谷口悟朗監督:史上最狂バイオレンスアクション「BLOODY ESCAPE」 なぜ“改造人間VS吸血鬼VSヤクザ”なのか?

「BLOODY ESCAPE -地獄の逃走劇-」のビジュアル(c)2024 BLOODY ESCAPE製作委員会
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「BLOODY ESCAPE -地獄の逃走劇-」のビジュアル(c)2024 BLOODY ESCAPE製作委員会

 アニメ「コードギアス」シリーズや「ONE PIECE FILM RED」などで知られる谷口悟朗監督によるオリジナル劇場版アニメ「BLOODY ESCAPE -地獄の逃走劇-」が1月5日に公開される。魔改造された東京を舞台に、改造人間となった主人公・キサラギや、吸血鬼集団・不滅騎士団、ヤクザたちといったさまざまなキャラクターが入り乱れた激しい抗争を描く“史上最狂”のバイオレンスアクション。谷口監督による“改造人間VS吸血鬼VSヤクザ”と聞くと、一体どうなるのか!?と心躍る人も多いはず。なぜ“改造人間VS吸血鬼VSヤクザ”なのか? 谷口監督に聞いた。

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 ◇第三勢力によって生まれたごった煮感

 「BLOODY ESCAPE」は、谷口監督が手がけるオリジナルプロジェクト「エスタブライフ」の一環として制作された。同プロジェクトは、「ご注文はうさぎですか?」などの橋本裕之さんが監督を務めたテレビアニメ「エスタブライフ グレイトエスケープ」が2022年4~6月に放送された。「BLOODY ESCAPE」には、「グレイトエスケープ」のキャラクターも登場するが、“一本の映画”として楽しめる作品を目指した。

 「企画段階でまずこのプロジェクトの世界を作りました。それに対してテレビアニメにはテレビアニメのアプローチがあって、劇場版にはまた別のアプローチにすることを考えていて、最初からアプローチを変えるつもりでした。テレビアニメは橋本監督にお願いして、橋本監督のテイストでやってもらう。劇場版はシリアスめにすることを決めていました。ほかのスタッフには説明が難しいところもあって、テレビアニメの『機動警察パトレイバー』に対して劇場版がある。あんな感じで捉えてはどうでしょう?と話していました」

 舞台となる魔改造された東京では、人口がピークを迎え、減少傾向に転じ、人類は種の繁栄のため生態系を管理するAIを作り、人類の多様化実験を実行する。常人、獣人、魔族などの遺伝子改造による多様な人種、壁に囲まれたクラスタと呼ばれる多様な街を創造した……という設定だ。

 魔改造された東京には、吸血鬼、ヤクザのクラスタもあり、「BLOODY ESCAPE」では、異なるクラスタが激突することになる。それにしても「改造人間VS吸血鬼VSヤクザ」というのが斬新だ。「改造人間VS吸血鬼」は何となく想像できるかもしれない。「ヤクザ」が入ることで、展開が読めなくなる。

 「最初は改造人間、いわゆるサイボーグとバンパイアで考えていました。テレビシリーズの構成の賀東招二さんに、打ち合わせの時に『第三勢力を入れると、話が膨らむのでは?』と提案していただいたんです。完全に新規の第三勢力を作るのもな……と思っていたら、ヤクザがいた。ヤクザが出てきたら、サイボーグよりも改造人間かな? 同じ意味ですが、改造人間の方がしっくりくる。ヤクザはどんな生き物なのか? 私の中での設定もしっかり筋が通りました。要は、群であり、個でもある。そういうものに特化した生き物と捉えました。第三勢力によって、ごった煮感がでてよかったんじゃないかな」

 「改造人間VS吸血鬼VSヤクザ」と聞くと、なぜかワクワクしてしまう。

 「私は昭和41年生まれなので、特撮ヒーロー全盛期を過ごしているものなので、改造人間というのは大事な要素なんですよ。バンパイアに対して特別な思いはそんなにないのですが、日本だけでなく、海外のお客さんにも大体伝わる。最も分かりやすい共通言語なんです。ヤクザに関しては、創作のヤクザもの……例えば『代紋TAKE2』なんかも好きですしね。社会構造がはっきりしているんですよ。半分ファンタジーなんだけど、実在している。創作物としてワクワクします。忍者や侍はファンタジーだけど、そうではない。テレビでは難しいかもしれないけど、劇場ならできるかもしれない。世界的な記号としての吸血鬼、日本の記号としてのヤクザ、谷口個人として思いがある改造人間の三つどもえになったんです」

 ◇“犬”が間に!?

 「エスタブライフ グレイトエスケープ」と同じく「シドニアの騎士」「亜人」などでも知られるポリゴン・ピクチュアズが制作した。カーアクション、列車アクションなど派手なアクションが魅力の一つになっている。

 「逃走劇は、歩いたり、走ったりばかりではなく、いろいろな要素があった方が面白い。せっかくだから車も鉄道も入れたい。鉄道は映画で大事な要素じゃないですか。鉄道だけで映画を一本作れるくらい大きな記号ですし」

 谷口監督は「テレビシリーズのメインキャラクターでよかったのは“犬”がいたことです」とも語る。“犬”とは狼の獣人のウルラのことだ。

 「映画として犬の要素がほしかった。映画を構築していく要素はいくつもありますが、動物というのはやっぱり大事だと思っている。『ONE PIECE FILM RED』の時もサニーくんというキャラクターを出しました。何で?という声もあったけど、出さなければ!と言っていたんです。動物は、観客がちょっと気を抜ける要素で、それが大事だと思っている。情報をいっぱい入れてしまったら、少しテンポを変えたくなる。観客がそれを咀嚼(そしゃく)する間をちょっと作りたい。やっぱり犬がいると、見てしまいますし。大きい犬ですけど」

 「BLOODY ESCAPE」は情報量の多いアニメだが、だからこそ“間”を大切にしたようだ。

 「映画は明確なフォーマットが確定していない未熟なメディアだと思っています。縦横のアスペクト比が決まっているわけじゃないし、スピーカー数も決まっていない、という意味においてですね。何となくなく決まっているのは、みんなを集めてちょっと暗いところで上映をする大体30分から4時間くらいに収まっている映像的なものであること。そうとしか言いようがないんです。今の時代の映画の楽しみ方は、昔のようにゆっくり見せるやり方はダメだと思います。ただ、情報を次々とたたき込んでいく見せ方だと、最低限の“置く場所”を作らないといけない。それと、個人的には2時間を切りたい。見たという満足感を得るには90分はほしい。その中の勝負になる。2時間を超えると、年配の人はトイレが心配になっちゃいますしね」

 「BLOODY ESCAPE」は、ただ“史上最狂”なわけではない。さまざまな“仕掛け”があり、緻密な計算もあるようだ。一体何が起きるのか? “改造人間VS吸血鬼VSヤクザ”の抗争の行方に注目してほしい。

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