ドラゴンボールDAIMA
第11話 デンセツ
12月23日(月)放送分
人気アニメ「ガンダム」シリーズの「ガンダム Gのレコンギスタ(G-レコ)」が、テレビアニメ放送10周年を迎えた。「G-レコ」は、「機動戦士ガンダム」誕生35周年記念作品の一つとしてテレビアニメ版が2014年10月~2015年3月に放送された。同シリーズの生みの親の富野由悠季監督が「ガンダム」のテレビアニメシリーズを手掛けるのは「∀ガンダム」以来、約15年ぶりとなったことも話題になった。富野監督はこれまでインタビューで「G-レコ」について「50年くらいはメッセージ性として古びないといううぬぼれがあります。そんなうぬぼれがなければ作らない」と語ってきた。富野監督の言葉から「G-レコ」に込められた未来へのメッセージを読み解く。
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「G-レコ」は、地球のエネルギー源を宇宙からもたらすキャピタル・タワーを守るキャピタル・ガード候補生のベルリ・ゼナムの冒険を描いた。テレビアニメ全26話に新たなカットを追加した劇場版が全5部作として2019~22年に上映された。
キャピタル・タワーは、宇宙で生産されているフォトン・バッテリーというエネルギー源を地球に運ぶ宇宙エレベーターだ。近年、民間宇宙旅行時代が到来したとも言われている。宇宙開発への関心もさらに高まっている。しかし、富野監督は宇宙旅行に対して懐疑的だ。
「本当にめでたい話です。彼らは結局、20世紀の宇宙に対するロマンにとらわれている。観光客として宇宙に行って、何日耐えられるのか? 朝昼晩の地球の景色を見られるから、それなりに見ていられるだろうと思う。じゃあ、月や火星への観光旅行は成立するのか?っていう話だよね。3日も乗ったら飽きるよ。なのに、宇宙開発とか、移民という言葉も出てきている。20世紀までのSFの見過ぎかなのか? そういうものをそろそろ是正しなくちゃいけない。だから『G-レコ』を作ったんですよ」
「ガンダム」シリーズに影響を受けて科学者になった人も多い。富野監督は、自身が生み出してきた作品の影響の大きさを感じていたようだった。
「僕自身も経験してることで、現在の日本の宇宙開発をメインにやってる人間は意外にガンダムファンなんです。言ってしまえば、僕の教育が悪かった。そこまで責任は持たないんだけど。それがあるから、決着を付けておかないとまずい。僕自身が小学校5年生から20歳くらいまでは宇宙オタクだったんです。でも、宇宙開発についていえば、気象衛星を打ち上げたり、地球を定点観測したりするのが限界。これ以上のものはむしろ必要ない。月を領土にしたら統治できるのか? SFの世界でもあったことだけど、統治できない。簡単な問題で、距離なんですよ。通信が発展しても難しい。でも、子供の頃の勘違いをそのまま持ち込んで大人になってしまって、ロマンにとらわれているんです。ガンダムを作り続けてきたから思えることなんです。『∀ガンダム』が終わってから、10年くらい何も考えていなかった。でも、ガンダム的なものを全否定するものを作らないといけないと思ったんです」
“全否定”といえば「そもそも『G-レコ』は『ガンダムの冠を外すんだ。根本的にガンダム離れをしなければいけないんだ』という思いから始まった企画です」と話したこともあった。
「作品としても『∀ガンダム』まで30年、ずっとガンダムを作ってきて、その結果としてニュータイプ論で挫折したわけです。今の人類はニュータイプになれない。ガンダムで一番意図していたのは、人類が一挙にニュータイプになるというハウツーを示すことだったけれど、今の世界情勢や政治家を見渡しても、全く成功していません。ガンダムのコアなファン層は40代です。だから、そういうところをターゲットにしてしまうと、どんどん先が無くなってしまいますよね。ですから『G-レコ』は子供たちをターゲットにしたわけです」
「G-レコ」は、エネルギー問題も大きなテーマになっている。
