因幡君なんです。誰がやるのか?と前から気になっていたら、入野自由でした。何だ自由かよ!って(笑い)。令和版の因幡君はこんな感じなんだ……と収録していました。『うる星やつら』を終わらせるために出てきたキャラクターで、因幡君が出てくると終わりに向かっているということなので、複雑ではあるんですけど……。新キャラも登場しつつ、よりカオスな展開になっていきます。ラストに向かって第2期は進んでいきます。ファンの方は覚悟して、その瞬間を迎えていただきたいと思います。新しいファンの方は、物語の終結に絶対に納得いただけるはずです。誰が見てもあのエピソードは好きになっちゃいます。最後まで見た後に、第1話を見直すと、全然違う感覚で見られるはずです。ぜひ第2期も最初から最後までお付き合いいただけたらうれしいです」
「うる星やつら」について語る神谷さんは終始楽しそうに見え、言葉の一つ一つから深い愛を感じた。令和版はスタッフ、キャストの愛にあふれたアニメになっている。第2期の展開もぜひ注目してほしい。
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