ドラゴンボールDAIMA
第9話 トウゾク
12月9日(月)放送分
和月伸宏さんの人気マンガが原作の新作テレビアニメ「るろうに剣心 -明治剣客浪漫譚-」の第2期「京都動乱」。主人公・緋村剣心と志々雄一派との熾烈な戦いが描かれる「京都編」は原作でも人気のエピソードで、第35話「比古清十郎」では、飛天御剣流の第13代目継承者であり、剣心の師匠、比古清十郎が登場する。「るろ剣」屈指の最強キャラクターである比古清十郎を演じる中村悠一さんは、「難しく、面白いキャラクター」と表現する。比古清十郎の魅力、収録の裏側を聞いた。
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「るろうに剣心」は、1994~99年に「週刊少年ジャンプ」(集英社)で連載された人気マンガ。幕末に人斬り抜刀斎として恐れられた緋村剣心が明治維新後、不殺を誓った流浪人として、新たな時代の生き方を模索していく姿を描いた。新章の「るろうに剣心 -明治剣客浪漫譚・北海道編-」が、2017年から月刊マンガ誌「ジャンプSQ.(スクエア)」(同)で連載中。スタッフ・キャストを一新し、新作テレビアニメシリーズとして、2023年7月に第1期全24話が放送され、今年10月から第2期がフジテレビの深夜アニメ枠「ノイタミナ」ほかで放送されている。
中学生時代に「るろうに剣心」の連載を読んでいたという中村さんは、「新鮮な作品だった」と、その魅力を語る。
「『週刊少年ジャンプ』で僕が読んだ作品群の中で、歴史に合わせて、剣客を題材に扱っている作品が、そう多くはなかったので、そういう意味ではすごく新鮮でした。流行的には『ドラゴンボール』などの格闘バトルものがあり、武器を使うと言っても『ドラゴンクエスト ダイの大冒険』のようなファンタジーだったりしたので、史実を少し乗せてお話を見せていくとか、人間の感情を見せていく作品は多くなかった中で、ちょっと特別な色を放っていたという記憶はあります」
中でも「京都編」は、印象が強いという。
「剣心が剣心として自分で戦って、自分で何かを変えようとしていく一番濃い部分が『京都編』なのかなと。次の雪代縁が登場するところになると、自分の贖罪(しょくざい)になっていたり、『北海道編』になると“引き継ぐ”という話になるので、そういう意味では、剣心が自分の意志で前に進んで何とかしていこうとしている部分は、『京都編』が一番色濃いし、スタートした時からの『るろうに剣心』という作品のテーマが濃く出ている部分かもしれないなという気はしますね」
比古清十郎の名前は隠し名で、人付き合いを避けるため新津覚之進という陶芸家として京都の山奥に暮らしている。剣心は、志々雄一派との戦いに向けて飛天御剣流の奥義を伝授してもらうため、比古の元を訪れることになる。剣心の師匠である比古を演じることになり、「難しいキャラクター、難しいお芝居になる」と感じたという。
「キャラクターの年齢で言うと、僕は同じ年くらいなのですが、この時代における40代前半がどういう意味なのかと考えると、今の自分よりもちょっと背伸びした立場だよなと、いろいろ考えました。比古清十郎自身は、達観しているけど諦めているものもあって、身を引いている。自分1人の力で変えられることは、ほんのささいなものでしかない、どれだけ圧倒的な力を持っていても、国が変わるわけじゃないことは分かってしまっているから、自分が生活してる範囲の出来事にしか首を突っ込まない生き方をしている。かつ人嫌いで山奥で暮らしているから、誰とも会わないし、誰も守る気がないわけです。ただ、難しいところが、そんなキャラクター像があるんですけど、このお話の中で演じる際には、そうした描写はないんです。比古の“虚無”は描きようがないし、僕も演じようがない。なので、剣心と対面した時には弟子に対して今持っている怒り、確執的なものをぶつけなきゃいけないという」
斉藤壮馬さん演じる剣心と比古の会話も「これも難しくて、会話しているようでしていないんです」と説明する。
「一方的に話しかけている。要は目的が違うんです。剣心は、師匠と会話するのが目的じゃないので、話しかけてくれないんです。彼はこの後に待っている戦いのために、最後の修行をしてほしいというつもりで来ていて、比古は今さら現れた弟子が勝手なことを言ってることに対して怒りや憤りを持っているので、会話が噛み合っていない」
ただ、そうした序盤の会話を経て、「だんだん比古が『今お前に足りないものは何だ』『お前は今どうしたいんだ?』と剣心に気付かせていく」師弟のやり取りへつながっていくと感じたという。
「それは比古が狙ったことなのかどうか分からないですけど、剣心が自分の中で気付きを得ていく。しかも、最後の奥義に必要なことは、命を懸けることではなくて、『生きるため』という気持ちなんだということを、実践の中で自分で気付かなければいけないと。だから、ただ投げ合っているようなやり取りの中で、比古としてはちょっとずつ誘導というか、聞き出しているわけですよね。言葉じゃなくて、態度や剣を交えた中で、剣心の考えを知って、次のアプローチをかけるという。それを会話じゃなくて、行動の中でやっているのかなという感じがするので、僕がどうこうすることよりは、演出や画(え)で見せたり、ドラマの中で、視聴者の方が何か気付きを得たりする部分が大きいんじゃないかなとは思います」
比古清十郎について、登場シーンが限られるだけに「キャラクターをどう捉えるかは人それぞれだろうなという感じはしてしまいます」とした上で、原作を読んでいた時には気付かなかった一面に気付き、演じる面白さを感じたという。
「シナリオを読んで、アフレコをして、それをまた振り返ってと、一つ一つのステップごとに気付くことがあって、それは面白い部分でした。後からキャラクターの行動や言葉に『あ、こういう意味があったのかもな』と感じる部分が多かったです」
中でも印象的だったのは、比古が、幼い頃「心太」という名前だった剣心を「剣心」と名付け、弟子にするシーンだという。心太は、親を病気で亡くし、人買いに連れられていく途中で野盗に襲われ、比古に助けられた。数日後、比古は、剣心が人買い、野盗を含めた全員分の墓を作っている姿を目にし、弟子にすることを決める。
「原作を読んでいる時は、どうして突然名付けたんだろう?と思っていたんです。比古は、『心太』は優しすぎて剣客にはそぐわないから『剣心』と名乗れと言う。僕は、独りになった子に同情して、哀れんで、でも意志は強そうだから弟子にしてみようと決めたのかな?くらいに思っていたのですが、その前のモノローグで比古は、自分の無力さを感じているんです」
比古は、モノローグで「飛天御剣流の理に従い 刀を振るっても結局誰一人救えなかった事など今まで何度もあった…」と語っている。
「飛天御剣流は世を変えるものだと思っていたけど、何も変えられなくて、人が死んでいくと。その後、比古は優しい少年と会ったわけです。その時、これからの時代、世の中を変えるのは、自分では無理だったから、真逆のものに託そうと思ったんだなと感じました。しかも、飛天御剣流は一子相伝で、奥義を継いだ段階で自分が死ぬことが分かっていて、その覚悟の上で弟子を取った。比古は、和月先生も最強と言っているキャラですが、世の中の流れにあらがえないことが分かって、剣じゃない部分で負けたのかなと。そう思うと、あの過去のシーンはすごく面白い、深いシーンだなと感じました」
中村さんが語るように剣心の師である比古清十郎には、一言では言い表せないさまざまな魅力がある。現在放送中のテレビアニメ「るろうに剣心」で比古清十郎がどのように表現されるのか、見逃せない。
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