「エネルギーは地球に埋蔵されているものを使っている。地球というのは有限なんです。これからずっと人類が使えるか?というと、使えない。枯渇する。あと残ってるのはフォトンだけ。太陽が死滅するまでの時間を考えると、30億年くらいは使えるだろうから。問題なのは、それができるか? できるわけないよね、現に石炭や石油を使えないご先祖様たちは、太陽光の元で暮らしていたわけじゃないですか。その歴史を素直に受け止めて、そろそろ戻らなくちゃいけないんじゃないの?って話。フォトン・バッテリーに込めているメッセージはそこなんです」
富野監督はシリーズ第1作「機動戦士ガンダム」の時代から未来を見据えてアニメを作ってきた。
「人間にとって大事なのは、農業と漁業しかない。あとの技術は一切合切、余分なこと。今の地球でそれができるか? できないんです。ガンダムで最初に『増えすぎた人類を……』と言ったことです。人類は総人口を半分にするくらいの覚悟を持たなくちゃいけない。それも、かつてギレン・ザビに言わせたことです。でも、資本主義の考え方の恐ろしいところは、絶えず上昇していかないといけない。既に人口が100億人になったらまずいと言っている人もいるけど、このままでは地球は100年も持たない」
富野監督はインタビューで“知の愚明”という言葉を何度も口にしたこともあった。「現代の知は“愚明”に振り回されている。愚かなのは明らか」と。「GAFA(米国のグーグル、アマゾン、フェイスブック、アップルの4社)の問題がある」とも話していた。
「ネットビジネスはこれまでのビジネスとは違う。今後、もつのかな?と考えている。ガンダムのような仕事で、エネルギー論、戦争論をやってきた。ネットビジネスは、全部が虚業なんじゃないか? あっという間に地球を食い尽くす。クリック数で勝負するという根本の構造は、実数と違って実体がない。この質の違いを我々が理解するには、時間がかかると思う。危機だと気がついた時には、みんなで窒息死する。ネット技術を開発し、なぜこのことに気がつかないのか? 資本主義が生まれて、たかが300年で、GAFAのようなものを生んだ。知識人はなぜ、拡大するだけの経済を止めようとしないのか? 地球が丸いことはみんな分かっている。資本主義が変な進化をしてしまい、人類が増え続け、みんなで食っていけるのか? 食っていけないよね。なぜかそれを理解しない。“知の愚明”、愚かなのは明らかなんです」
科学技術は進歩しているが、人類はその進歩についていっているのだろうか?とも感じる。
「技術は直線的な進化しかない。戻ることができない。AIの歯止めが利かなくなった時、電源を切ればいいと言うけど、人類は電源を切れない。僕は阻止する方法が思いつかない。だから『G-レコ』を作ることになった。『G-レコ』は戦記物じゃない。戦記物でベトナム戦争までの人類史をなぞってきたけど、もうそんなことをやる暇はない。自分が気持ちよく死んでいくために、人類が絶滅する予測をしたくない。『G-レコ』では、人類が絶滅しそうになった後、文明を取り戻した世界を描いている。そこで、明るいお話を作ることができる。ただ、こういう話はしちゃいけないんです。こういう話をすると、アニメですよね?という話で止まるんですよ。解決策が見当たらない。こういう話は毒なんです」
「持続可能な社会の実現」とも叫ばれるようにはなっているが、「政治の世界の言葉遣いで一般化しませんよね。政策として浸透していくだろうけれども、やはり時間がかかる。テーゼとして広がっていくとは思えない。アニメというような媒体だから言えることを積み重ねていく方が早いかもしれない」とメッセージを込めた。
「G-レコ」は、未来への希望が込められている。見る度に発見のある作品でもある。“古びないメッセージ”を受け取ってほしい。
ちなみに、「G-レコ」の劇場版の完結編となる第5部の公開前にインタビューした2022年、次作「ヒミコヤマト」の構想も語ってくれた。「卑弥呼が戦艦大和を宇宙戦艦ヤマトみたいに飛ばしちゃうという話を作りたいわけ」と話していたが、一体どうなるのか? こちらも楽しみにしたい。
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